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《夢儚散文2 わがままとあるがまま》

「わがままな心とあるがままな心の違いってなぁに?」
「多分迷惑か迷惑じゃ無いなのかな」
「迷惑ってなぁに?」
「他人が困る事と言う感じかな。でもやたらと困りがちな人が近くにいたら、いつもわがままな心扱いされちゃうね。そう考えたら関係性で変わってくるって事なのかな。それともその時の社会的な価値判断なのか…」
「そういう事ばかり考えていると疲れない?」
「まぁそうなんだけど、生まれつき考えが止まらない面倒くさい性格ってのもあるがままな心なのか、わがままな心なのか…」
「それすら聞いていて面倒臭いわ」
そんな会話を続けていたら、夕日で赤く染まっていた部屋は色彩を失い、白い壁と真っ黒な彼女のシルエットだけが目に映っていた。

暗い影が語りかけてきた。
「女は理屈じゃないんだって、男はそれを理解できない人って多いのよね」
「まったく頭が硬くて困ってる。神様はなぜ人間を不完全にデザインしたのだろうか?」
「もう、この会話ですら神の意図だったりね」
ふたつの影が同時に小さく揺らめいだ。
「この世界は神様のわがままで出来ているかも知れない」
「それこそあるがままじゃないの?」
ふたりはまた同時に揺らめくと小さな一つの影となった。

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