NHK「映像の世紀バタフライエフェクト シーズン1エピソード85 - ベトナム 勝利の代償」(2025年1月27日放送)/「同 シーズン1エピソード37 - ベトナム戦争 マクナマラの誤謬」(2023年5月29日放送)
今日は春節。ベトナムでは「テト」。「テト」と言えば、我々の世代にとってすぐに思い浮かぶのは、「テト攻勢」。上記の画像はWikipediaより引用。
「テト攻勢」(1968年1月30日〜2月12日)がすぐに思い浮かぶのは、ベトナム戦争の様子が世界中に放送されてベトナム反戦の気運が広まった契機となった軍事作戦だったからである。私自身はまだ7歳だったのでその社会的なインパクトについての同時代的記憶はほとんどないが、安田講堂の攻防戦(1969年)やロバート・ケネディ暗殺(1968年)ともに映像的記憶のもっとも古いものの1つである。ベトナム戦争についての有名な画像として子供心に鮮明な印象をもったものでは、ナパーム弾が投下されるなか逃げまどう少女の写真、ゴ・ディン・ジエム政権に抗議し焼身自殺をした仏教僧侶(ティック・クアン・ドック)の写真、そして拳銃で頭を撃たれるグエン・ヴァン・レム大尉の写真(下)。
今年はベトナム戦争終結(=サイゴン陥落 1975年4月30日)からちょうど50年ということもあって、NHK映像の世紀バタフライエフェクトでも取り上げられたので視聴。同時に2023年に放送された「マクナマラの誤謬」も視聴した。
「マクナマラの誤謬」はJ.F.ケネディ政権とジョンソン政権下で国防長官を7年(1961〜68年)にわたり務めたロバート・マクナマラが陥った計算の罠についてのドキュメンタリー。一人の米軍兵士が何人のベトコンを倒せば勝てるのかというキルレシオを設定、殺したベトナム人のボディカウントをおこない、初期段階では計算上の勝利を見通したにもかかわらず、なぜ米軍は勝てなかったのかが描かれている。ラストでベトナム戦争後20年経ってマクナマラがベトナムを訪問し、ホー・チ・ミンの右腕と言われたヴォー・グエン・ザップ将軍と談笑するシーンがあったが、300万人もの同胞の殺害を指揮した張本人とよくあんな顔で会えるものだと思った。すごい軍人であると同時に大政治家なのだろう。
他方、「ベトナム 勝利の代償」はベトナム戦争中に西側諸国として唯一北ベトナムでの取材を許可された日本電波ニュース社の映像を多く使いながら、ベトナム戦争以前のホー・チ・ミンの活動から始まり、日本の敗戦後の独立、対フランス戦争、そしてアメリカとの戦争がどのような代償を払いつつ戦い抜かれ、勝利したかが描かれていた。ベトナム戦争というとアメリカ帝国主義の横暴に対抗して自由と独立を守ったベトナムととらえがちだが、ベトナム人民の命がけの行動を賞賛するだけではなく、そこには党への忠誠、愛国競争運動などの上からの抗いがたいプレッシャーもあったこと、そして多くの犠牲があったことも描かれており、良かった。
蛇足だが、ベトナム戦争の和平協定が結ばれた1973年1月27日、私は小学校5年生。担任の教師にベトナム戦争についての作文をさせられたのをよく覚えている。そういう雰囲気が日本にもあったことは今の若い人はピンと来ないかも。