《夢儚散文3 見えない窓》
「見えていない窓があるんだって、その見えない窓を探しているんだ」
「その窓見えないから探せないじゃん」
シロはチッチッチと舌を鳴らし、突き出した人差し指を横に振った。
「見えないからこそ探す価値があるんじゃないか。だってさ、この世界って見えない事だらけじゃない?」
クロはそれを聞いて首を傾げた。
「そう言われると見えないことだらけって感じもするけど、でもその見えない窓を探してどうするの?」
シロはそれを聞くと空を見上げ宙を指刺して言った。
「見えない扉を開いたら新しい世界が見えるんだ。そんな世界たくさん見たくない?」
それを聞いたクロは首を小さく横に振った。
「ボクには新しい世界を見る勇気が無いんだ。心臓がドキドキしちゃって、この世界に大きな地響きがこだまするほどそれはそれは恐ろしく不安なんだよ…」
シロはそれを聞いて優しい瞳で語った。
「それもボクには見えない窓だったね。そんな世界もあるんだね」
クロは自分の生まれつきの臆病さが好きではなかったが、シロの優しい瞳を見つめていると少しだけ勇気が湧いてきた。
「ボクは臆病で弱虫だけど、少しだけ勇気を出してみようかな…」
クロはいつもより上を見上げて言った。
ひとつの窓が小さく開かれた。
そこから見える景色はどんな世界だろうか。
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