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つられてやさしく

「できたてのポップコーンはいかが?」
今日も子どもが、ハローキティのポップコーン製造機に飛びついている。お金を入れるでもなく、楽しそうにハンドルを回したり、ボタンを叩いたり。無邪気な姿を見ていると、ついこちらまで微笑んでしまう。

 この筐体には、どうしてこうも不思議な魅力があるのだろう。延々と流れる音楽と、キティのやさしいセリフ。それを聞き続けていると、どんなに疲れていても、自然と心がほぐれる。私は気弱な性格だが、やさしいキティといっしょなら、つられてやさしくなってしまうのだから不思議だ。

 最近、アレンジされたバージョンの音楽を耳にすることがあった。こちらもまた中毒性がある。「書き綴れば日常も物語」というフレーズに、妙に共感してしまう。誰しもがそれぞれのテーマと向き合いながら、自分なりの物語を生きているのだと思うと、勇気が湧いてくる。

 それにしても、こうした「暖かい食事が出てくる機械」には、なぜこんなにも心を奪われるのだろう。自分で調理するより、お店で注文するよりも、特別美味しく感じてしまう。旅行の帰りにサービスエリアで食べた自販機のハンバーガー。あの味は格別だった。冬だと尚更だ。最近はこうした機械が減ってきていると聞くが、代わりに何が置かれているのだろう。少し寂しくもあり、気になってしまう。

 もし町の一角に、ハローキティのポップコーン製造機があれば、その町全体が少しだけやさしくなるような気がする。「できたてのポップコーンはいかが?」という声に、誰もがつられて笑顔になる。そんな魔法の力がこの筐体にはある。おひとついかが?

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