フィリピンを活用したオフショア経理BPO市場とマルチブックの新たな展開
1. はじめに
フィリピンは、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の主要な拠点として成長を続けています。特に会計および財務管理サービスを提供する企業が多く存在し、国際的なクライアントから高い評価を得ています。本記事では、フィリピンの会計アウトソーシングのメリット、主要なサービス、そして代表的な企業を紹介し、マルチブックの新たな展開についても触れます。
2. フィリピンの会計アウトソーシングのメリット
フィリピンの会計アウトソーシングには多くの利点があります。以下にその主なポイントを挙げます。
コスト削減:フィリピンの労働コストは他の地域と比較して低く、企業は2倍から3倍のコスト削減が可能です。
スキルを持つ公認会計士(CPA)・弁護士の存在:フィリピンには経験豊富な公認会計士(CPA)や弁護士が多く、実務面でも欧米企業など勤務経験を積んでいます。
適応力のあるプロフェッショナル:BPOが巨大産業となっているためフィリピンの労働者は、異なるプロセスやタイムゾーンに柔軟に対応できます。
効果的な英語スピーカー:フィリピンは英語を公用語としており、アジア諸外国の中でも突出して流暢に英語で業務を遂行することができます。
堅牢な会計技術:フィリピンの会計アウトソーシング企業は、電子請求書発行、給与計算、税務準備、データ分析プラットフォームなどのITツールの活用経験もあり、経理業務を正確かつ効果的に遂行します。
3. 主な会計アウトソーシングサービス
フィリピンの会計アウトソーシング企業は、多様なサービスを提供しています。以下に代表的なサービスを紹介します。
記帳:企業の財務取引を正確に記録・整理します。
買掛金・売掛金管理:請求書の発行や支払いを迅速に処理します。
給与計算:従業員の給与を正確に計算し、支給します。
税務準備サポート:税務書類の作成と提出を行い、コンプライアンスを遵守します。
財務計画と分析(FP&A):企業の財務状況を分析し、改善策を提案します。
内部監査:財務データの正確性を確認し、内部統制を強化します。
このように経理業務を国境をこえてまるっと代行を委託する企業も多く、特に欧米企業の活用はかなり活発に進んでいます。
4. フィリピンの主要会計アウトソーシング企業
4.1 Frontline Accounting
Frontline Accountingは、オーストラリア、英国、米国の企業に対してオフショア会計サービスを提供しています。彼らは会計事務所のキャパシティ問題を解決するために、オフショアチームの設定と管理を行い、さまざまな会計業務を効率的に処理します。
4.2 D&V Philippines
D&V Philippinesは、成長するCFOや専門サービス企業のニーズをサポートするためのアウトソーシングソリューションを提供しています。2012年に設立され、現在では750人以上の従業員を擁し、350以上のクライアントをサポートしています。高品質かつコスト効果の高い経理・財務サービスを提供し、世界中の企業に貢献しています。
4.3 TOA Global
TOA Globalは、1,000以上の国際企業に対して会計および簿記サービスを提供しており、フィリピンには3,700人以上の会計士および簿記担当者がいます。彼らは役割ベースのトレーニングとエンタープライズグレードのセキュリティに重点を置き、クライアントのニーズをサポートしています。詳細はこちらをご覧ください。
4.4 Unity Connect
Unity Connectは、オフショアの財務および会計サービスを提供しており、コミュニケーションツールやプロジェクト管理ソフトウェアを統合して、社内外のチーム間のコラボレーションを強化しています。スムーズな運営と効果的な監視を実現するためのさまざまなヒントやツールも提供しています。詳細はこちらをご覧ください。
4.5 KG Consult Group
マカティに拠点を置くKG Consult Groupは、フィリピンのプロバイダーとの提携を希望する零細・中小企業(MSME)、新興企業、多国籍企業の会計・簿記のニーズをサポートしています。
5. マルチブックの経理BPOセンター設立
5.1 設立の背景と目的
マルチブックは、フィリピンのマカティに経理BPOセンターを設立することで、日本のグローバル企業の国際経営をより効率的にサポートすることを目指しています。このセンターは、私たちのビジョン「海外経営への挑戦を、もっと身近に、もっと簡単に」を実現するための重要な一歩です。
これまでフィリピンで提供されるオフショア経理BPOは上で紹介したように海外のソフトウェアを用いたものが中心で、日本の企業や本社がSAPなどに慣れたグローバル企業には物足りないものでした。また一般的な会計事務所は記帳代行が主なサービスであり、経理代行にはなっていませんでした。これにより、子会社ガバナンス強化を大切に考える企業が経理精度を高めるためのパートナーとして会計事務所を利用するのは難しくという声をよく聞きました。またハードルの高さから記帳代行からの自社経理に切り替えたものの経理を本業としない出向者の場合は不正が起きたり、現地経理マネジャーと会話ができなかったりと難易度が高いものでした。
さらに、フィリピンのBPOサービスは、英会話や入力センターとしては日本企業でも活用が進んでいますが、欧米企業のように経理・会計アウトソーシングサービスとしての利用がまだ進んでいないのが実態です。
記帳代行と経理代行の違い
記帳代行:主に企業の財務取引を記録する業務を指します。具体的には、売上や支出、給与、経費などの取引を証憑の提出や企業からの依頼に基づいて会計ソフトに入力し、帳簿を整理します。記帳代行は以下のような作業を含みます:
領収書や請求書の整理
取引のデータ入力
試算表の作成
月次・年次の帳簿作成
経理代行:記帳代行の業務を含む広範な経理業務を代行するサービスです。経理代行は、企業の財務管理全体をサポートし、以下のような作業を含みます:
記帳代行の全業務
財務諸表の作成
予算管理と資金繰りのサポート
税務申告の準備と提出
経理全般のコンサルティング
内部監査とコンプライアンスチェック
multibookを活用してのグループガバナンス強化
5.2 新センターの役割と目標
新たに設立される経理BPOセンターは、主に以下の役割を担います:
大企業の海外子会社支援:日本、アジア地域、欧米などからの大企業の海外子会社の経理業務を一括してサポートします。フィリピンを拠点にすることで、アジアや欧米の経理業務を集約し、効率化を図ります。
アジア言語の支援:タイ語、ベトナム語などのアジア言語のサポートもおこないます。お客さんはアジアや欧米の経理業務をまるっと委託していただき当社が「海外経理部」としての位置づけとしてバーチャル経理部を構築します。
高度な経理サービスの提供:クラウド上のカスタマイズ可能なテンプレートを活用し、企業が容易にグローバルクラウドERPを導入できるようにします。multibookシステムは、各子会社をまとめるのに最適なツールであり、DIVAやMoneyforwardなどの日本の代表的な連結ソフトへの登録も可能です。
効率的な英語対応と会計処理:フィリピンの公用語である英語を活かし、国際的なコミュニケーションを円滑に行います。また、フィリピンには会計処理に精通した人材が豊富におり、これにより高品質な経理サービスを提供できます。
6. まとめ
フィリピンの会計アウトソーシング企業は、高品質なサービスを手頃な価格で提供し、企業の国際経営を強力にサポートしています。特にFrontline Accounting、TOA Global、Unity Connectなどの企業は、国際的なクライアントに対応するための高度なスキルと技術を持っています。マルチブックもまた、フィリピンに新たな経理BPOセンターを設立し、企業の経理業務を包括的に支援することで、さらなる成長を目指しています。これにより、フィリピンはアジアや欧米の経理を集約する拠点となり、企業の効率的な運営をサポートすることが期待されます。