サバイバーライバー
ライバーになってほんの数日後、心身共にズタボロになる事件が起こった。
気持ちの行き場のなさにどうしようもなくなったときに元彼が心配してすぐに駆けつけてくれたり、友人たちがすぐに集まってくれ慰めてくれた。
車や人手が必要な案件も、すぐに友人たちが手配してくれて
何も考えられなかった私はただみんなに甘えた。
その中には、こんなことを手伝ってくれるなんて思いもしなかった仲間がいた。
この件でわたしは本当にたくさんの仲間たちに愛されていると感じて、たくさん泣いた。
二日後には、新井英樹さんの家に原稿を取りに行き、話を聞いてもらった。
漫画にはわたしがモデルだというキャラクターが幸せそうに笑っていた。
「むねくん、物語はいつでもまだ途中なんだよ」と新井さんは言ってくれた。
事件が起きた次の日も、ライバーとして配信をした。
正直、かなりきつくて何か歌うと感情的になって泣き出してしまう始末だった。
ライバーとして、リスナーの方に元気を届けようと思っていたのに、やっていることは逆だった。
むしろ、リスナーの方に私は元気をもらっていたのだ。
精神的なアップダウンに自分自身が振り回されながら、ライブ配信は続けた。
ポコチャの中では、ランクがあり、配信者はランキングを競って毎日の配信を頑張っている。
FからはじまりD、C、B、A、Sランクと上がっていく。
中でもデビューして1カ月以内にC帯というランクに行くことをはじめの目標にしている方が多く、わたしもそれに習って頑張っていた。
やってみると、当たり前かもしれないが簡単にランクは上がらない。これは、結構難しい挑戦だったのかも知れないとすぐに悟った。もちろん、すぐにランクが上がる人もいる。
段々とわたしはランクを上げることよりも、自分自身のためにやっている感覚になっていた。
日々をいかに楽しく生きるか。
楽しさとは、なんだろう。
今の私にとっては頑張ることが楽しいことだった。
自分自身を語りながら、歌を歌い、少しずつ歌を歌いながら泣くことはなくなっていった。
それに伴って、わたしは小さい頃を思い出しはじめた。
ただ、テレビに映るアイドルたちが眩しくて、惹きつけられたこと。いつしか、その中に入りたいと夢を見るようになったこと。
一度、その夢を叶えることはできたが、続けることはできなかった。
わたしはワガママで、どこまでも自分でやりたいと思ってしまう。
そんなことが、ライブ配信では叶ってることに気がついていった。
毎日の私の生きるドキュメンタリーを共有して、子供の頃好きだった歌を歌う。
わたしは、あの頃のアイドルたちが大好きだったし、歌を歌うことも大好きだった。
大好きという感情だけで良かったのだ。
そこには有名になりたいとか、男同士のよくわからないホモソーシャルな愛にすら見える戦いもない。
私が体験した今回の事件とは全く逆の世界。すでに、私は星男や自分の活動、仲間たちとそれを完成させていた。
そのコントラストの違いはなんだったのだろうか。
ただ、キラキラとした夢がある。
そんな世界が大好きだった。
そんなことに深く気がついていった時、毎日何時間も配信をしてもなんの辛さもなくなっていた。
ランクを上げるという目標は、自分を奮いたたせるひとつの道具だった。
それよりも、自分自身に気がつき、癒され、誰かに少しでも元気になってもらいたいと思った。
そんな日々の中、昨夜念願のC帯に行くことが達成することができた。
本当に嬉しかったけど、一番嬉しかったことはこの道のりだった。
そして、この文章を書くことができたこと。
私は、この1カ月でそれができたことが本当に嬉しかった。
そしてそれが、たくさんの人たちに支えられて成り立っているということが本当に解ったことが、なによりも一番嬉しい。
人はひとりでは生きられない。
そのなかで、一番大事なことは信頼だ。信頼とは、少しずつ毎日の嘘のない生き方の中で築くことができる。
いつも本当にありがとう。