デジタル時代は広告からコンテンツへ
【1】広告からコンテンツへ
ユーザー接点を創出する上で、従来の広告だけではワークしない事が多くなってきた。
時代の流れを察知し、優れたコンテンツマーケティングを実施しているブランドは、ユーザーに質の高いオリジナルのコンテンツを提供し自社ブランドのストーリーを語ることで、ユーザーとの接点が増え、ファン化の促進から長期的な関係性を築いている。
つまり、一過性の広告という手法ではなく、ユーザーとの持続可能性を考慮した際に自社の資産にもなるコンテンツが新しい広告の手法としても機能していると言える。
これまでコンテンツは、テレビCMや新聞広告、雑誌広告などのトラディショナルなメディアの中で広告を引き立たせる側面として機能していたが、SNSの台頭により個の発信力が高まったことで状況は一変。
広告とコンテンツの境界線が曖昧になり、ユーザー自身が自らSNSや口コミサイトをはじめとするオンライン上のコミュニティで企業やブランドについて発言をし、それらの主張が正しか、本当に価値のあるものか、自分にとって必要なものかを議論、検討するようになった。
その意味でも、広告による企業やブランドの一方的なメッセージ(プロダクトアウト)はユーザーかの共感が得られない時代になり、よりユーザー起点(マーケットイン)でユーザーとの関わりを密にする事ができるコンテンツの需要が高まっていると言えます。
【2】コンテンツにおける媒体の種類
コンテンツの媒体には以下のようなものが挙げられます。
◯WEBコンテンツ
◯動画コンテンツ
◯音声コンテンツ
WEBコンテンツは、自社サイトから発信される様々な情報のことで、商品のPRや販売目的だけでなく、商品理解や共感に繋がるテキストベースの記事コンテンツを作成することで検索サイトにおけるSEO効果も高まり、潜在ユーザーを囲い込むことができることから、新規〜リピート〜ロイヤルユーザーまでWEBのみで育成する事が可能です。
動画コンテンツも商品理解や共感という意味ではWEBと同様の効果がありますが、動画にすることでより情報量が多くなり理解を深められること、音声と映像で直感的に印象に残りやすいこと、また、現代の通信技術やスマホの進化によりユーザーのライフスタイルにもマッチしていることから益々活用シーンが増しています。
音声コンテンツはさらなるユーザーニーズを拡張する上で、インターネットラジオやPodcast、最近では、顔は出したくないけれど声だけ配信するというような音声配信サービスも出てきています。どれも従来ラジオのように「ながら聞き」に適していることから、記事や動画よりもユーザーのライフスタイルに馴染みやすく、親しみや愛着が湧きやすい媒体です。
また、コンテンツをリーチさせていく上では検索サイトはもちろんのこと、各種SNSやブログ、YouTubeなどのプラットフォーム(アーンドメディア)を活用していきます。
ただし、アーンドメディアといってもその特性やユーザー層がそれぞれ違うので、同じコンテンツをSNS違いで出していては意味がなく、プラットフォーム毎の特性を踏まえ、CVに繋がるコミュニケーションプランの構築から明確なKPIを定義し、KGI(達成目標)に繋げる為の運用が必要になります。
【3】サムネイルがユーザーとコンテンツをつなぐクリエイティブ
上記のようにコンテンツ全盛期とも言える現代において、また5G等の通信技術が発達するにつれて、特に動画コンテツの需要が増していきますので、
これからさらに動画を通したコミュニケーション戦略、企画性、そしてクオリティが大事になってくるのは言うまでもありません。
調査会社のNielsenが調査したYouTubeユーザーに関する調査2019では、ある商品に対する購買検討ユーザーの50%以上が購入の意思決定に
動画を視聴しているというデータも公開されています。
皆さんも無料、有料を問わず動画サイトを見られていると思いますが、それらの動画コンテンツに必ずと言っていいほど必要になるクリエイティブとして「サムネイル」があります。
このサムネイルという存在、普段何気なく選択の対象として見ているかと思いますが、ユーザーとコンテンツを繋ぐタッチポイントという意味では、
重要なクリエイティブであり、膨大にある選択の中でその動画を「クリック=行動したくなる仕掛け」がふんだんに取り入れられています。
そして、動画サイトにおけるサムネイルは複数用意して運用する事が効果的であると言われ、YouTubeであっても、Netflixであってもこのサムネイルによって再生回数が数十倍変わる事が明らかになっており、一度見過ごされ埋もれてしまった動画でも、サムネイルを変える事で再生回数が爆増するという事もあり、コンテツがいかに運用次第で変わるかという事と、資産としてのコンテンツの重要性がわかります。
【4】デジタル時代のクリエイティブはFIXかフレキシブルか
では、広告物におけるビジュアルと、コンテツにおけるサムネイルをクリエイティブ(メッセージ)としてその役割を比較するとどうでしょう。
広告物:キービジュアルベースのFIXした表現
コンテンツ:サムネイルベースのフレキシブルな表現
※一定のプロモーション期間として考えた場合
クリエイティブとしての役割が違うという意味では、FIXもフレキシブルも場面によっては必要ではあるものの、コミュニケーションをユーザー起点で考えた場合、FIXがプロダクトアウト(生産者視点)である事に対し、フレキシブルはマーケットイン(ユーザー視点)になるので、よりユーザー側に立ち、ユーザーの行動を後押しするという意味では、これまでFIXしたクリエイティブが当たり前だった媒体や表現手法もフレキシブルに捉える事ができれば「もう一歩時代を捉えたクリエイティブに昇華」させる事ができるのはないかと思っています。
また、クリエイティブがフレキシブルになることで、ユーザーの些細な心の変化=態度変容を捉える事にも繋がります。
動画サイトに限った事ではありませんが、例えばとして、同じ映画であってもサムネイルとして切り取るシーンや言葉、出演者などは本来人それぞれの好みによって違うものであり、キービジュアルだから、キャッチコピーだから、主演だからサムネイルに使用するという発想はプロダクトアウト的であるとも言えます。
それらがフレキシブルになるとどうでしょう。
初回はキービジュアルを使ったサムネイルを使用するでもよいと思います。
ただし、それがクリックされなければ、違うシーンで、出演者で、言葉でというように運用によって変化を持たせる事で、ユーザーの心の動きを捉え、よりクリックとして行動に促す事が可能になります。
余談ですが、Netflixはこの辺り非常に優秀で、僕もNetflixユーザーですが、動画サムネと画像サムネの使い分けや、サムネのパターンも相当数あり、
一度スルーした動画でもサムネのシーンが違う事で面白そうと思えるのを実感しています。
【5】クリエイティブにおけるフリークエンシーの重要性
ただ闇雲にクリエイティブ違いのサムネイル当て続ければいいのかというとそうではありません。
その最適値を図る指標として、フリークエンシーがあります。
フリークエンシーとは、1ユーザに対する広告の接触頻度のことであり、1ユーザーに対し1日1回、1時間に1回などを設定し、その最適値を導き出し運用していくというものです。
テレビCMでも用いられる指標なのでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、従来のフリークエンシーはあくまで単一(同じ)のクリエイティブであり、デジタル広告などでも同様に頻度やタイミングの最適化という観点で分析されることが多かったのですが、現在のフリークエンシーの考え方は、
ユーザーの態度変容を捉える上で複数のクリエイティブを運用していくという前提でその最適化を図ることが必要になります。
これは、デジタル上での施策はほぼ全てと言っていいほど何かしらのコンバージョン(成果)をベースに語られる事が多い事から、より成果を出すために指標の考え方も変化しました。
上記のように、クリエイティブが従来よりも明確に成果が求められる事、その判断をするのがクライアントではなく1ユーザーになる事から、いかにクリエイターやマーケター自身がユーザーを理解したコミュニケーションプラン、タッチポイントになるアウトプットとしてのクリエイティブを作れるか、また、それら施策を実施、運用する上でデジタルの特性を理解しているかで成果が大きく変わる事を知っておいて損はありません。
フリークエンシーの最適値については、商材や施策により様々なのでここでは割愛します。
【6】デジタル時代の広告コミュニケーションのあり方とは
一言で言えば冒頭にもある通り「企業とユーザーの持続可能性の実現」であると思っており、その意味では「デジタルはコミュニケーション/クリエイティブそのもの」とも言えます。
ブランディングやプロモーション、販促、それにまつわる、グラフィック、コピー、動画、WEB、イベントなど、僕たち広告クリエイターやマーケターはクリエイティブとしての表現領域も多義に渡りますが、これまでのような画一的で限定的なクリエイティブ視点ではなく、デジタルという全てが繋がる時代に、この両者の持続可能性を追求し、包括的なコミュニケーションとしてアウトプットしていく事が今最も必要なクリエイティブであると思っている。
コンテンツ全盛とはいえ、広告が完全になくなることも、トラディショナルなメディアがなくなることも当面はない。
ただし、コロナによるニューノーマルはすでに始まっている中、クライアントだけでなく、ユーザーとの関わり方、デジタルへの理解、そしてコミュニケーションやクリエイティブに対する考え方や捉え方の幅を常に広げ、新たな価値を構築し、ニューノーマルを創出する側になっていきたいと思う。
以上。
むな