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思いつめた男達とBADENDのその先へ【蝶の毒 華の鎖 幻想夜話】

個人的に後日談って「いや~、あのラストで終わるから良いじゃん」と思うこともあるのですが、蝶の毒 華の鎖の後日談、ファンディスクになる「蝶の毒 華の鎖~幻想夜話~」には新たな地獄と幸せをありがとうと言いたいです。

全部書くとえげつない文章量になるので特に好きなものを挙げていこうと思います。
全部の実況感想はここのツリーから読めます。

前回の蝶毒本編感想noteはこちら




斯波「鬼火」

私がこのゲームで一番好きな組み合わせが斯波と百合子のルートの話で、同時にもう見たくないけど絶対に忘れられなくて心に突き刺さって抜けないのが斯波の「後悔」ルートでもあります。これを性癖というのかもしれない。苦しいけど好きな終わり方のエンドでした。
そんな斯波の鬼火ルート「座敷牢の恋人」の後日談。
まず、この上海訛りの黒ずくめの男の気持ち悪さ凄くないですか??

清潔な見た目なんだけど生気が無くて何考えてるか分からない気持ち悪さ。幽霊のようです。
そんな男に「姫君を永遠に斯波様だけのもに」という交渉を持ちかけられて、それに耳を傾けてしまう斯波。いつもの斯波なら「自分の手で落とすから楽しいんだ」くらい言って突っぱねそうですが、足を踏み入れてしまってる…… 
ここを読んだときに「あ~あ……」って思いました。もう戻れませんわね……
確実に弱ってるところを逃さない真島もすげーよ。

そうして百合子を屋敷の座敷牢で囲います。
盲目になった百合子を閉じ込めて、毎日抱いて、百合子の体は反応するけどそれは反射に近い様なものでそこに愛は無くて……好きになった本来の百合子もそこにはいなくて。それでも乱れた百合子の姿に興奮している自分が虚しくて。

読みながら苦しい苦しい苦しい😰😰😰と思っていました。
百合子は斯波が私達を不幸にしたと思ったままだし、斯波は斯波で百合子のこの手を離すとまた自殺されるかもしれない、永遠の別れになるなら、俺への気持ちが無いならいっそと思ってるし。
斯波のいつもの快活さがなく、生気のない独白もゾッとしました。

斯波の声優さんうまい。蝶毒の声優さんってみんなうまい。言い方が好きで何度か繰り返しセリフを聞くこともあります。

もう駄目だ……と思ってたのに地獄はまだこの先にありました。

百合子の口から斯波に向かって
「私を……ここで、殺してはくれないかしら」
と言うのです。

だめだ、全部が苦しいよ〜〜どうしたら良いんだ。

斯波は百合子がいたからここまで生きてこられた様なもので、百合子と出会ってなければ今の斯波は絶対にいなくて。また自殺未遂をした百合子を救ったのも斯波で、そんな愛する人からもう殺してくださいと言われる。しかも斯波の夢だった「百合子といっしょに桜を見る」のが叶った直後で。
「私を殺して」って、そんなことを言う時点で百合子の心は既に死んでいるのですよね……
他ならぬ斯波によって。

さらに衝撃冷めやらぬうちに何処からともなく現れる黒ずくめの男が「姫君は身籠っておられるのでは?」と斯波に伝えます。
お前怖いよ……どこから見ていてどこまで知ってるんだよ……

斯波からしたら絶対に承諾できない事だけど、百合子からしたら殺したいくらい憎い斯波に抱かれて閉じ込められて、挙句の果てに斯波との子を身籠ってしまった、死ぬより苦しい日々だったことでしょう。それは早く死んで楽になりたいと思うだろうな……と分かるから何かもうプレイヤーの私はずーっと苦しい、お腹が痛い。

斯波の子ども時代を思うと、幼い頃に独りになり必死に生きてきて、「家族」というものを知らず百合子と家族になることを夢見てきただろうに、いつの間にかこんな形で子どもができてしまった。生まれてくる子どもは母(百合子)からは憎き人の血が混じる愛せない子で、父(斯波)からは絶対にバレてはいけない隠すべき存在で。どうしてこうなった……なぁ真島……
鬼のように憎む百合子と鬼のように執着し絶対に離さない斯波との間に生まれる鬼の子ども。

最後の台詞も本当に怖くて

けれど、子を孕ませてしまえば、彼女の胎内には常に俺の命が息づいていることになる。これこそ、支配だ。これで、彼女は完全に俺のものだ。
(中略)
「愛しているよ、お姫さん……」

貴方の愛は手に入らなかったけど、貴方の遺伝子と俺の遺伝子が混ざり合った胎内を手に入れた

衝撃で本当に息が苦しくなった
尊い命の誕生は喜ばしいことなのに斯波の中では百合子を離さないために利用できると考えが行き着いてるのが悲しい。
だって、だってGOODで孤児院を経営してることが分かってる男ですよ😭😭😭
人間扱いされなかった幼少期を持つ男が、同じような思いはしてほしくないと活動しているのに、愛する人との自分の子を「利用できるモノ」として見ているのがやるせない。

なんでこうなっちゃったんだよ〜〜〜〜

プレイヤーである私は幸せいっぱいハッピーエンドを知ってるが故に「ああああ、間違えた😭」感がすごい。救いがなにもない。この先もきっとない。
鬼になった、というより鬼の面はもともと心の奥底にあってその蓋を開けちゃった……と思いました。
しかもこれがハッピーエンドの後日談「散る桜、満ちる月」と同じく桜の下で終わっていて、選択肢1つ違うだけで人生ってこんなに変わるんだと感じて面白いけど苦しい。

読み終わった後あまりに鬱々としてて気持ち悪くなりました。こんなに落ち込んだのは久しぶりで、最高のシナリオ……だけどちょっと休ませて……となりました笑
「後悔」エンドも好きなんだけどこれも好きになっちゃった、読むたび苦しいけど。

秀雄「くるくる、くるくる」

正直予想外でした。秀雄ルートが自分の好きにヒットするとは。
秀雄って良くも悪くもウブな感じが可愛いねって感想はあるけどめちゃくちゃ刺さる!までは無かったんですよね。
けど今回その「ウブ」であるからこその展開で非常に良かった!

これは「うそつき」の後日談。ルートで一番可哀想なのは佐和子さんだろ!って思ってる派なので「佐和子さ〜ん😭幸せになろう😭😭」と開幕から苦しかった。
だって斯波&百合子夫妻と秀雄&佐和子夫妻が街中で出会って談笑するシーンから始まるんですよ!?

佐和子さんは秀雄に一途で寄り添ってるのに、1ミリも抱かれないし、そんな秀雄は百合子と不倫してるし、百合子は今目の前で夫である斯波との赤子を抱えて微笑み、その赤子をかわいい〜って佐和子さんがあやしてる

こんなの見せられたらグロくて脳が焼ききれて死んでしまう!!!進めたくないよ〜〜〜!進めるけど笑

この時の斯波の「子どもが俺に似ていてホッとしていますよ」って秀雄に言うの最高じゃないですか?

浮気してるお前じゃ無くて俺の子で良かったよって嫌味と牽制を感じる!私はこういう皮肉が好きだ!!!
その後に「夫人との夫婦生活はうまくいっているか?」と尋ねるのも最高に意地悪くて大好き!
夫婦生活がうまくいってたら秀雄は百合子との浮気なんてしないの分かって言っててオーバーキル。やめたげなよ……笑

その晩、深酒して百合子を重ねながら佐和子を抱く秀雄、最悪だけどまぁそうするしかないよね……

そしていつもの様に百合子と密会をするのですがなんだか秀雄だけがジタバタしている様に見えるんですよね。秀雄だけが「俺たちは愛し合っているのになぜ結ばれないんだ……俺と逃げよう」と真剣に悩んで泣いている。
百合子も「そうよね」とは言うんだけど、どちらかと言えばこの場を収めるための言葉に聞こえる。
なんだかこの百合子は鏡子様みたいな雰囲気がある。物凄い艷やかで、底が見えない恐ろしさがある。

秀雄は百合子の「そうよね」を受けて斯波を呼び出し「百合子を解放してくれないか」と直談判します。
ここからが本当に最高で。
そこで斯波は百合子がそして「」がどういう生き物か語り始めます。

秀雄だけが時が止まったままだった。出兵前の気持ちを打ち明けあったあの日から。
百合子はどんどん変わっていた。
斯波からの愛と安定した生活と可愛い子ども、そして変わらず私を好きだ好きだと泣いてすがってまで愛してくれる秀雄。
求められ満たされまくる毎日。そりゃ楽しくてしょうがないと思います。斯波も秀雄も子どもも手放さず全部美味しいとこだけ食べて、どんどん魅力的になっていく。
秀雄からしたら百合子は相当な猛毒になっていただろうな〜。

その事実を聞いても受け入れられない。嘘だそんなことはないと叫ぶ秀雄。
じゃあ証拠を見せてあげようと斯波が動き、秀雄を押入れに閉じ込めた部屋で、秀雄の目の前で百合子を抱きます。「愛してるわ」という百合子の声が響く室内。

どわ〜〜〜〜〜〜〜ここまでする????最高。もうめちゃくちゃだ。秀雄ズタボロだ。
というか一応百合子≒プレイヤーでもあるじゃないですか、それをここまで悪女というか自分の欲を満たすために動く女として書いたのがびっくりしました。
純粋で可愛いだけじゃなくて、欲望に忠実で計算高い姿も見せたのが個人的には好印象でした。
リアルだなと思います。そしてここまで突き詰めるから百合子がめちゃくちゃ艷やかで魅力的な女性に見える。乙女ゲームってここまで書くんだ。

これで終わりじゃないんですね。これ。もうめちゃくちゃな地獄を秀雄は見ていますが……
その後、鏡子様が開いた食事会に両家夫妻は参加し、あの日以来初めて秀雄は百合子と会います。

周りが見えなくなった秀雄は斯波とワルツを踊っていた百合子の手を奪い、引き寄せ皆の前で口づけ「愛している」と言ってしまいます。
当然ここは公の場で、斯波にぶたれ百合子は夫に連れ去られ会場をあとにします。
一人狂ってしまった秀雄の高笑いと、周りの罵り声、蒼白の佐和子で幕を閉じます。

これ最後まで、あの寝取られみたいなものを見せられても秀雄は信じられなくて信じたくなくて、そんなはずはないと斯波とワルツを踊る百合子を見て「本当は俺と踊るべきなんだ」と思ったんでしょうね。
押入れで見た百合子の本当の姿を受け入れて、2人きりの時だけ見れる百合子の、言わば秀雄の理想の百合子像という幻想に酔うだけに留めておけば百合子との進展は無いけど、百合子とこの先もイチャイチャできたと思う。
けど、そんな事を「ウブ」な秀雄は受け入れられなかったし、本気で「俺たちは愛し合っていて、百合子も俺と生きたいはずだ」と信じていたからこの結末になったんでしょうね。
一緒にくるくると踊るはずだったワルツを、一人でくるくると踊りながら地獄に落ちていくのが本当にすごい文章だと思いながら読んでいました。

秀雄は百合子以外の女を知らないのが「一途」にもなるけど「盲目」にも転ぶのがゾクゾクしますね。もう少し女を知っていれば火遊びと割り切れていたかもしれない。

最後に最悪なことを付け加えると、この時の佐和子さん秀雄との子どもを身籠っているんですよね……
佐和子さん……お願い本当に幸せになってほしい……って思うけど佐和子さん秀雄のことが好きなんだよな〜〜〜😭😭😭どうしたらよい?
この後の佐和子さんどうなるんだろう、本当に可哀想。

真島「壺中天」

私、本編中の真島のどのルートも真島にとっては本当に幸せなのか?という疑問があるんですね。
これは傍から見たらというもので、真島にとってGOODルートは幸せなのかもしれないけど、やっぱり真島は言えない秘密を抱えたままで、これから先もバレないよに努力するという、どこか我慢をしなきゃいけないじゃないですか。
だから真島の幸せってそれで良いの?と思ってて。

そんな中の「壺中天」は「上海愛玩人形」の続きでした。
事故にあって目も耳も聞こえなくなった百合子を搬送先の病院から上海へ連れ去り、自分の部屋で囲います。

そんな百合子へこう呟きます

あなたからは私の顔が見えず、私の声がその耳に聞こえなくとも良いのです。この呪われた血に溺れあなたを愛し、攫いまでしてまった。
この腐った男をせめてこの部屋では、あなたの何も見えない闇の中では受け入れてください。ただの一人の男として。真島でも兄でもない男Aとしてあなたに愛されたいのです。

って事なんでしょうね。物凄い自己中だけど、そうして初めて「俺を愛して」とこの男は言えるんでしょうね。真島でも兄でもないただの人になれるから。
この男の複雑さが見えてちょっと泣いてしまいました。

真島は百合子に名前を聞かれて上海での偽名のルイを名乗りながら、甲斐甲斐しく世話をし、百合子もその献身ぶりとどこか懐かしい香りに絆され惹かれていきます。

そうして抱き合い、一緒になる。二人きりの空間。甘美な壺中天。

狭い壺の中の天国。そこは俗世を離れた別世界――閉じられた世界の楽園。
(中略)
おぞましい、爛れた輪廻の中で、俺たちは永遠に繰り返す。魂に刻まれた不治の病を抱えて、交わって生きる。
あなたを抱いて、どこまでも堕ちる。壺の底から見上げる天は遠い。その光は、俺たちの仄暗い褥には届かない。

閉じられた楽園で、何も見えない聞こえないあなたは、私をただの1人の男として受け入れてくれる。愛してくれる。
あなたが私の隣にいることで私は永遠の楽園を手に入れた。それが呪われた血によって引き寄せられた2人による楽園でも構わない。
私はあなたがいればどんな地獄だろうと楽園になるのです。
この壺の底には俺たち2人しかいない、俺たちが兄妹であることは誰も知らない、あなたも目を開けない限り知らない。
私はあなたをこの壺の中で一生愛します。

これって、真島の真ハッピーエンドなんじゃない?と私は思いました。
これが一番何も我慢せず真島は百合子を愛せるし、百合子もまたこの男を愛している。

それと同時に真島は百合子と兄妹であるということを全部隠して幸せになるか、全部暴いて指一本触れないか、そのどちらかの選択しかできないのかもと感じました。
よく考えれば、俺たちは兄妹だと明かして愛し合うって、苦しめられた原因の近親相姦を認めて兄妹共々同じ道を辿るってことになりますもんね……
そんな事を真島ができるわけ無いし、させないでしょうね。
藤田の執事の一生ルートで瑞人が言った「世の中には知らない方がいいことだってたくさんあるだろう?」なんだと思う。
全てを知ること、明かすこと=幸せとは限らない
瑞人も藤田ルートで男娼をしていたことを秘密にしたまま藤田と百合子が結ばれるのを見ているし、隠すことで愛する人の笑顔を守る「兄」2人だなと感じます。


真島って自分が近親相姦の末に生まれ、あの悲劇が始まっている以上、自分を自分で肯定することって死ぬまで無いんだろうな……
ずっと自分は「汚い存在」のままなんだと思う。

だからこのエンドは百合子が目を開けない限り、百合子の暗闇の中で、ひいてはこの壺の中で兄でない一人の男として愛してもらえるし、真島も自分の出自をその中では少し忘れる事ができるんじゃないのかな。現実逃避じゃなけいど。
一番真島が無理せずいられる、ある意味ハッピーエンドなんじゃないかな……

私からしたらこれがハッピーエンドだよ!と思うのですが、このルート中にこういうシーンも出てきます。

やっぱり真島にとってはあの「秘めた想い」エンドも百合子が隣にいて愛し合うその空間がある、それだけで幸せなんでしょうね。
ただ、秘めた想いの続きの「波打ち際を歩きながら」で百合子を失って一瞬ホっとする真島がいたのも面白かった。これでもう良いんだ、じゃないけどやっぱりどこか無理をしている状態だし。でもそれ以上に百合子を失う事のほうが大きくて。

取り返した後に「この罪の輪廻の果てにあるのを確かめてみるのも悪くない」と思っていますが、この光のない「壺中天」とは違って何が最後彼に見えるのかは非常に気になる。
この波打ち際の真島が死ぬ時って何を思うんだろう。

なんだかこの男の複雑さと執念と覚悟を見ると、この人は別格だな〜と思ってしまいます。

男達とその先へ

いや〜面白い。
他にも書かなかった中で言うと、瑞人って死以外で幸せになる方法ってあるのかな……だったり(欲を言えば私は瑞人のGOODルートは幸せか?と疑問ありなのでその先を見たかった〜!という思いがある)、藤田の結ばれても強い執念とブレなさで立って初めて二人きりになれるのか〜だったりと、あの時の別の顔が見れるの凄く楽しかったです😉

ちなみにGOODエンドのその先で好きなのは真島の「世界を駆けて」
これは真島が、というより百合子の「あなたが誰であろうと、私のこの目に映るあなたを愛しているわ」という絶対の信頼、肝の据わり方に本当にびっくりした。ものすごい愛だと思います。

めちゃくちゃ個人的にだけど、私は鏡子様が大好きなのでちょくちょく鏡子様が良い味出してて嬉しかった。特にこれ

冗談か本気か区別がつかなくて良いですね〜✨

蝶毒全部やり終えてしまったな……本当にこのゲームと出会えて良かったな〜
凄く楽しかったし世界が広がった感じがします。
これを通してBADもGOODも持ち合わせているのが人間なんだろうな〜と思えました。だから面白いんでしょうね。

アロマリエさん、一応次のゲームが進行中ってなってるけど、どうなんでしょうかね〜
今その原作小説を読もうかどうしようか迷ってます笑
最近久しぶりに蝶毒のグッズをまた出すかも?みたいな事を呟いてらっしゃったし、楽しみにのんびり待ってます☺️


このゲームきっかけでやりたいものがドンドコ増えてるのでまだまだ楽しみは尽きなさそうです😚

皆様も楽しいゲームライフを〜!

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