雑記 失恋
君に初めて会ったのはいつ頃だっただろうか。幾度となく夏はやってきたし、クリスマスツリーを見るたび「あぁ、もうこんな季節か」とおもったものだ。
変わらない日常に溶け込んで君は確かに僕の中に居た。何年も何年も。来る日も来る日も。
君に会いたいと思って毎日のように店に通った。もちろん、店に行くのはいろんな思惑が絡み合って私にとって都合がよかったからだ。
君に会えない日は平静を装いながら落胆していた。でも、またあした会えるさと思って過ごしていた。会えなくなる日が来るなんて思ってもみなかった。
何が出来る訳でもない。きみとぼくには定員と客という大きな壁ができていた。何も変えられはしない。そんな無力感が常に私を縛っていた。
店に入るとちょこんと顔を傾けてまんまるの瞳で私の顔をとらえる。その仕草が忘れられない。いつも目を見て挨拶をしてくれた。それが接客という仕事なのかもしれないが。
君に会いたい。それはもう叶わない夢なのかもしれない。君はどこか僕の知らないところへ行ってしまった。今でも君の面影を探してしまう。店に行くまでは、もしかしたら、と思ってしまう。
当たり前のように会えてた時はそのありがたみに気付いていなかった。私は逃げ出すことばかり考えていた。無力な自分に向き合うのが苦痛だったのだ。手が届きそうでまったく届かない。近くにいたのに遠い存在。
正直、会わなくなって気持ちは楽になった。無力な自分に向き合う必要がなくなったから。と同時に自分の人生は無力な自分に支配された。それが成長というのなら甘んじて受け入れよう。
私は失恋をしたんだろう。最低のアプローチはしたし、すでに断られている。でも、その後も何事もなく日々は過ぎていた。だから、そんな日々が続くと思っていた。だから、会えなくなって、本当に恋が敗れたんだなとようやく気付いた。
ゆるやかな時の流れとともに人の気持ちは移ろいゆく。いつまで経っても未熟な自分とどう向き合っていくか。これはその一つのきっかけに過ぎない。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?