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日々是随筆-二大政党制の落とし穴-
アメリカにトランプ政権が誕生し、多様性を認めない政策が打ち出されている。民主党政権の下で進められてきた、性の多様性、人種や民族の多様性を認める政策が次々と覆されている。そしてキリスト教原理主義への回帰が強くなっている。
現在のアメリカはイデオロギーよりも価値観に基づく感情的な二極化が生じている。アメリカの大統領や議会選挙は基本的に民主党と共和党の二大政党しか選択肢がない。民主党に中にもバーニー・サンダースのような社会主義者がいる一方、政治的エリートでやや保守的な政治家もいる。共和党はほぼトランプ党という様相を呈しているが、リズ・チェイニーのように反トランプを掲げたり、アメリカンデモクラシーに忠実は正統保守派も存在する。アメリカは3億5千万人の人口を抱え、移民によって成り立っている国であるから、価値観の幅は日本などより大きいはずである。しかし、選挙の時には選択肢が2つしかない。多様な価値観を2大政党が吸収するのは無理ではないだろううか。
2大政党制の本家である英国でも自由民主党やスコットランド独立党など第三者の政治勢力が伸長している。人々の価値観の幅から考えると当然に流れと考える。ドイツ、イタリア、日本、フランスや他の先進国も多党制の国が多い。 政党が多ければ良いと言うことではないが、多くの選択肢があることで、極端な対立は緩和される。日本は1994年に2大政党制を目指して、衆議院に小選挙区比例代表並立制を導入した。そして、2009年には自民党から民主党への政権交代が起こった。しかし、東日本大震災や政策の迷走によって短期間にその政権は崩壊し、自民党一強時代になった。長く続いた安倍政権とその傍流の菅・岸田政権のもとで日本は一気に右傾化した。昨年10月の衆議院選挙では裏金問題等で自民党がコケて、多くの野党に票が分散し、石破政権は少数与党となった。
多くの政党が存在する現在の日本では各政党が国民のさまざまな意見を吸収しているためアメリのような国民を二分するような政治状況とはなっていない。しかし、日本の政党は政策本位の政党かは怪しい。またSNSなどに影響されて投票行動する国民も多く、選挙結果が必ずしも良いとは言えない。
二大政党とのもとで、イデオロギーと感情の二極化が起こり、生きにくい立場に追い込まれるアメリカ国民が多数存在するのは事実であろう。多党制の日本は少子化と上がらない賃金と経済格差の問題を抱えながらアメリカのような二極化は起きていない。
早計な結論を急ぐべきではないが、現代の多様な価値観が存在する社会に二大政党制はそぐわないシステムではないか。
日本は小選挙区比例代表制を継続しているが、日本において2大政党制を実現するのはかなり難しいと考える。衆議院の選挙制度は完全な比例代表制にするか、以前の中選挙区制に戻した方が日本の実態にあっていると考える。またアメリカは二極化を緩和する一つの方策として第三勢力の政党が出現しなければ現状を変えることはできないと考える。