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《夢儚散文11 集合的無意識なお話》#掌編小説
「フロイト先生は夢は無意識に至る王道なんて言っていたし、ユング先生は、夢を無意識、特に集合的無意識が意識に対して送るメッセージって言ったわけで、そんな感じで夢は意識の発展と安定を図ろうとするとかなんとかって。あ、おれさ明日が誕生日で30歳になるじゃん。このままの人生で続行していくのかと思うと、正直生きる意味あるのかなんて思っちゃったこともあったわけで。おれ3流大学出てから、派遣労働を転々として、趣味はアニメとゲームの典型的なオタクなわけで、仕事なんて死なないためにやっているだけで、どちらかと言うと、ヴァーチャルな世界の方が生きている実感を感じられるんだよね。ある意味現実の中では無感動でいないとやってられないと思っちゃうわけで、今風に言えば人生ガチャ失敗で異世界へレッツGoな感じで20代が終わっちゃいそうなわけで、ネトゲの友人は少しいるけど、現実に遊べる友人なんて1人もいないし中学高校と同級生にイジられ過ぎて、疲れちゃって大学でもそれを引きずっちゃってさ、さらに引き篭もってゲームばっかりしちゃって拗らせたっけ。
あ、そうそう夢にまつわる心理学の話。すぐ話が脱線する悪い癖。最近買っちゃったんだよ心理学入門初級編みたいなやつ。なんか何でおれってこんな人間になっちゃたんだろうって、30歳前にしてちょっと人生振り返っちゃったら、もう絶望的な感じがしてきちゃってさ、なんか心に問題抱えているんだろうなとは思っていたけど、あまり考えると辛いじゃん、自分の顔だって好きじゃないから全然鏡で見たくない感じのスペックな訳で、頭も悪いから要領も悪いじゃん。だから現実は常にハードモードなわけよ。そこで諦めの境地の悟りに至ったなんて思い込もうとしていたこともあったわけで、でもそう簡単に思い込めたら苦労しないと言うか、苦労なんて出来るだけしたくないと思っちゃうのは、生まれつきの怠惰な性格なのか。だってさ、かーちゃんが言ってたね。3歳のとき、同い年の子達は仲良く遊ぶんだけど、あんたはいつも1人で積み木で遊んでいたんだけど、その積み木にも飽きるといっつもぼーとしてたって。3つ子の魂100までとか言うじゃん。おれって神様が社交性と集中力ってパラメーターの振り分けを全然してくれなかったと思うんだ。
あ、また話が脱線しちゃったね、それで心理学なんだけど、神様のさじ加減ってのもあるけど、ちょっと知ってみようと思っちゃたのね、もっとおれ自身のコ•コ•ロ•の•こ•と。
それで正直読んでも頭悪いからほとんど意味が分からなかったんだけど、フロイト先生もユング先生もなんか無意識は夢がなんちゃらでって言っているものだから、夢日記っつうものを書いて分析しちゃったら、おれのことわかっちゃうのかな、なんて思っちゃったわけで、それで、昨日寝る時にノートを枕元に準備して寝たんだけど、そしたらさ朝超楽しみにして起きたら、おれ夢全然覚えて無いんだよね。そういえば、夢の記憶ってほとんど今までないと言うか、あまり気にしたことがないと言うか。もうね無意識にも見放されたって思って絶望しそうになったんだけど、おれ頭悪いじゃん。すぐ忘れるんだよね。次の瞬間お腹が空いてるなカップラーメンを食べようとか思っちゃったわけで、カップラーメンにお湯を注いで3分間待っているときに、ハッとしたんだよね。電撃が走ったって言うか、あ、おれの才能ってこの怠惰な性格で、怠惰ってパラメーターはモノスゴイ高いってことを。それが夢見て無いけどカップラーメンの前でボーとして脱力してたときに降ってきた人生ではじめてのメッセージ、それすなわちユング先生が言っていた集合的無意識のメッセージなのかもって感じたわけで、初めて、そう明日の30歳を前にして今人生で一番自己肯定感が爆上がりしているんだよ。この感動を一番に伝えたいと思って連絡したんだよね。かーちゃん」
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