へき地の子どもたちのイメージは・・・?
地方のへき地で生活している子どもたち
「地方のへき地で生活している子どもたち」というと、多くの人は純真・素朴で腕白というイメージを持っているかもしれません。自然とふれあい、たくましく育っていて、ゲームや携帯電話に依存していない子どもたちがいると考えるかもしれません。しかし、実際はそうとは限りません。
私は、山村のへき地について質問を受けたことがあり、その回答を以下に紹介します。
Q1. 山の中など、遠くから通学している子どもはいますか?
A. 多くの子どもたちはバス通学をしています。学校に近い場合は徒歩です。学校の統合が進んでいるため、校区は広がっています。現在の学校では全員がバス通学で、学校からバスで5分程度の距離です。かつて担当していた子どもには、バスで30分かかる子もいました。
Q2. 都会の子どもと同様に、家でゲームをするのが好きなようですが、自然の中で遊ぶことはありますか?
A. 友達との家がかなり離れているため、下校後は一人で過ごすことになります。一人で自然の中に行くことはありません。友達と一緒でなければ、自然の中でも楽しく遊べないですよね。この点は20年前の研究会でも私は発表しており、田舎の子どもほど休日や放課後に外で遊べない傾向があると考えています。ただ、家庭環境により、川や山、海に連れて行ってくれる場合もあり、自然の中で遊ばないというわけではありません。
Q3. 自然の中で授業や行事を行うことはありますか?
A. 田植えや稲刈りなど、稲作に関する授業をします。ある年にはオオサンショウウオの観察も行いました。また、クマノザクラの観察や、自然林と人工植林を色をくらべて調査もしました。以前の学校では、田起こしから稲刈り、脱穀まで子どもたちといっしょにおこない、農具も昔のものをつかってやりました。水の世話から、合鴨農法など日々の活動を行い、私自身も稲作を体で覚えました。さらに、自然の中でトイレを作る経験もしました。木を使って板を貼り、木をいかして屋根や便器を設置しました。糞尿は自然にかえるため、そのままにしておいても自然の中では問題ないということを体感しました。いろいろと経験できます。
Q4. 休み時間など、学年を超えて遊ぶことはありますか?
A. 複式学級が基本なので、学年を超えて遊ぶことは多いです。特に低学年のお世話をしているため、学年を超えた関わりがあります。ただ、体格差や運動能力の違いがあるため、実際に一緒に遊ぶというより、お世話をしている感じになることが多いです。
Q5. 図書委員はいますか? 貸し出しの世話はしますか?
A. 人数が少ないため、図書委員などの委員会活動は行っていません。高学年の児童は全員児童会に所属しています。貸し出しは各自が自主的に行い、読書カードに自分で記入して本を借り、返却も自分で行います。
Q6. 子どもたちは図書館をよく利用しますか?
A. 年によって異なります。よく利用する年もあれば、そうでない年もあります。これは先生がどのように仕向けるかによって、図書館を利用する雰囲気ができるかどうかが決まるのではないかと考えています。
Q7. 野生動物は身近にいますか? どんな動物がいますか?
A. この地域では、基本的にサル、シカ、イノシシが多く、農作物に被害を与えます。学校の周りにもよく現れます。日が暮れてから駐車場に行ったときです、前の草むらでガサゴソと大きな生き物を動く音がきこえることあり、ドキッとすることがあります。学校からの帰り道、山道を通るのですが、リスやイタチが横切ったり、シカとぶつかることもあります。カモシカに出会うこともあります。
Q8. 運動会はどのように開催されますか? 地域の人も参加しますか?
A. 地域の方々や保育所と一緒に行います。全児童が数人なので、徒競走もすぐに終わってしまいます。準備には地域の方々が手伝いに来てくれます。また、競技には「縄ない競争」というものがあり、チームでどれだけ長く藁縄を編めるかを競います。子どもたちが出る種目には賞品はありませんが、地域の方々が出る競技には賞品が出ます。
Q9. 小規模校ならではの良さはどこにあると思いますか?
A. 子どもたちが少ないため、きめ細やかな指導ができる点が良いところです。また、小規模校では教師の年齢層が高い傾向があり、安定した指導ができるというのも強みです。授業の自由度が高く、担任の力量が授業に直結することも大きな要因だと思います。また、保護者が学校に協力的であることも多いです。ただ、最近では田舎暮らしを求めるIターン家族が増えてきたため、学校主体ではなく、家庭の価値観を大切にする保護者が増えています。
子どもたちにとっては、少人数ならではの作業における待ち時間が少なく、全員が体験活動をたっぷり行える点が大きな利点です。
このように、地方のへき地で生活する子どもたちにも、都市部とは異なる生活があるものの、子どもそのものの本質はかわりません。ただ、それぞれの地域に応じた教育や生活環境が存在するということは考慮にいれなければいけないでしょう。