裏庭の窓から
私が子供の頃、裏庭に面した薄暗い部屋に
ひとりの少女が閉じ込められていた。
少女はいつも窓に額をくっつけて
裏庭で遊ぶ私の様子を眺めていたように思う。
その部屋の扉に近づくことは父親にきつく
禁止されていたので
私はこっそりと、薄くあいた窓から
少女がか細い声で歌う
きれいな歌を聞いたり、
キラキラ光る包み紙にくるまれた
上等なキャンディーを窓の隙間から
少女へあげたりしていた。
ある夜、父と母がひどいケンカをした翌日
あの部屋の扉が開いており、
母と少女の首だけが姿を消した。
父は、残された少女の身体の前で
跪き泣いていた。
そしてその夜、
父も家から姿を消してしまったのだった。
きっとあの少女の頭を探しに
行ってしまったのだろう。
私はその日からずっと家族の帰りを待ち続け、
残された少女の身体は毎晩、屋敷を彷徨い
自分の頭部を探している。