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小学校の図工指導における鑑賞教育の大切さ
指導要領からみる鑑賞の重要性
1. はじめに
図画工作科では、制作活動と同様に鑑賞活動も重要です。しかし、実際の教育現場では鑑賞活動が十分に行われていないのが現状ではないでしょうか。私自身もこれまで鑑賞指導に十分に取り組めていなかったことを反省し、この文章を提言としてまとめました。
2. 図画工作科の目標
平成時の指導要領における図画工作科の目標は次の通りです。
表現及び鑑賞の活動を通して、つくりだす喜びを味わうようにするとともに、造形的な創造活動の基本的な能力を育て、豊かな情操を養う。
この目標には、「表現」と「鑑賞」の2つの活動が明記されています。しかしながら、鑑賞活動については、教育現場で十分に重視されていないのではないでしょうか。
3. 学年別目標の整理
以下に、学年ごとに鑑賞活動に関する指導目標を整理しました。
1・2年生の目標
描いたり作ったりしたものを見ることに関心を持つようにする。
自分たちの作品の形や色、表し方の面白さに気づく。
身近な材料に触れ、その感じについて話す。
指導のポイント
低学年では主に友だちの作品を鑑賞する活動が中心です。
3・4年生の目標
作品の良さや面白さに関心を持って見るようにする。
自分たちの作品の特徴を理解し、見る楽しさを味わう。
親しみのある美術作品を見て、感じたことを話し合う。
指導のポイント
同世代の子どもの作品を中心に、美術作品にも親しむ活動が取り入れられます。
5・6年生の目標
作品を鑑賞し、良さや美しさに親しむようにする。
自分たちの表現の意図や特徴を深く理解する。
我が国や諸外国の美術作品に触れ、その意図や美しさに関心を持つ。
指導のポイント
友だちの作品に加え、多様な美術作品を鑑賞し、見方や感じ方を深めます。
4. 鑑賞活動の進め方
鑑賞活動を効果的に進めるための具体的なポイントを以下に示します。
1. 作品の数を絞る
一度に多くの作品を見せると集中力が散漫になりがちです。絞り込んだ作品(9点程度)を見せることで、鑑賞を効果的に行えます。
2. 時間を設定する
短時間で好きな作品を選ばせることで集中力を高めます。例えば、「30秒以内に好きな絵を選ぶ」といった具体的な指示が有効です。
3. 肯定的なフィードバックを行う
選んだこと自体をまず褒め、肯定的な意見を引き出します。例えば、「よく見つけたね!」といった言葉が子どもたちのモチベーションを高めます。
4. 理由を話し合う
低学年では発言を促し、高学年以上では感想を紙に書かせる方法も効果的です。その意見を掲示すると鑑賞活動がより充実して見えます。
5. 否定的な発言を避ける
感想は肯定的な内容に限ります。批判や否定は厳禁とし、悪意のある発言には毅然と対応します。
5. 結びにかえて
鑑賞活動の目標は、「良いところを見つける力」を育むことです。欠点は目につきやすいですが、良さを発見するには注意深く見る努力が必要です。この力が育つことで、作品の本質や作者の努力への共感が生まれます。
例えば、選ばれなかった作品についても良い点を探す活動を取り入れると、全員が肯定的な体験を得られるでしょう。クラス全体で「見る力」を育て、作品を通じて豊かな共感と学びを深めることが大切だと思っています。
ちなみに、誰も選ばれなかった絵につてもすぐさま担任が10個以上のいいところを言うと、全員が納得すると同時に、選ばれなかった子にも肯定感が生まれます。