きっかけは1つのWeibo投稿。中国フィギュアメーカー「POP MART」、香港IPO申請までの軌跡
クオン中国支社代表の佐藤です。中国で日本や韓国のキャラクターを展開したり、逆に中国のキャラクターを日本や韓国に展開したりしています。
今回は中国のフィギュアメーカー「POP MART」がどのようにして成長を遂げてきたのかを紹介します。
POP MARTとは?
泡泡玛特(日本名:ポップマート・英語名:POP MART)は、2010年に中国・北京を拠点に設立されたポップカルチャーをテーマとしたフィギュアメーカーです。
フィギュア開発やコンテンツ開発、IPライセンス、クリエイターマネージメント、イベント開催など、多方面で事業を展開しています。
「Make Something Fun」がPOP MARTのブランド理念です。
香港証券取引所へ上場申請
2020年6月1日、POP MARTが香港証券取引所に提出した目論見書が公表されました。
目論見書によると、POP MARTは2017年〜2019年の売上高および純利益は日本円換算でそれぞれ以下のようになっています。
2017年 売上高:24.3億円 純利益:2,200万円
2018年 売上高:79.1億円 純利益:15.3億円
2019年 売上高:258.9億円 純利益:69.3億円
売上高は2017〜2018年にかけて225%、2018〜2019年にかけて227%増加しています。
POP MARTの発展
2010年11月:POP MARTの初店舗が北京欧米匯ショッピングセンターでオープン
2015年1月:北京王府井OPMショッピングセンターで「LIFESYLE」というコンセプトの旗艦店がオープン
2016年6月:アリババグループが運営する中国最大の小売りECサイトTmallに参入(2020年6月時点で、Tmallオンライン店舗は191万人フォロワー)
フィギュア専門ECサイト「葩趣(PAQU)」もリリース
2016年7月:上海の初店舗が上海港匯恒隆広場でオープン
2017年1月:中国のベンチャー向け株式市場「新三板(New Over the Counter Market」に上場
2017年9月:中国大陸で初の大規模玩具展「北京国際潮流玩具展」を主催
2018年4月:アジア最大規模の玩具展「上海国際潮流玩具展」を開催
2018年9月:フィギュアの自動販売機(通称ロボットショップ)が200台突破
2018年11月11日(独身の日):Tmall店舗での1日の売上が2786万元(約1.2億円)に達し、玩具カテゴリランキングで1位を獲得
2019年12月:ロボットショップが800台突破
赤字続きの雑貨屋時代
2010年の初店舗開店後、POP MARTは赤字が続いていました。
POP MARTの過去のWeibo投稿を見ると、開店当初、生活用品・おもちゃ・手芸品など、雑貨を幅広く取り扱っていたことがわかります。
その結果他の雑貨屋と差別化ができず、店舗の認知度も全く向上しませんでした。
1つのWeiboの投稿がきっかけで方針転換、黒字化
2015年末、創業者の王寧は、POP MARTでも販売していた「Sonny Angel」というキャラクターの、箱を開けるまでどの種類のフィギュアが入っているかわからない「ブラインドボックス」という販売手法に着目しました。
そして2016年初め、Weiboでフォロワーに対し「皆さんはSonny Angelのほかに、コレクションしたいキャラクターはありますか?」という質問を投稿したところ、フォロワーの多くが、「Molly」と答えました。
Mollyとは?
Molly(モリー)は、2006年に香港人アーティストKenny Wongによって生み出されましたキャラクターです。綺麗なブルーの瞳と、少し不機嫌そうな可愛いらしい表情が特徴です。
Mollyのフィギュアは2016年以前から、ブラインドボックスではない通常の方法でPOP MARTで販売されていました。
フォロワーからの声を半年で実現
ブラインドボックスという販売手法とMollyに可能性を見出した王寧は、このWeibo投稿から3ヶ月後の2016年4月に、Mollyの中国大陸における独占ライセンスを獲得しました。
さらにその3ヶ月後の2016年7月、ブラインドボックスのMollyの「十二星座」シリーズが誕生しました。
Mollyの十二星座シリーズは大ヒットし、Tmall店舗では200セットが4秒で完売、実店舗でも常に在庫切れの状態が続きました。
レアフィギュアの転売額は36,000円
POP MARTのブラインドボックスには、シリーズごとに「Hidden Edition」というシークレット品を混ぜています。
Hidden Editionの流通数は非常に少なく、中国の中古買取市場では価格が跳ね上がっています。
中国のCtoCプラットフォーム「閑魚(Xianyu)」では、「Satyr Rory」のクリスマスシリーズのHidden Editionが、定価の59元(約900円)から約40倍の2350元(約36,000円)で取引されました。
POP MART経済圏を構築
POP MARTはIP事業を軸に、「アーティストの発掘・IP運営・消費者とのコミュニケーション・玩具産業のアップデート」という4つの面から、POP MART経済圏を構築しています。
1. アーティストの発掘
POP MARTは中国をはじめ日本、韓国、スロベニアなど、さまざまな国のアーティストと契約を結んでいます。
2. IP運営
現在85個のIPの商品を展開しており、そのうち12個が自社IP、22個が他社独占IPで、51個が他社非独占IPです。
自社IP:Molly、Dimoo、BOBO&COCO、Yukiなど
独占IP:PUCKY、THE MONSTERS、SATYR RORYなど
非独占IP:ハローキティ、ミッキーマウス、ハリーポッターなど
この中でも1番人気のあるキャラクターはやはりMollyであり、2019年の総売上高の27.4%をMollyが占めています。
Mollyのブラインドボックスは、星座・チェス・十二支などさまざまなシリーズがあります。また、中国ならではの伝統文化を表す宮廷瑞獣や西遊記シリーズなども人気です。
2018年よりPOP MARTはライセンス事業も積極的に展開し、現在はチョコレートブランド「ドヴ(DOVE)」、炭酸飲料ブランド「ファンタ」、化粧品ブランド「イプサ(IPSA)」など各業界のトッププレイヤーと積極的に提携しています。
3. 消費者とのコミュニケーション
消費者はアプリやWeChatミニプログラムを通じて会員になるとクーポン券を受け取ることができますが、POP MARTの会員数は2020年6月現在で320万人を超えています。
ファンの声をきっかけに成長したPOP MARTは、現在でもファンとのコミュニケーションを積極的に行なっています。
4. 玩具産業のアップデート
POP MARTは玩具産業自体をより良い産業とするため、玩具関連会社が出展する展示会を北京と上海でそれぞれ年に1回ずつ開催しています。
すでに5回開催しており、中国企業のみならずディズニーや、日本からもバンダイ、グッドスマイルカンパニーなどの企業が参加しています。
海外展開もスタート
POP MARTはすでに日本、韓国、東南アジア、オーストラリア、北米・ヨーロッパなど20余りの国と地域に展開しています。
特にロボットショップでの展開は、店舗を構える必要がないため、最小限のリスクで事業を開始できると海外パートナーから好評を得ています。
日本でもロフトなどでPOP UP STOREを行なっており、日本でも人気になる日が非常に楽しみです。
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※参考及び画像引用元
https://www.popmart.com/home
https://jp.popmart.com/
http://www.doc88.com/p-28739706382495.html
https://www.digitaling.com/articles/211336.html
https://m.sohu.com/a/250365320_596367/
https://mp.weixin.qq.com/s/q69wJszTOc8Q7jd24hqhUA
https://mp.weixin.qq.com/s/21jwToioOKw8MNrYboiDpw