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和歌山県プログラミング教育への提言 その2 戦略的に違うよな〜

和歌山県プログラミング教育施策が失敗したと思う理由 その2

和歌山県では、アーティック社の教材が採用されました。理由は価格が手頃だったからです。私個人としては、レゴブロックが好きだったので、レゴ社の教材が採用されることを望みましたが、価格面やプログラミングの難易度(特に車を作った際に車輪が回らない問題)から採用にならなかったと説明をうけました。

アーティックロボは、各校に3人に1つの割合で配布されました。予算的に仕方がないとはいえ、教育現場における子どもの学びを考えると、私はこの配布方法に賛同できませんでした。なぜなら、実際に操作するのは1人であり、他の2人はそれを見ているだけになるからです。見学も学びになると言われますが、実際には自分で体験しないと学べないことが多いのです。

授業時間も限られており、1人が試行錯誤している間、他の子どもたちは待つことになります。結果として、成功した1人を模倣するグループが出てきて、他の子どもたちはプログラムを作る経験をせずに、ただスイッチを入れるだけで授業が終わってしまいます。

これでは、少数の技術者だけをうみだし、他の多くの人々がそれを消費するだけの現代社会の縮図を教育現場で再現しているように思えます。

こんなことを研修で発言したのですが、指導主事に苦笑され、無視されました。その後も、配布方法についての説明が続けられるだけでした。

もう一つ、無視されたことがあります。それが、プログラミング教育についての年間指導計画です。
私は研修前に、自分の学校のために全学年を視野に入れた年間指導計画を作ってそれを持って参加しました。機会があれば提案したかったからです。
県教委から提示された年間指導計画では、4年生以上しか書かれていませんでした。そこで、私が年間指導計画について質問しました。私は年間指導計画を作って参加しています。この計画では低学年の計画がないので自分の計画で進めてもいいのかと。
すると、指導主事は県が示した方法でしてくださいと言うのです。では、4月までに低学年まで入れてくださいと言うと、わかりましたと約束はしてくれました。
しかし、6年経ったいまだに低学年での計画は提示されていません。
私のような意気込みで参加している教員が疎ましかったのでしょう。
そんなことからも、この施作が成功することは難しいと感じていました。

和歌山県で15年前から一人一台のパソコンを使った授業の研究をしていたので、どのような課題がでるかわかっていただけに、ついつい発言してしまうのです。

こうしてプログラミング教育が始まりました。

業者が派遣され、5年生の授業で3人に1台の割合でアーティックロボを使ってプログラミングをおこなう授業がありました。予想通り、プログラミングができず、退屈している子どもがいました。私は担任ではないので、回ってサポートしましたが、子どもたち全員がプログラミングに参加したいと思うのは当然です。


もし本当にプログラミング教育を広げるなら、予算を投じて先進的な学校を作り、モデル授業を多くの教師に見せ、「これなら必要だ」と思わせる戦略が必要です。学校や町の予算を使ってでも、プログラミング教材を導入するように仕向けるべきです。しかし、和歌山県にはこのような戦略が欠けているように思います。


さらに、プログラミング教育が広まらない理由の一つに、教師の中にある「グループ学習信仰」があります。私は以前、図書室に学級全員分の図鑑を購入するという実践を行いました。理科の授業で植物図鑑を使いたいと思っても、グループに1冊では学習効率が悪いと感じたからです。そこで、各学年に割り当てられる図書予算を全て同じ植物図鑑に費やし、2年間かけて全員分を購入しました。その結果、全員が一人一冊の図鑑を使って調べ学習に集中でき、学習効果が向上しました。しかし、周囲の教師からは「同じ図鑑ばかり買ってどうするのか」「子どものために色々な図書を買うべきだ」と笑われました。2年間笑われ続けましたが、結果として学習効果は明らかに向上しました。

一方で、担任が選書した本を買うことで読書活動が活発になったという報告はありませんでした。教師が自分の好みで図書を購入しても、その意図がなければ効果は出ません。こうした風習に基づいて、私のような実践が笑われ続けているのです。

私はこのような経験から、行動しようとする教師が受け入れられない和歌山県の現状を目の当たりにしています。これが、プログラミング教育でも同様に起こっている状況だと感じています。


次回は、和歌山県が採用した教材「アーティックロボ」の問題点について書きます。


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