自分の仕事観を、人生ゲームに例えてみる
祖父がお仕事を85歳まで続けていたので、自分も85歳までは働きたいなと思っている者です。
「#仕事の心がけ」の募集があったので、自分も自らの仕事への取り組み方について考えをまとめてみたいなと思い、この記事を書いてみました。
ぼくは、デザイナーをしています。
昨今、「デザイナー」という職種が扱うお仕事の範囲が広くなってきていると体感します。「UX(体験)デザイン」「コミュニケーションデザイン」などの言葉も耳にする機会が増え、抽象的な分野とデザインが結びつくことがノーマルになってきました。美術教育を受けていない人がデザイナーを名乗ることも増え、もはや素敵なアウトプットをつくるだけがデザイナーの仕事であった時代は終わり、提案力や説明力が強く要求されるようになったと思います。
Twitter上でそんな最近の状況を悲観するデザイナーの声も散見されますが、ぼく自身は「悩める範囲が増えて嬉しいな」くらいに楽観視をしています。
ふと、この気分を『人生ゲーム』に例えられるような気がしたので、デザイナーのいちプロジェクトの流れを、無理くりにも例え話をしてみつつ、文章を書く中で得た自分なりの気づきをまとめてみます。
仕事観を人生ゲームに例えてみる
1. 人生ゲームをプレイすること ⏩ 一案件、プロジェクト
まずは前提ですが、「お仕事を受注し、要件定義し、打ち合わせを繰り返し、成果物をつくり、納品や公開などのプロジェクト完了を迎えること」が「人生ゲームを1回楽しむこと」と例えます。
「人生ゲームの箱を開き、アイテムをプレイヤー全員に配り、ルーレットと駒を動かす行為を繰り返していき、ゴールマスに辿り着き完了を迎えること」の一連をそれぞれ例えていきます。
2. プレイヤー ⏩ クライアントとデザイナー(受注者)
本来の人生ゲームを行う場において、傍観者になる人はあまりいません。人生ゲームを行う場に5人いれば、5人とも全員がプレイヤーになるが一般的だと思います。
ぼくにとってはお仕事でも同じ感覚で、クライアントもデザイナーもそれ以外のこのプロジェクトに関わる者全員がプレイヤーであってほしいと思います。時に、デザイナーに仕事を頼んだ時点で仕事が終わったような気分のクライアントと出会うことがありますが、それでは良いプロジェクト完了に辿り着けないと思います。
「脳がクライアントで、デザイナーは右手」というフレーズが好きで、よく引用します。脳と右手、どちらか欠けた状態でも、物事をうまく進めることができません。プロジェクトメンバー全員で「前に進む身体」だと思っています。
3. ルーレットを回して出目を決定する ⏩ 仮説を立てて検証する
プロジェクトは、なにかの課題を解決するために行われるのが一般的かと思います。課題を解決するためにあれやこれや考えたり、リサーチしたり、提案にしたりするのですが、結果は完全に保証されません。
この少しでも良くしようと試行錯誤し仮決めして動き出す感じが、「ルーレットを回して出目を決定する」に似ているなと思います。ゴールにより近づける「8」を出したいけど、うまくいかないこともあり、「8」が出たとしてもトラブルマスに止まるかもしれません。
完全に成功するかわからないというギャンブル的なワクワク感は、ゲーム・お仕事に通じて楽しいポイントであると思います。
出目にしたがってコマを進める ⏩ つくる、実行する
デザイン系のプロジェクトであれば、つくっては直しの繰り返しで進行させていきます。プロジェクトを進める「つくる行為」が、「出目にしたがってコマを進める」だと言えると思います。
ぼくの中で、「出目にしたがってコマを進める」あるいは「つくる行為」は、楽しくはありますが、ひとり集中して淡々と進めていくイメージがあります。
4. 止まったマスに書いてあることをする ⏩ フィードバックやトラブルに対応する
本来の人生ゲームではマスに留まると、持ち金を減ったり、こどもが増えたりイベントが起こります。マスになにも書いていないことは滅多にありません。
仕事においても、なにかをつくれば(あるいはタスクを進めれば)、必ず検討点が生まれます。それによって、プロジェクトは良い方向に向かうことができますし、プロジェクトメンバー同士の小さな評価も上下します。
新米デザイナー時代は、人からのフィードバックを嫌ったりする傾向があります。自分の考えが否定されたような気持ちになったり、人の意見で自分の理想から遠ざかったような感覚からだと思います。自分もフィードバックされるのは嫌いでした。
しかし、それはマスに何も書いてない人生ゲームをプレイするようなもので、醍醐味を失っていると現在は思います。
ちなみに、クライアントも一緒に実行し、デザイナーからのフィードバックを真摯に聞いてくれる人であると嬉しいです。一緒にゲームをプレイしてくれるクライアントの存在によって、デザイナーはより一層燃えることができます。そして、より良いプロジェクト完了へ向かうことができると思います。
5. 全員のゴール ⏩ 納品や公開
ここには、考察できるような例えはありません💦
一旦目指すべきところに到達した瞬間(納品や公開)が、楽しいゲームの時間の終わりと言えるかと思います。
6. 人生ゲームのアイテムを箱にしまう ⏩ プロジェクトをたたむ
ぼくが大事に思っているのは、プロジェクトをたたむ瞬間です。
本来の人生ゲームでも、プレイが終わり「楽しかったね」と感想戦をする盛り上がりがあったとしても、誰か一人に片付けを押し付けるような終わり方をすると、気分が悪くなります。やはり、みんなでサッパリ片付けをしまう方が気分がいい。そうすることで、このメンバーでまた他のボードゲームを遊びたいなという気持ちになります。
お仕事の場合、納品や公開時点で連絡の熱が急激に冷めることがたまにあります。デザイナーも納品をプロジェクトのゴールと考える人も少なくありません。
弊社DSCLでは、打ち上げを推奨する文化があります。仕事が終わったら、その楽しかった思い出を共有する、自分の反省なども口に出す機会を設ける。打ち上げの提案に乗ってくれるクライアントとは、その後の縁が続くイメージがあります。
例えてみて思うこと
ぼくがしたいのは、楽しいことを提供すること
ぼくがやりたいのは、プレイヤーとして奮闘することも大事なのですがそれ以上に、「ねえ、人生ゲームやらない。めっちゃ楽しいよ」とゲームに誘うように、楽しく意義のあるプロジェクトの環境をステークホルダーに提供することです。
プロジェクトの進行は、ファシリテーションや進行の仕組みで、良くも悪くも変化させることができます。
最初に、素敵なアウトプットをつくるだけがデザイナーの仕事であった時代は終わったということに触れましたが、場のデザインもできてこそいいものをつくれると考えています。なにより、人生ゲームを誘うようにお仕事を提案できれば、自分自信が仕事を楽しめると思います。
目的があれば、つまらないタスクも含めて、楽しい
「つくるだけをしたいデザイナー」は、「ルーレットを人に任せて、コマだけ動かしたい人」と言えるかもしれません。人生ゲームの例えの視点から見れば、この人がなにを楽しんでいるのかかなり謎です。
「ルーレットを回して出目を決定する」に例える仮説を立てて検証する行為の中には、スケジュールを立ててエクセルファイルをつくったり、ただただ画像を集めたり、行為としてつまらないタスクはたくさんあると思います。
プロジェクトの中で、発生するすべてのタスクを楽しめるようでありたいなぁと強く思います。
さいごに
まず、ごめんなさい。
この話はあくまで仕事を人生ゲームに置き換えられそうだと考えるいちデザイナーの考えです。ある特定のタスクを極めるスペシャリスト気質の人を貶めたりするような気持ちはありません。
ぼくは小さなデザイン会社で育ったので、なんでもするのが当たり前でした。仕事の好き嫌い、得意不得意の前に全部やらせてもらえた環境に本当に感謝しています。
ぼくは仕事するのもゲームするのも、あまり差がなくどちらも好きなのですが、身近にはそう考える人もあまり多くないので、近い価値観の方と巡り会えたら嬉しく思います。