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【9日目】時間軸の「始まり」とは何か(セカイのトリセツ)

◆テレビを録画したいから、ビデオデッキを用意する

 時間が記録されている、だから『時間軸』というものがあるはず、という話の続きをしましょう。

 現代の僕たちの認識では、時間というものは「過去」「今」「未来」の三種類に分かれていて、僕たちは「今」を体験し続けているけれど、「過去」へ戻ることはできないし(思い出すことはできますが)、「未来」というものはそもそも「まだ存在しない」ものだ、というくらいのものだと誰もが考えているのではないかと思います。
 だから「より良い未来を『創る』ために、今をがんばろう」というような希望を持ったり「あの時こうしていれば……」という後悔をしたり、という体験が「今」できるわけです。

 ところが……。前回の話にあったとおり、時間というものは

『記録できる』仕組み

の上で成り立っています。こういう仕組みがすでにわざわざあるんだから、当然それは「記録するためにある」=「現在記録されている真っ最中」と考えるほうが自然です。

 僕たちが家にビデオデッキを持っているのは
「テレビ番組を録画(記録)するため」
ですもんね……何をする道具なのか知らないけど、カッコいいからなんとなく置いている、という人は少ないでしょう。
 だからやっぱり「仕組み」が存在している以上、その「仕組み」は実際に使うためにあって……つまりやっぱり『時間』は全部記録されていて、どこかにその『今までの時間』が「とってある」と考えるほうが自然です。録画したビデオのように。

 そしてその延長線上に、上級編で話した

「未来という時間の記録」もすでにある

という話があります。一見不思議に思えますが、これらの事実は実にシームレスにつながっているんです。

 では、モトの仕組みから考えられる「過去」そして「未来」という『メカニズム』を改めて考えていきましょう。


◆『ビッグバン仮説』と宇宙の始まり

 僕たちニンゲンは地獄のルール(上級編参照)によって、現在のことしか「知覚できない」仕組みになっています。過去のことは「思い出す」ことしかできません(実際にその時どうだったかを「知覚」できるわけではないのです……だから「覚え違い」なんてものが出てきます)。もちろん未来のことは誰にも分かりません(まれに予言ができる人もいますが、外れることもありますよね)。
 この「過去」「未来」はどういう仕組みで「ある」のでしょうか。順番に考えていきましょう。

 まずは「過去」です。モト理論から「ある」と推測される「時間の記録」、つまり『時間軸』を過去に向かってさかのぼれば、過去のすべての『刹那(せつな)』が全部記録されているはずです。この「過去」というのはどこまであるか、というと……当然

「宇宙の始まり」

の瞬間のはずです。

 この「宇宙の始まり」というのは、現代の科学でおおよそ推測されています。それは天文学で『ビッグバン』と呼ばれる現象です。お聞きになったこと、ありますよね?

 科学の世界では、僕たちの宇宙は『ビッグバン』と呼ばれる現象で始まったことがおおよそ分かっています(仮説でもあります……過去に見に行かない限り証明できませんので)。
 ビッグバンの前は、宇宙というものは「ゼロ次元」で、縦も横も高さもなく、何も存在しない状態=【無】の状態だったそうです。それがとある「時刻」に突然、縦と横と高さ、そして物質が存在する「空間」になったんだそうです。これがビッグバンの瞬間です。

 なぜこの「ビッグバン」が見つかったのかというと、天文学の世界で宇宙を調べていくうちに、科学者たちが
「どうも宇宙というものは『膨張』しているらしいぞ」
ということを発見したことがきっかけです。宇宙が『膨張』している、つまり宇宙空間全体の容積が大きくなっている、ということが判明したのです……その理由は「地球と星々との間隔が、時間とともに遠くなっているから」だそうです。
 これを逆に考えると、過去の宇宙は今より小さい、ということです。それをさらにさかのぼってどんどん、どんどん過去へ……するといずれ完全に収縮した「点」になるはずだ、というのが『ビッグバン仮説』です。

 モトが示す「宇宙の始まり」、言い換えると『時間軸』の始まりというのも、おそらくこの『ビッグバン』の瞬間だと推測されます。宇宙が膨張しているものなのだとすると、膨張していない『ビッグバン前』が記録されていても仕方ないからです。
(これは「宇宙の時間を『記録』している者」にとって役に立たない、という意味です……後の章で詳しく扱います)


◆未来が「存在する」という推測

 一方で……「未来」はどうなっているのでしょうか?
 確かに宇宙空間の時間がすべて「記録できる」のだとしても、それが直接「未来がすでに決まっている」(上級編参照)という結論にはならないはずですよね。

 ここで出てくるのが【4日目】でお話しした

三次元空間の『裏側』

という話です。この話と『ビッグバン仮説』を合わせると……僕たちの宇宙である『表側』で「ビッグバン」が起こったとき、裏側は一体どうなっていたのでしょうか?
 こういったことにも「モト理論」で考えると、なんと『結論』が出てしまいます。そしてそのことから「未来はすでに決まっている」という結論も出てしまいます。
 次回はそれらについてもっと詳しくお話しますね。難しい話が続いていると思うので、今日はちょっとアタマを休めて下さい……。

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日南本倶生(みゅんひはうぜん)
「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)