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箱庭に住まう人びと

 シムシティを遊んでいたときのことだ。画面の中で、小さな町が少しずつ成長し、道路が延び、建物が増えていく。最初はただの更地だった場所に明かりが灯り、人々の暮らしが生まれ、やがて都市へと発展していくのが楽しかった。私はいつの間にか「都市計画家」になった気分で、住宅や商業施設、交通インフラの配置を考えながら、理想の街づくりに没頭していた。

 ある程度発展すると、街には娯楽施設や教育機関が求められる。中でもスタジアムは象徴的な存在だ。スポーツの試合やコンサートで多くの人を集め、都市の活気を生み出す。しかし、いざ建設しようと思うと問題が生じる。すでに市街地はビルや住宅で埋め尽くされており、広い土地が確保できないのだ。結果として、郊外や工業地帯の一角に建てることになる。

 これは現実の都市計画と似ている。スタジアムのような大規模施設は、広大な敷地と駐車場を確保しやすい郊外に建てられることが多い。日本のプロ野球場やサッカースタジアムも、市街地から離れた場所にあったりする。渋滞や騒音の問題を避けるため、そして建設コストを抑えるために、どうしても都市の外れに追いやられるのだ。

 同じように、ゴルフ場や大学も広大な土地を必要とするため、都市中心部よりも郊外に作られることが多い。ゴルフ場は自然を活かした環境が求められるため、都市部にはほとんど存在せず、郊外や山間部に作られることが一般的だ。また、大学も広いキャンパスを確保するために、郊外へ移転するケースが多い。特に新設の大学は都市部ではなく、土地の確保が容易な地域にキャンパスを構える傾向がある。

 しかし、すべてのスタジアムやゴルフ場、大学が郊外にあるわけではない。東京ドームや甲子園球場のように市街地に根付いたスタジアムもある。大学にしても、早稲田大学や慶應義塾大学のように歴史ある学校は都心にキャンパスを持つことが多い。最近では、高層ビル型の大学施設を都市部に設けるケースも増えてきた。

 シムシティの中で、私はスタジアムや大学の建設予定地を見つめながら考えていた。本当に郊外に建てるしかないのか。住民の生活を犠牲にしないように、市街地に建てることもできるのではないか。

 そうやって試行錯誤しているうちに、ふと気づく。私が作るこの街には、確かに住む人々がいるのだ。ただ効率を求めるのではなく、彼らの生活を想像しながら都市を形作る。私はその瞬間、データと格闘する市長になりきっていた。

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