赤の他人の近況報告
ネットで買い物をした時にショップ側から歩み寄られるという話を「いかにして人の温かさを伝えるか」に書いた。同じようなことを考える人がよくいるようで、いつも決まった入浴剤を買うのだが、そのショップの人がそういえばいつも手紙を書いてくれる。今回はこんなの↓
「いつも当店をご利用頂きまして誠にありがとうございます。
先月こちらは冬の伝統行事の「横手のかまくら祭り」が行われました。3年ぶりの開催でしたが、夜の幻想的な風景に多くの人が訪れ、少しずつ日常が戻っていると感じました。」
秋田に住んでる人のショップで、コロナでイベントに人が少なかったけど戻りつつあると思っている生身の人から買い物をしたのだと改めて思い知るわけだが、差出人の名前があるわけでもなく、こちらも一々メールやSNSアカウントを調べて返事を出すわけでもないので、いつも一読して捨てている。つまり完全に一方通行なわけだ。これって書く方はどういう気持ちなのだろうと思ってしまう。ぼくは温泉の素を買っているのだけど、定番商品の最安値なのでここで買う人が多いはずで、初回だけでなく毎回手書きの手紙が入っているので、ショップの人は毎日顔も年もわからない相手に同じような近況報告をしていることになる。当然返事もこないはずだ。
でも、これがあることで生身の人が相手なんだなと実感するし、感謝の気持ちや向こうの暮らしぶりのようなものもぼんやりと感じられる。すると、確かに次もここで、と思わないでもない。100パーセントが「次も絶対」だとしたら、10%ぐらいは思う。いずれにしてもリピート確定のルーティン商品なので購入履歴から同じものを選ぶだけだ。
返事を出すつもりはない。気の合う人だけに限ってもラインやメールやSNSで毎日やたらとテキストメッセージを打たなければいけない昨今だ。相手の個性を知らなければ知らないほどあれこれ気配りして時間もかかる。お互いに負担になるからだ。
でも、これが先手を打って買い方から常に近況報告を送るようにしたらどうだろうか?チェスでもオセロでも先手が有利なのは常識だ。近況報告でも後手側は相手の書いた内容への感想から始めなければいけないから試合の流れを自分で主導していくことができにくい。常に相手の土俵で勝負しなければならないのだ。
今のぼくであれば、次にネットで買い物をした時に「領収証ください」などのついでに「お世話になります。私は最近、痔になってドーナツ型クッションを買いましたが、イマイチです。できれば手術はしたくないと思っています。また、腸にいい腸活と痔の対策はまた別だと肛門科の女医さんがユーチューブで言っていて、なるほどと思いました。それでは発送の方、よろしくお願い致します。」
こんな感じか。相手が普段から顧客に手書きの近況報告を書いているショップだったら、いきなり赤の他人の近況報告を読まされる気持ちをわかってくれるだろう。そうなれば無論ぼくの勝ちである。
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