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小学校でおこなっている写生会について考えてみた 3回目

写生会の絵を紹介します その3


那智大社での遊びから生まれた絵画の挑戦
那智大社での「だるまさんがころんだ」計画は未遂に終わったものの、子どもたちと学校近くの神社で遊び、その体験を絵に描かせることにしました。

「自分たちが主役」の絵づくり
描かせた絵は、従来のように神社仏閣そのものを主役にするのではありませんでした。代わりに、子どもたち自身が主役で、背景として神社が描かれている構図にしました。
たとえば、境内でだるまさんがころんだをしている場面や、木登りをして笑っている瞬間が、画面の中心に描かれています。これによって、生活感や子どもたちの視点が絵に反映されるのです。
もう一つ、こだわったのが、手の表現です。頭の中にある手という記号をそのまま描くのではなく、手を見て描くという、絵画体験をさせたことです。だから、子どもたちの手をみるとなんだか違和感があると思います。でも、その見て描こうとしている気持ちが画面に現れていると思います。
さらに、せっかく行った那智大社も活かさない手はありません。背景として那智の滝や壮大な社殿も描きました。こうすることで、身近な神社と歴史的な神社の両方をテーマに取り入れることができました。
この作品たちは、私なりの「神社仏閣を題材にした絵画」へのアンチテーゼでもありました。ただ静的な建物を描くのではなく、子どもたちの体験や感情を取り込む――それが新しいアプローチです。


すべて入賞!そして注目を浴びる
学級から出品できるのは3点だけでしたが、なんと全ての絵が入賞しました。展覧会を見に行った際、他の先生たちからこんな質問を受けました。
「どうやったら、こんなにいきいきとした絵を描かせることができるのですか?」
私の答えはシンプルです。
「子どもたちと一緒に体験したことを絵にするのです。写生会だけでは、子どもたちにとって何も印象に残らないのですから。」
子どもたちが感じたこと、見たものを絵にする。それが彼らにとって自然な表現方法なのです。


一般コンクールでも快挙
偶然にも、世界遺産をテーマにした絵画募集があり、子どもたちの作品を応募しました。結果は――ほとんどが入賞!
一般のコンクールでは賞品が出るため、子どもたちは大喜び。「先生、賞状だけじゃなく、ちゃんと賞品もある!」と笑顔で報告してくれました。
 
そんな中、一人の子が私にこう訴えました。
「先生、ぼくね、みんなみたいに賞品がもらえる賞に入れてほしい。賞状だけじゃもううれしくないんだ。」
彼は学校関係の展覧会で2回連続入賞している子でした。表現がとてもいきいきしていて、先生受けがよかったのです。だから、まず学校関係の展覧会に出品しました。そのため一般のコンクールには応募できませんでした。
その子の率直な気持ちを聞いて、申し訳ない気持ちと同時に、成長を感じる瞬間でもありました。


大人になってもつながる縁
そんな縁もあって、その子とは、後に成人するまで年賀状のやりとりが続きました。


こうした経験が、私にとっても忘れられない宝物です。子どもたちが体験を通して学び、それを絵にする。その過程で生まれる笑顔や成長が、教師としての大きな喜びとなりました。


小学校3年生 2学期に描いた絵
小学校3年生 2学期に描いた絵
小学校3年生 2学期に描いた絵
小学校3年生 2学期に描いた絵