迷えるジャム
100円ショップの棚の前で、私は今日も迷っている。除菌ティッシュを手に取りながら、頭の中でさまざまな可能性が渦巻く。この選択が本当に正しいのだろうか。もしかしたら、近所のスーパーや駅前のイオン、Amazonや楽天で買ったほうが良いのではないか。いや、ヨドバシカメラやカインズ、ケーヨーデイツーでも売っている。考えれば考えるほど、自分が何を求めているのか、どんどんわからなくなっていく。
選択肢が多すぎると、人は何も選べなくなる。これを「ジャムの法則」というそうだ。ある研究で、24種類のジャムを試食できる売り場と、6種類だけ試食できる売り場を比較したところ、後者のほうが購入された割合が高かったという。たくさんの選択肢は魅力的に見えるが、実際には選ぶ行為を難しくしてしまうのだ。
私もまた、除菌ティッシュについて何を基準にすべきか悩んでいる。選んだものが本当に欲しかったものだったのか。選ばなかったほうが良かったのではないか。選択肢が多ければ多いほど、この迷いは深まる。
だから私は、除菌ティッシュは脇目も振らず100円ショップで買うことに決めた。他の可能性について考えない。初めからこの選択肢しかなかったのだと、自分に言い聞かせる。それは、選べる自由に疲れた私なりの防衛策だ。選ぶ行為は罪で、その結果を評価することは罰だ。罪を犯さなければ罰はない。
心を無にして、ただ目の前の選択肢を受け入れる。それが、選択肢に溢れたこの世界を生き抜く術なのか。自由に不自由する。私はいつも目に見えないものに惑わされている。