見出し画像

大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(4)「『雛形若菜』の甘い罠」(2025年1月26日放送総合20:00-20:45)

田安二代目当主の田安治察(入江甚儀)が亡くなったのが、1774(安永3)年。『雛形若菜初模様』(大判[約39cm×27cm]浮世絵の嚆矢)が出版されたのが翌1775年からということでドラマはちょうど250年前のお話。やがて日本に開国を迫ってくるアメリカという国が独立戦争をおっぱじめたのも1775年。アダム・スミスが国の豊かさの本質を論じ、重商主義を厳しく批判する経済学の古典『国富論』を出版したのは1776年のことであった。

さてスミスが批判対象とした重商主義政策を日本で実行していった田沼意次(渡辺謙)の政策のうち商工業者に特権を与えて保護する代わりにそこからの税金(江戸時代は運上・冥加と呼ばれた)で幕府財政を潤そうとする政策があった。もともと江戸時代の税金は農民に課された年貢しかなかったので、商工業者に株仲間を結成させてそこに税金を掛ける政策は画期的であったが(注)、蔦重(横浜流星)のように新規参入しようとする企業家にとっては都合が悪い。今回はその悔しさが全面に出た回だった。ネタバレ的なことを言えば、蔦重も結局は仲間株を手に入れて版元となっていくのだが、その辺は今後のお楽しみである。

初回で田沼意次と面会していた商人として和泉屋三郎兵衛(田山涼成)という商人がいたが、この商人も蝦夷地での鯡粕(にしんかす)を扱う江戸の干鰯問屋(肥料問屋)。田沼はこうした商人に特権を与えることで、その見返りを個人的にも受け取っていたわけだ。まぁ、賄賂政治と言えば賄賂政治なのだが、本来の目的は幕府財政収入増大のため。まさにザ・重商主義。

注:株仲間自体は自然発生的なもの。吉宗の時代に公認され、田沼はこれを奨励・推進した。

画像は税務大学校の資料ページより引用の「酒屋仲間印」:https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/shiryou/library/02.htm#a1-4


いいなと思ったら応援しよう!