見出し画像

市長の気分で

 この街に住んで十年以上が経つ。 毎日見慣れた風景だが、市長になったつもりで見渡してみると、いくつかの課題が浮かび上がってくる。

 まず、河川の橋の少なさだ。橋と橋の間隔が長いため、隣町へ行くには遠回りを強いられる。もう少し橋が増えれば便利になるのだが、景観の問題や隣町との交渉、さらには莫大な建設費用を考えると、簡単には進められない。行政としても、そこまでのコストをかける決断は難しいだろう。

 現実的な解決策は見当たらない。だが、シムシティ的な発想で考えれば、フェリー乗り場を設置すれば対岸とのアクセスが改善されるかもしれない。個性的な通勤ルートを編み出す猛者も出てきて、楽しそうだ。

 次に、公共交通の問題だ。バスは朝の通勤・通学時間帯には満員で、乗れないこともある。それなら本数を増やせばいいのに、と思うが、現実にはじわじわと減便され、運賃は上がる一方。運転手の確保も難しくなっていると聞く。こうなると、行政が人件費を補助するくらいしか手はなさそうだが、それも財源の問題がついて回る。

 ここでも、シムシティなら話は簡単だ。鉄道を延伸し、駅を増やせば解決する。ゲーム内にはないが、もし自動運転の無人車両が導入できれば、人手不足も補える。

 高速道路の存在も気になる。街の中心を分断するように走っており、そのせいで移動しづらい。陸橋や地下道を増やしても、上下の移動が増える分、利便性は下がる。それなら高速道路を部分的に高架にして、地面との接触を減らす方法も考えられるが、やはり莫大な費用と長い工期が必要になり、実現の可能性は低い。

 ならば、シムシティ的に資金を作るしかない。住宅地を増やし、商業施設を充実させ、税収を確保する。先の長い話になるが、少なくともゲームの中なら可能だ。

 こうして考えると、課題ばかりが目につくが、実際にはそれほど大きな不満はない。多少の不便はあるものの、ここでの暮らしには非常に満足している。すべてが理想通りの街は存在しない。住めば都。少し不便なくらいがちょうどいい。

いいなと思ったら応援しよう!