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乾いた風
乾いた風が頬をなでる。 夜の涼しさがまだ残る朝、目を覚まし、小屋の外へ出た。見上げると、背の高い木々が静かに揺れている。雨の季節には鬱蒼と茂る森も、今は乾いた土の匂いに包まれていた。
ぼんやりと自然を感じていると、褐色の青年たちが血相を変えて駆け寄ってきた。地震で日本の発電所が爆発したらしい。少し幼さの残る癖毛の少年が、心配そうに私を見つめていた。
一瞬、意味が理解できなかった。だが、彼らの表情がただ事でないことを物語っていた。状況を確認するため、村を出て街へ向かうことにした。
スペイン風の装飾が残る市街地の一角。ホットドッグを頬張りながら、古びたブラウン管を見上げた。地震、ニュークリアプラント、そしてツナミズ。専門家らしき人物とニュースキャスターが深刻そうに話し込んでいた。しかし、この地にはさほど影響がないらしく、周囲の人々はほっと胸を撫で下ろしている。
そんな中、隣にいた青年が力なく私に謝った。彼の表情には、申し訳なさと、どう言葉をかければいいのか分からない戸惑いが滲んでいた。私はただ、「問題ない」とだけ答えたが、頭の中では家族のことを心配していた。
自宅には天井まで届く本棚があった。倒れて挟まれていないだろうか。無事だろうか。気がかりだったが、事態の深刻さから、すぐに戻れないことは分かっていた。
村へ戻ると、私はいつものように洗濯を始めた。何かしていなければ落ち着かなかったのだろう。そこへ、村のおばちゃんがやってきた。村の案内や洗濯機の使い方を教えてくれた親切な人だ。
彼女はいつもの調子で、今日は暑くなりそうだよ、と私に言い、飴をひとつくれた。どの国でも、おばちゃんは優しい。私は少し落ち着きを取り戻し、洗濯を続けた。今日はよく乾きそうだ。