
暗黒卿の最期
断捨離が好きだ。完璧を求めず、思い出のないものだけを捨て、掃除やメンテナンスが面倒なものも手放す。必要な情報が紙にあるなら、写真に撮ってから捨てる。売るのが手間だと感じたら、迷わずゴミ箱へ。これだけのルールで、不用品のほとんどは片付いてしまう。
しかし、捨ててしまったことを今でも後悔しているものが一つだけある。暗黒卿ダース・ベイダーのフィギュアだ。
そのフィギュアは、まさに闇の力を体現していた。アナキン・スカイウォーカーとしての名を捨て、帝国の繁栄に向けて邁進する、ルークと出会う前の姿が凝縮されているかのようだった。その刃には、深い怒りと絶望が込められているように見えた。まるで、彼の前に立つ者はすべてフォースで窒息させられるかのような迫力だった。
だが、埃がつきやすく掃除が大変だったこと、そして安定して立たせるのが難しかったことから、私はそのフィギュアを手放すことに決めた。写真に収めておけば、いつでも思い出せると考えたからだ。しかし、それは甘かった。写真では再現できないものがあったのだ。
日々の中で、ふとその立ち姿を思い浮かべる。あの堂々とした姿に、どれほど励まされていたのだろうか。フィギュアを捨ててしまったことで、その存在感の大切さに気づいた。
断捨離は確かに爽快だ。部屋も心もスッキリする。しかし、捨てるべきではないものもある。それがたとえ少々扱いづらかったとしても、心に働きかけ、なにかの象徴になりうるならば、慎重に吟味すべきだと学んだ。
そんな、暗黒卿の最期であった。