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図画と子どもと描くことと

このブログ、同じことを何度も書いていると思うでしょう。
日々思っていることを綴っていたかつての文章を加筆修正しながらいまnoteに載せているところも多々あるからです。
 
でも、何度も書いているということは、やはりそのことは大事なのでしょう。
 
今回も、描くということについて思っていたことを記します。
 
 

描くということを考える


図工の授業について、日々さまざまなことを考えています。
「描くとは、こういうイメージで進めればいいのではないか?」
「自分は、どんな見方をしながら描いているのだろう?」
「人間の目や思考から、描くという行為を考えてみたらどうだろう?」
こうした問いに、なんとなく答えが浮かんではくるものの、それを言葉にするのは難しいものです。
そんな中、酒井先生の著書を読むと、B・エドワーズの『脳の右側で描け』という本が紹介されていました。興味を持ち、実際に購入して読んでみると、これがとても面白い内容でした。酒井式の理論に対応する部分が明確な言葉として表現されており、その深さに感銘を受けました。ここでは、この本の内容を踏まえ、「描く」という行為を再考してみたいと思います。


描くことと「ものの見方」
『脳の右側で描け』の帯に書かれていた一文が印象的です。
「絵を描くことは自転車に乗ることと同じです。言葉で教えようとしてもうまくいきませんが、知覚を切り替えることができれば、誰でも楽しく描けるようになります。」
この言葉が示すように、絵を描くことは単に手を動かす技術ではなく、「ものの見方」や「認知の方法」といった視点の転換にかかっているのです。美術の先生たちも「ものの見方」を教えようとしていますが、その教え方は非常に難しいものです。自転車のバランスをとる方法を言葉で説明するのが難しいように、ものの見方もまた言語化が困難です。そのため、「実際にやってみましょう」と実例を示すしかない場合が多く、最終的には「たくさん描いていれば上達しますよ」といったアドバイスに収束してしまいます。
しかし、多くの人が「たくさん描いても」なかなか上達しないのが現実です。その理由は、絵を描くのに必要な「ものの見方」を身につけられないからです。では、どうすれば「ものの見方」を変えることができるのでしょうか?


脳と視覚のメカニズム
人間の脳は、自分の都合のいいように世界を見ています。具体的には、目で見た情報を簡単なシンボルとして記憶し、それを繰り返し使うことで効率的に認知しているのです。
たとえば、幼い子どもはまず無造作に丸を描くところから始めますが、やがてその丸が「何か」を表すことを発見します。大きな円に小さな円を二つ描いて「ママ」「パパ」「犬」などと呼ぶようになるのです。このように、子どもたちは次第に自分の中でシンボルを作り出し、それをもとに絵を描くようになります。そしてそのシンボルを繰り返し描くことで、記憶に深く刻み込まれていきます。
しかし、大人になってもこの「シンボルの記憶」に頼り続けると、実際に目の前にあるものを見て描くことが難しくなります。たとえば、人の顔を描こうとすると、脳が「目」「鼻」「口」などのシンボルを素早く呼び起こし、それを描いてしまいます。その結果、現実を正確に観察して描くことができなくなるのです。


見方を変えるための具体的な方法
このジレンマを解決するには、見方を変える方法を知り、それを練習することが必要です。以下に簡単な方法をいくつか紹介します。
1. 絵や写真を逆さまにする
絵や写真を逆さにして見ると、頭の中のシンボルが機能しなくなります。その逆さまの絵を写すと、これまでとは違うリアルな絵を描けるようになります。
2. パースペクティブを意識して描く
実際に見たとおりの形や角度を、正確に測りながら描いてみましょう。この作業中に感じる違和感は、あなたの見方が変わり始めている証拠です。


おわりに
描くことは単なる技術ではなく、「見ること」を再定義するプロセスです。上記の方法を試してみることで、今まで気づかなかった新しい世界が見えてくるはずです。少しの工夫で、絵を描く楽しさがぐっと広がると思っています。