私と卵と、これから。それから。 第十二話
採卵をしてから3ヶ月とちょっと。
新しい年を迎えるにあたっていろいろ考えた。
これまでのこと、これからのこと。
2022年1月に最初の生理が来たら、もう一度採卵をしようと考えていた。40歳で将来子供が2人欲しいなら40個保存が理想ということを覚えていたから、自然とそれを目標にしていたと思う。
備えあれば憂いないし。悩んでも今の自分にできることは行動することだけだと思っていたし、これ以上悩みたくなかったから。
これまでの流れからして、2回目の採卵は必然だと思っていた。
けれど、この3ヶ月を振り返って、これからの新しい一年で自分がやりたい事を考えた時に、もう一度採卵をするという選択肢について考えを改めた。
私は、もうやらない。そう決めた。
少なくとも今は。
思いを新たにした理由はいくつかあった。
一つは一回の採卵で運よく通常よりも多く卵子を保存できたことが大きいと思う。
平均的な採卵の個数がいくつかは知らないが、担当医師に聞いたところ一度に15個前後採れれば良い方なのだとか。私も途中経過を見た時に左右の卵巣で7〜8個ずつくらいが成長していると言われたので最終的な採卵個数も15個前後くらいを想像していた。
ところがビックリ。
採卵後に告げられた個数は驚きの26個!
未成熟卵も含まれていたので保存に至ったのは24個だったけれど、それでもだ。多嚢胞性卵巣症候群という症状を持っていることも影響しているかもしれないが、なんともラッキーだった。
運良ければあと一回の採卵で目標の40個保存が達成できる。
そう考えていたのが2021年の10月。
あと一回やれば。
そう思っていたけれど。
一度の採卵で多く採れたからか、身体への負担は想像以上だった。数少ない経験者の話を聞くかぎり、かなり個人差があるようだが、自分自身の経験を振り返ると、できればもう二度と同じような経験はしたくないと思うくらいには、しんどかった。薬を投与していた採卵までの準備期間も辛かったが(採卵のプロセス開始から採卵まで2週間ちょっとだった)、その後のリカバリー期間が圧倒的に長く地味に辛かった。
コロナにより在宅勤務が続いていたこと、年末に差し掛かっていて仕事も少し落ち着いていたことなど、身体を労ってあげるための好条件が揃っていたにも関わらず、なかなか本調子に戻らない体調にヤキモキした。
11月も半ばを過ぎた頃には、ほとんど通常通りに過ごせていたものの9月以前の自分の状態には戻っていなかった。
こうして言葉を綴っていた2022年1月下旬時点でも少し体調面で気になることは残っていた。
そんな自分の身体の状態と冷静に向き合って、「あと一回やれば」という考えに疑問を持つようになった。もちろん、やったことに後悔は全くしていないし、理想とされる個数に達していないにせよ、凍結してある卵子があるということで得られる安心感は間違いなくある。
あるけれども。
将来パートナーとの子供が欲しくなるかもしれない未来のために卵子凍結を決意した私は、まだそのパートナーと出会ってすらいない。
将来の保険としての凍結保存だけど、自分の将来につながる大切な数ヶ月を、また体調不良に悩まされつつ過ごすのは嫌だと思った。
やりたいこと、挑戦したいことがいろいろあるのに、それを後回しにしてまで「もう一回」やる必要があるとは思えなかった。
新しい一年を前に、自分の貴重な時間を無駄にしたくないと思った。
わからないことだらけの未来だからこそ、また3、4ヶ月犠牲にするより、目の前の時間を精一杯楽しみたいと思った。だから。
私は、もうやらない。そう決めた。
少なくとも今は。
2022年1月、その年初めての生理が来た時、少しドキドキした。
それでも自分の気持ちは決まっていた。慌ててクリニックに診察予約の電話をする事もなく、クリニックに行くために翌日の仕事のスケジュールを調整することもなく、ただありきたりの一日をすごした。
そして、その夜。
自分の決意を新たにして安堵のため息がでた。もう、迷いはない。
そのまま、久々にすごく深い眠りについた。
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