和歌山県の学力問題はデータ整理で見えてくる
今回は和歌山県の学力問題について考えていきます
お恥ずかしい話ですが、私は還暦前までの十数年間、管理職試験を受け続けましたが、すべて不合格でした。つまり、和歌山県教育委員会の基準では県内で最低の教員とみなされていたわけです。しかし、そんな私でも、さまざまな実践を通じて成果を上げ、学校づくりについての考えがあります。
和歌山県教育委員会はどうしたいのか?
和歌山県の学力問題
和歌山県は全国的に見て学力に問題があるとされています。しかし、それは子どもに原因があるというよりも、教育方法に課題があるとしか考えられません。この教育方法を示すのが県の教育委員会の役割ですが、これまでの結果から見ると、無策と言わざるを得ない状況です。まず、以下の表をご覧ください。
これは、和歌山県の平均点から全国平均を引いたもので、マイナスなら全国平均より劣っていることを示しています。(平成の学力調査ではA問題が知識を、B問題がその活用を測るもので、一つに統一するため、それぞれの平均を取っています。)この表を見ると、一目で全国平均を下回っていることがわかると思います。
全国平均を基準にしたのは、得点だけを比べると、問題の難易度が無視されるからです。平均を比較することで、全国的な教育と和歌山県の教育を比べることができます。平均より低い場合、児童・生徒が受けた教育の質が全国平均より劣っていた、あるいは家庭や学校の対応が全国より不適切であったと考えられます。そこで、課題をより明確にするために、小学校と中学校を二つの表に分けました。
どうでしょう。課題がより明確になりました。一番の問題は、中学校の授業方法に大きな課題があることです。小学校は近年、全国平均を上回るようになり、授業改善が見られます。しかし、中学校では全く改善の兆しが見えません。それどころか、近年は悪化の傾向さえ見られます。
特に国語科において課題が顕著です。県の教育委員会がこの問題に対処していないことが不思議でなりません。小学校でも国語に課題があり、国語へのアプローチは必要不可欠です。
私は現在の学校に赴任してから、高学年を担当していますが、すべての学年で全国平均を20~30ポイント以上上回る成績を収めています。その授業方法についても、いずれお話ししたいと思います。
ただ、こう書くと、「どうせ子どもが良かったから点数が取れたんでしょ」と片付けられるかもしれません。確かにそれも一因ですが、子どもたちの成長記録を見ると、4年生、5年生の県学力調査では、4年生で70点台、5年生で80点、全国学力調査では90点以上という結果が出ています。これらの点数から、「考える力、それを書く力」を引き出す授業ができていると言えるのではないでしょうか。
さて、和歌山県の学力問題に戻ります。私が管理職として取り組みたかったのは、「90点だから良い、50点だから悪い」といった現在の点数だけで評価するのではなく、その子がどれだけ成長したかを重視する学校づくりです。たとえば、点数が40点でも、学年初めが30点なら、しっかりと力をつけたことになります。つまり、成長を軸に授業を考えていきたかったのです。
この「成長」という観点で和歌山県の学力調査の結果を見ると、より深刻な課題が浮かび上がってきました。小学校6年生の児童が中学校3年生になったときに学力が維持できているかを調べてみました。以下の表をご覧ください。
中学3年生での全国平均との差から小学校6年生での全国平均との差を引いたものです。差がなければ学力が維持できたことを表します。プラスなら中学校で学力が伸びたことを、マイナスなら中学校での学力が落ちたことを示します。平成の時代には学力は維持されていましたが、令和に入ってからはどんどんと中学校で学力が落ちていることがわかります。特に国語の力が大きく低下しているのが顕著です。つまり、和歌山県の教育委員会が手を打つべき課題が明確であることは、火を見るより明らかです。
そんな教育委員会から十数年、最低の評価を受けていたのが私です。
次回はその最低評価を受けた私が今の学力問題がどうしてあるのかを具体的な原因について忌憚なく書いていきます。そして、そのための改善方法もできたら書いていきます。