小学校 漢字指導について一言 その3
漢字練習で重要なこと
前回の続きとして、漢字指導における授業内での練習方法のポイントについて説明します。特に、授業中にどのように練習を組み込むことで漢字の定着を図れるかについて焦点を当てています。前回は「机に指で漢字を書いて練習すること」が大事だと述べましたが、今回はその練習に集中させるための仕組みを紹介します。
筆順を声に出す重要性
机に指で漢字を書く練習をする際、必ず実践してほしいことがあります。それは、筆順を口に出しながら練習するということです。この「声に出す」ことが非常に重要で、これを行うかどうかで、漢字の定着率や集中力に大きな差が生まれます。私は、次のように説明しています。
「机の上に指で漢字を書くときは、必ず筆順を口に出して練習しましょう。声に出して練習する人は、確実に覚えますが、声に出さないと覚えない人が出てきます。なぜなら、声に出していると、他のことを考えずに漢字に集中できるからです。声に出さない場合、頭の中で『今日、ゲームいつしようかな』と考えながら指だけを動かしてしまうことがあります。これでは、練習しているつもりでも実際にはできていません。練習時間が無駄になり、後のチェックでも何度も注意されるでしょう。一方、声に出すと、漢字のことしか頭に入らないので、集中して短時間で確実に覚えられるのです。この方が、自分のためにもなりますよ。」
声に出すことで脳をフル活用
この「声に出す」練習方法は、世界的にも「音読」の実験で証明されています。筆順を声に出すことで、脳内のワーキングメモリを漢字練習にフル活用することができるのです。
ある実験では、ランダムに集められた学生に黙読と音読を行ってもらい、どちらが集中できるかを調べました。実験中、学生は一定のリズムで太ももをたたき続けながら読書を行いました。結果、音読している学生はどんなアクシデントがあってもリズムを崩さなかったのに対し、黙読している学生は途中でリズムが途切れることがありました。つまり、黙読では集中力が途切れやすいのです。この効果を漢字練習に利用しない手はありません。
20年前から続けてきた方法
今ではこの方法は科学的に裏付けられていますが、私は20年前から感覚的にこの方法を実践してきました。当時はデータで証明することはできませんでしたが、若い頃からの経験に基づき、効果を感じていました。
実践の課題と固定観念
漢字練習の重要性について述べてきましたが、実際には短期間で子どもが盛り上がる「漢字ゲーム」のようなものが注目されやすいのが現実です。しかし、長期的に必要なことが伝わりにくい状況があります。
また、家庭学習が重要で、漢字ドリルは家庭で行うものだという固定観念が、学校で根強くあることもひとつです。そのため、家庭学習が十分でない子どもは、漢字が覚えられずに毎日のように叱責されてしまいます。少しの工夫で大きな効果が得られるにもかかわらず、こうした方法って広まらないんですよね・・・・。
実際に点数として数字で現れているのですが、話をしても伝わりません。その根本原因である教師の思い込みを崩すのは難しいです。