【短編小説】桜の見える部屋で
実家の2階にある私の部屋には大きな窓があって、その窓からは、隣の公園の外縁に植わっている桜の木が見えた。
子どものころ、私は毎年桜が咲く季節になると自分の部屋に小さなレジャーシートとお弁当を広げて、一人でお花見をした。その窓枠が切り取る外の世界のほとんどを、桜の花びらが埋め尽くしていて、その隙間からは、吸い込まれそうな春の空が見えた。公園の方からは家族や友人とお花見に来た人たちの楽しげな声が響いていたけれど、私は騒がしいのがあまり好きではなかったし、レジャーシートや身体にのぼ