パンク探偵
歯医者に向かおうと玄関を出た瞬間、自転車の後輪がぺしゃんこになっているのに気づき、思わず天を仰いだ。数日前に確かに空気を入れたはずだ。なぜだろう。記憶違いだろうか、それとも栓を閉め忘れたのか。いや、もしかして、どこかが劣化してパンクしたのかもしれない。
記憶違いの可能性は低い。家族全員の自転車にまとめて空気を入れる習慣があるし、以前の反省から電動空気入れも常に充電している。自分の自転車だけ忘れることはあり得ない。それなら栓の締め忘れか。しかし確認してみても、栓はしっかり閉まっている。やはりどこかのパーツが壊れたのだろうか。
前回、前輪がパンクしたときは、バルブの虫ゴムが裂けていた。
まさかそんなところが劣化するなんて思いもしなかっただけに、そのときは驚いたものだ。今回も同じかと思い、バルブを交換してみると、一見すると直ったように見えた。空気漏れの音もしない。だが、じわじわと空気が抜けている気がする。
時間が無いため、とりあえず空気を目一杯入れて歯医者に向かった。着く頃には、タイヤの空気は半分程度になっていた。やはりパンクしているらしい。
帰り道、もう一度空気を入れてみると、バルブ周辺が不自然に膨らんでいる。内部で何か異常が起きているのは間違いない。ここまで来ると、もう自分ではどうにもできないだろう。
最後はやはり自転車屋に頼るしかない。長いこと使っている自転車なので、いっそ買い換えるべきかとも思う。しかし、この自転車は家族の思い出が詰まっているので、そう簡単に手放せそうにもない。
そう悩みながら、もう一度電動空気入れでタイヤを膨らませ、急いで帰路に就いた。最近少し冷たくなった風が頬をかすめた。
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