「境界線」
「僕はその日、悪魔に会った。」
6月の雨が重い雲を運ぶ中、世間はニュースで騒いでいた。
「続いてのニュースです、○○神社にて複数の猫の惨殺死体が発見されました、警察は同一犯による犯行と見て捜査しております。」
物騒だなぁ…と梅雨の湿気で跳ねる毛先を直しながらニュースを横目に支度をしていた。
そそくさと支度を終わらせ玄関へ向かうと、「あんまり夜中に出歩かないの!」と母の声がした。
僕はその声を背に玄関の外へとくりだした。
シトシトと雨の降る夜、街灯もそこそこな道を歩く、そう言えば事件のあった神社ってこの側だっけ、なんて事を思いながら夜道を歩いていると、鋼の様な硬い澄んだ音がした。
何の音だろう?と気になりながら歩いているとドンドンと音が大きくなってきた、そう、そこは先程ニュースで観た神社だった。
境内へと続く階段を登るとジメジメとした土の香りと息苦しい程のきつい匂いが立ち込めていた。
階段を登りきるとそこにはおびただしい数の猫の惨死体、立ち尽くす一人の男、現実味の無い空間がそこにはあった。
僕は思わず呆然とその場に座り込んでしまった、その瞬間、暗闇の中でもわかった、立ち尽くす男と目が合ったのだ。
全身の毛が逆立つ気がした、高まる動悸、母の言葉が頭をよぎる、その時僕は、行き場のない満月を探す。