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(連載)BJEP2021 バングラデシュー日本学生交流プログラム ~栄光への道~(2)日本オーガナイザーチーム、奇想天外な船出

こんにちは。AAEE、一般社団法人アジア教育交流研究機構で学生アシスタントをさせていただいている、国際基督教大学1年、Nです。私を含めた新人1年生4名と先輩2名とで、BJEP(バングラデシュー日本オンラインプログラム2021)の企画・運営に携らせていただいています。本連載では、BJEP企画・運営の赤裸々な内幕を学生目線で綴ります。

前回の記事→ https://note.com/multiculturalism/n/nbb1efec069b6


波乱のプログラムテーマ決め


 「人間の根底にある価値観に触れることのできるようなプログラムにしたい」という思いから、当初、日本側では今年のBJEPのテーマを”宗教”と決めていた。国民の90パーセント以上がイスラム教徒であるバングラデシュと、どちらかというと信仰心が強くない日本とでは、当然のことながら宗教観が異なり、価値観の文化差に関する学びも多いと考えたのだ。しかし、なんとバングラデシュのオーガナイザー(5名)は全員がこの提案に強く反対した。宗教はバングラデシュにおいてセンシティブなトピックであり、「宗教」を全面に打ち出すとプログラム自体がバングラデシュ参加者内での対立の火種となりかねないとのことだった。全くの予想外の反応に戸惑った。それ以来何度かzoom会議で議論を重ねるも平行線を辿り、私たちは行き詰っていた。
その様子をなぜか嬉しそうな表情でみている例の関先生は私たちからは謎めいていた。

これこそがAAEEのあるべき姿だ!?


「両国の学生の話し合いが破綻しまくっている。一見深刻だが、超面白い!」
と関先生は興奮を隠さない。
しかし、何が面白いのか。AAEEでの活動を始めて間もない私たちにはさっぱりわからない。
先生は後日こう説明した。
両国の学生が、苦労しながらも双方の視点を取り入れて作り上げることに意味がある。みんなはそれに取り組んでいる最中なんだよ。」

話し合いに話し合いを重ね、お互いの意見をすり合わせた結果、テーマを当初案である”宗教”から”DEEP CULTURE(深層文化)”に変わった。
これは何を意味するのか。

深層文化とは、「意識されていない意味、価値観、規範、そして隠れた前提のことであり、これによって私たちは他者と相互作用する際に自分の体験を解釈できる」「概して意識の外で直感的なレベルで作用し、通常は気づかれないままだが、異なる文化的前提を持つ人々とやり取りしなければならない時に意識されるようになる」ものである(Shaules, J. 2007. Deep Culture.Multilingual Matters Ltd [ショールズ, M. (2013) 『深層文化』(鳥飼玖美子・長沼美香子訳) 大修館]) 。
つまり、日本側の「人の価値観の根底に触れるような対話が可能なテーマ」という主張と、「価値観の根底を考えることはいいが、宗教はバングラデシュではセンシティブなトピックでテーマとして掲げるわけにはいかない」というバングラ側の主張両方を取り入れた、Win-Winのテーマとなったのだ。

苦戦する参加学生募集


テーマが決まるとすぐに、参加学生募集をしなければならなかった。テーマ決めに予想よりも多くの時間を要したため、急がなければならない。。
しかし、ここでも思わぬ困難が待ち受けていた。
頼みの綱の先輩オーガナイザー二人が、能力が高すぎる故の諸事情で準備活動にコミットできなくなってしまったのだ。新人一年生4人で準備を進めるまさかの展開。さらには、先輩オーガナイザーの不在が長引いたため、一年生が日本側のプログラムリーダー、副リーダーに急遽就任。さすがに、先生が「君たちなら絶対大丈夫」という余裕の笑顔で言ってくださっても、不安が募り、表情は強張るばかりであった。

案の定、集客は思いの他に難航した。不特定多数のプラットフォームに掲載しても人々の目には止まらず、大量の情報に埋もれてしまう。「(ポスターなど)情報公開=人々の目を止まる」という公式が成り立たないことを実感し、虚しくなった。「ゼロ」という数字の怖さを味わうのは、私たちにとって初めてのことであった。
今振り返って考えてみれば、そもそも以下の5つの応募要件をすべて満たす人など今の日本にはさほど多くない。しかし、当時、何もかも初めての私たちにはその現実すら理解できていなかった。
(1)バングラデシュの学生とのオンライン交流
(2)高い英語力
(3)DEEP CULTURE(深層文化)への強い興味
(4)8月下旬に一週間の日程確保 
(5)大学1,2年生のみ

「いったいどうしたら、条件に合う大学生に注目してもらえるのだろうか」
私たちはミーティングを何度も開き、アイディアを出し尽くした。なんとしても状況を打破しなければならない。

すると、なんと、数日後から少しずつ応募者が集まり始めたではないか。私たちは応募書類を受信するたび度に歓喜に沸いた。しかし、歓喜の数秒後には再び頭を抱えた。募集定員には遥かに及んでいなかったからだ。さらに応募した人が皆合格するわけではなく、英語での二次面接を通過して初めて合格切符を手にできるのだ。
もう見ても危機的状況。しかし!先生はいつも落ち着きはらい、余裕たっぷりに笑っていた。
「すごくうまくいってるよ!全然大丈夫!」

「どこがどううまくいっているの?」
正直さっぱりわからなかったが、何せド素人の私たち。信じて進む他はない、もはや「妄信」状態だった。

それからおよそ10日間の努力は筆舌しがたい。思いつく限りのありとあらゆる戦略を加え、さらに先生の助言で発想転換も試みた。その結果!なんと!奇跡的に素晴らしい参加者が出揃った!私たちは、まるで、オリンピックの金メダリストのように歓喜の涙を流した。

実はとても大切なことを学んでいたらしい。


先生は、BJEP準備開始からメンバー決定までの一連の流れをどのように見ていたのか。参加者も確定し一段落した先日、話を伺った。
「とてもスリリングで超楽しかった。面白い映画を見ているみたいな気分だった。」
「面白い映画?」「私たちの血眼な努力が『面白い映画』?」
一同絶句・・・。 しかし、さらに続く先生の説明でようやく合点がいった。

「皆は今回の一連の騒動で次のことを学びました。これから生きていく上で大事なことばかりですよ。」
①困難に陥ったときに、あきらめずにそれを解決しようとする粘り強さ
②様々な角度から解決策を模索する多角的視点と柔軟性
③独自の集客法を編み出す想像力
④一歩引いて状況を冷静に俯瞰する観察眼

私たちは、ただ必死に人集めをしていただけだと思っていたが、実は生きる上で最強の学びを体験的に得ていたとのこと。先生の解説を聞きながら、私はいい意味で「まんまと術中にはめられた」と開いた口が塞がらなかった。そして、なぜか私たちのモチベーションはマックスとなった。

次回、いよいよ、BJEP本プログラムに向けた事前交流活動開始!

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