静かな世界で汽笛が響く
「シムシティ」や「A列車で行こう」といった街づくりゲームが好きで、よく遊んでいた。自分なりのルールや気分に従い、少しずつ完成へと近づけていく過程が魅力だった。
その面白さに気づいたのは、子供の頃に遊んだ古いMacintoshのゲームだった。HyperCardの「Train Set」というゲームだと後から知ったが、当時は名前など関係なかった。ただ、静かな世界で線路をつなぎ、汽車を走らせることが全てだった。
無音の世界に、大きな車輪の音と汽笛だけが響く。その静けさが心地よく、たとえシンプルな操作しかできなくても、組み合わせ次第でどこまでも広がるように感じていた。踏み切りで極端に速度が落ちるのも、どこか愛嬌があって良かった。
だが、線路が複雑だと列車は曲がりきれずに爆発してしまう。楽しんでいたはずの世界が、一瞬で冷たく無機質なものに変わる。現実を忘れて遊びに没頭していたはずなのに、現実とは異なるコンピューターの冷たさを思い知らされる。
今は記憶のなかで思い出して、断片的に遊ぶことしかできない。でも、なかなか遊んでもいられないので、これで良い。かつての静けさが、今も心の奥深くで汽笛のように響き、その音は時折、私を静かな世界へと導いてくれる。