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知りたくなかった自分を知る
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初めまして、AAEEの学生副リーダーの大山 陽(おおやま ひかり)です。
本記事では昨年8月にAAEEが開催したVJEP(Vietnam Japan Exchange Program)での
私の経験を記すとともに、今後の連載記事についても触れていきます。
『プログラム参加前の私ー自分を変える経験を求めてー 』
ベトナムに渡航する以前の私は、公式HP(※1)や前回の記事で
学生リーダーが書いたような立派な目的や理由を持っていませんでした。
父が日本人、母がフィリピン人という環境で育ち、母方の実家に気軽に行ける状況だったため、海を超えることへの特別感がなかったのです。
さらに、知りたいことを片手で調べられる現代。
「わざわざ日本を出る必要があるものか」と、
どこか冷めた気持ちで構えていました。
しかし、「自分の視野を広げたい」「自分を変えるきっかけが欲しい」という軽い気持ちで参加したこのプログラムは、私にとても大きな学びを与えてくれました。
『プログラムで学んだこと
―自分の行動を変えられるのは自分だけ―』
このプログラムを通じて、私が感じた「変わることの難しさ」
これが私にとっての最も大きな学びでした。
ベトナム人参加者だけでなく、日本から行った参加学生ともほぼ初対面の状況で始まった14日間のプログラムは、私にとって想像以上に辛いものでした。
交流言語は英語で、常に誰かと行動を共にする必要があり、食文化も異なる。参加前の時点で分かり切っていたことではありますが、現地に行ってしまえば逃れられない。必要に迫られたら自動的に対応できるようになるだろう、という謎の自信を抱きながらも、私は最後まで殻を破ることが出来ぬまま帰国しました。
やがて、「What is this?」といった簡単な質問すらしなくなっている自分に気付いた瞬間が今も脳裏に焼き付いています。
これらの経験を通じて私は、プログラム中の活動や他人との交流において、
常に受動的であった、という受け入れ難い現実を突きつけられました。
そして帰国後、私はある考えに至ります。
「自分は自分にしか変えられない」
『広がった視野』
プログラム中、私の視野は大きく広がりました。
例えば、プログラム参加する目的は人それぞれであり、そこに優劣が存在しないこと。
崇高な目的でなくとも参加する価値があるのだと学びました。
学びのきっかけになった一つの理由として、あるベトナム人参加者が
「外国の友達が欲しかった」と答えていたことがあります。
この回答を聞いて驚くとともに、自分の視野の狭さを痛感しました。
AAEEの国際交流プログラムへの参加権を得るためには書類審査や面接を通して、自分自身の意思を明確に示さなければなりません。
ベトナム人参加者たちは皆、あらゆる場面で高い能力を発揮し、私たち日本人を気遣う姿勢を常に見せてくれていました。
彼女たちの姿を間近で見て、シンプルな目的であっても十分に価値があり、その目的に見合った努力が重要なのだと学んだのです。
ベトナムから帰国して2週間後に、フィリピンへ帰省した際の出来事も、私の考えを深めるきっかけとなりました。
ベトナムでの国際交流の活動とは異なり、フィリピンの家族との交流はほぼストレスフリーでしたが、環境への配慮など些細な場面で異文化の違いに気づかされることがありました。
例えば、使用済みの食器をためらいなく湖で洗う姿です。衝撃を受けると同時に、現地の人にとっては「普通」なのかもしれないと感じ、自分の価値観を見つめ直す機会となりました。
これらベトナムとフィリピンでの経験を振り返える中で、私は
次のように考えるようになりました。
「異文化交流とは、互いに共有していない「普通」を知り交流すること、
そして受け入れること」
ただ、国内外問わず、他人の行動に敏感に反応して異文化だと捉えるのは、自文化中心主義に陥る危険性もあるため反省しています。
今後は、異文化に対するイメージを固め過ぎず、柔軟に交流を続けたいと考えています。
『外を知って内を知る』
国内では得られない経験欲しさに参加したプログラムを通じて私は、
外への関心を高めるばかりか、そもそも自分とは何かを考えるようになりました。ベトナム人参加者に、些細で単純な疑問を投げかけられる度、日本語から英語へ翻訳する以前に日本語でも答えが浮かんでこない、ということが幾度もあったからです。
これらを振り返る度に、私は、なんとなく生きてきたのだと恥ずかしさを覚えると同時に、自分を知ることの重要性を実感しました。
こうした私自身の経験は、AAEEの理念と重なる部分が多いと感じます。
『AAEEが目指すもの』
AAEEの理念である「交流を通じた学び」(※2)とは、
他者との交流を通じて自己を見つめ直し、
自己理解を深めるために重きを置いています。
今後の記事では、AAEEが現在の理念に至るまでの変遷について
お伝えしていきます。
次回は、AAEE設立当時の背景とその理念についてご紹介します。
拙い部分もあるかと思いますが、
全10回の記事を最後までお付き合いいただければ幸いです。
筑波大学
社会・国際学群 国際総合学類 2年 大山 陽
※1 一般社団法人 アジア教育交流研究機構
※2 AAEEとは