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むにみずべ 海外番外編 パリオリンピック開会式

パリオリンピック開会式。
スポーツ選手や、音楽、ファッションなどは、もっともっと詳しい方にお任せして、ただひたすらに「水辺」から見る開会式。

現地におらず自分で撮った写真はないものの、いつか水辺の提案をするのに参考になりそうなアイデアが詰まっていましたので、
曲線ツールとグラデーションによる魂のパワポイラストでお届けします。


世界的なパーティーリバー、パリリ

フランス王室の祝祭、幾度も開催されたパリ万博、そしてオリンピック。世界中でセーヌ川ほどのパーティーリバー(略してパリリ)はないでしょう。ちょうどパリですし良いですね。

さぁそんなパリリの本領発揮です。
2024年、100年ぶりのパリオリンピックの開会式もまた、セーヌ川で行われるのです。

もちろんムニは眠い目をこすり上げながら当日見届けましたが、まだ見られていない方、各種見逃し配信を漁り、どうにかご覧ください。フランスの英知が詰まった結晶たる数々の仕掛け、こんなところでネタバレを食らってはいけません。

まず素敵だったのは、多様に華やぐ橋です。


橋は、ゲート ステージ ランウェイに

パリ東部オステルリッツ橋から始まる、開会式の水上パレード

橋の下にも水膜が張られ、直前まで入場する船を見せない開演前の劇場のような演出をしつつ、
突然、橋の上でトリコロールのスモークが噴出し、開会式が始まります。お決まりのギリシャから入場、いよいよスタートです。

「ゲート」として使われる橋に続いて、パリ発祥の地、シテ島を一望できるトゥールネル橋は「客席」として使われます。
普段陸から見ると平面的なパリの橋が、階段状の客席を設置することで、立体的に立ち上がる風景は、木造による太鼓橋が架けられ、都市のアクセントとなっていた日本の江戸の風景にも見られた面白さが感じられて、琴線をくすぐられます。

さらに、太鼓橋は神輿が一番目立つステージともなっていた訳ですが、セーヌ川現存最古の橋、ポンヌフでは、軽業師の「ステージ」となりました。

細長い棒の上に立ちゆらゆらと揺れるパフォーマンスは、川からも河岸からも見ることができ、ジップラインや、ワイヤーアクションと共に、客席とはまた違った柔らかな立体感を生み出します。

そして終盤、日も落ちてきた中でエッフェル塔を臨むドゥビリ橋は、「ランウェイ」になりました。

格好良いパフォーマンスですが、それ以上に感動したのは、この橋をあたかも屋内のように感じさせる工夫。橋を支える部材の間に吊り下げられたバトン状のライト、そして頭上のシャンデリア。そして設置されたランウェイのステージ。
もともと歩行者用のアーチ橋だからこそ、光で閉じることで、まるで屋内かのようなパフォーマンスの場に生まれ変わりました。

様々な演出の見せ場として使われる橋と共に、セーヌ川の水面もまた、広大な演出のキャンバスとなります。


川には、銅像 パネルに もちろんステージ

川幅が広い場所では、ライトアップされた噴水が水面から吹き上げ、パレードを演出します。しかし、それだけではありません。

日本では絶対にこんな登場しない目だけがセーヌ川からのぞく名画

世界に名だたるルーブル美術館近くでは、世界的名画たちのパネルが水面に登場。単純ではありつつ、水面ならではの変化をつけた演出ができる面白い仕掛けです。中でも目の角度が西洋絵画で最も面白いと有名な、「いかさま師」からも登場です。

もとの絵もだいぶ面白い
ラ・トゥール ダイヤのエースを持ついかさま師 ルーブル美術館蔵

そしてもちろん、水面を使うと言えばステージです。

水面上に設置された、今大会を代表するであろうアーバンスポーツのセットでは、BMX等よるパフォーマンスまで、水の上で行ってしまおうという取り組み。

ステージはヴェルサイユ宮殿の庭園をイメージ

そういえばこの背後のグラン・パレの向かい側には、普段から緑の庭園が浮いています。5つの台船の上にある水上公園。だからこそここに、庭園を模したステージが設置されたのかもしれません。

Jardins de l'Archipel des Berges-de-Seine-Niki-de-Saint-Phalle
セーヌ川の群島公園

そして、橋と水面の演出による会場の準備が整ったところで、いよいよ登場するのが、オリンピックで激闘を繰り広げる各国選手が乗る、船です。


そしてみんなを運ぶ船

各国選手団は大小様々な船で登場しました。

世界最大の巨大な選手団で、バトームーシュ(パリ万博に始まる元祖セーヌ川クルーズ)を貸し切るアメリカ

可愛い木造船が似合うブータン王国

オランダとペルーが同乗するのは、流線形の近未来感のあるレストランクルーズシップ

過去記事で書いたサンマルタン運河クルーズの船には、パレスチナ、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイが乗っていました。
おすすめの船首の特等席はちょうどパレスチナ選手団のいた場所です。

絵だと船の特徴が全く分からなかったので
写真をどうぞ

いかにパリで多種多様な船が日々使われているか、そしていかに世界には多種多様な国があるか。それを様々感じさせてくれる仕掛けでした。


くしくも雨の中行われた開会式

選手のコンディションを気遣う声、
またこれまでの開会式と比べ期待とは違ったという声、様々あるかと思いますが、
水辺の視点から見て、この大舞台が雨の中でも大成功をおさめたことは、非常に良かったと思います。そう、誰も知らなかったことですが、雨でも外でオリンピックは開会できるのです。

雨が降るかもしれないから、まぁ屋内で。
という至極当たり前で理性的な判断を、はるか彼方まで吹き飛ばす、川で街全体と一緒に行う素晴らしさを、強烈に世界に知らしめることができました。

それでもまだ、川に柵がなく、足を投げ出してくつろぐのが当たり前の国だからこそ出来たのかもしれません。

しかし、この日本は前例に倣わせたら右に出るものはいません。

これまで会議で潰されてきた数多の素敵な水辺が、実現するにはどうするかという動きにパラダイムシフトする、この開会式はそんな新しい水辺の時代の幕開けにもきっとなるのだろうと思っています。

新時代の東京、日本の水辺を面白くするのに食い込めるよう、引き続き頑張りたいと思います。

以上、感動して徹夜した、パリオリンピック開会式でした。

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