手のひらの宇宙
1990年代中頃の記憶を彷徨っていた。この時代、たまごっちは彗星の如く現れ、瞬く間に子どもたちの心を掴んだ。旅館の売店で手に入れた、何の変哲もないキーホルダー型のテトリスも中毒性があり面白かった。だが、たまごっちはそれとは違った。
丸みを帯びた可愛らしいフォルム。淡いパステルから毒々しいケミカルまで多彩なデザイン。その小さな液晶の中で息づき、成長し、天寿を全うする儚い命。その存在は、テトリスがもたらす刹那的な快楽とは異なり、有機的な面白さを秘めていた。
だが、私はたまごっちを手にすることができなかった。欲しいと思った時には、すでに遅すぎたのだ。妹はLOTTEの懸賞で当選し、特別なプリントが施された限定のたまごっちを手に入れていた。悠々とたまごっちを育てる妹の姿は特権階級を象徴していた。対照的に、私はその天上世界に触れることすら許されなかった。
もう一つ、たまごっちに関する記憶がある。それはニンテンドー64の「64で発見!!たまごっち みんなでたまごっちワールド」というゲームだ。
このゲームも、ほとんど遊ぶことができなかった。当時、たまごっちに夢中だったのは主に女子で、男子は様々な「モンスター」に心を奪われていた。
それでも、私はたまごっちの世界観が気になっていた。なぜ彼らは、この小さな箱の中で生き続けているのか。液晶の中のモノクロな彼らと、ゲーム内で鮮やかに動き回るカラーの彼らに違いはあるのか。幼いながらも、その疑問は私にとって極めて重要な謎だった。
たまごっちは電子の海が産み出した新たな生命だ。彼らは何者なのか。出自、なぜ生まれ、そしてどこへ向かっているのか。時代の記憶の中で息づいている彼らについて、調べてみることにしよう。