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なぜ「言ったもん勝ち」のような選挙がまかり通るのか?
2024年の都知事選のあたりから、はっきりとその傾向が現れるようになった、特定の陣営における「言ったもん勝ち」のような選挙戦ですが、11月に行われた兵庫県知事選挙では、特に顕著にその問題が現れるようになりました。
いわば2024年は「SNS選挙」元年と言ってもよいような事態が起きたのですが、これはいずれ「制限や罰則」などが取り入れられる可能性があるにしても、こうした「言ったもん勝ち選挙」のしくみについては、理解しておいて損はないと思います。
まず、基本中の基本としての大事な話ですが、世の中の大半は「情報の非対称性」によって出来ていて、資本主義が機能するのも、すべてそれに由来します。(仕入れ値を客は知らないから商売は成り立つ、みたいなことです)
たとえばカルト宗教や陰謀論、フェイクニュースであっても、あるいは、今回のような選挙騒動も、まずは「言ったもん勝ち」で、情報をボン!と投げることから始まります。
さて、その情報が「投げられた時」に、受け手は「その情報が真実かどうか」を検証するのにものすごいコストと時間がかかるんですね。
「最終的には真実が検証される」と人は思いたいし、「検証の結果、ちゃんと事態は正される」と思いたいのですが、実際にはそうなりません。
なぜなら、情報がボン!と投げられた段階で、「発信者」と「受け手」の間には情報の非対称性が生じるので、それが真実だろうが、そうでなかろうが、その時点で発信側がめっちゃ有利になるのです。
この段階でもう、いったんは絡め取られています。 さらに、大衆や受け手をコントロールしようとする者は、有利な立場を持続させるために、「どんどん、つぎつぎに情報を投げる」ということをやります。
そうすると、正誤を検証する作業が、どんどん後ろに溜まってしまって、受け手は、正しい事実を入手する前に、新しいフェイク(など)に飲み込まれてしまうんですね。 これには時間というさらなる「非対称性」が加算されています。
平たく言えば、検証作業が追いつかなくなる、ということです。(時間やコストがかかるから)
さて、結論から言えば、「悪意ある情報の発信者」に立ち向かうのは、容易ではありません。 なので、「逐一、情報の正誤を検証する」のでは、どんどん遅れを取ってしまうので、ポイントはそこじゃないんです。
これらはその構造そのものに「情報の非対称性」と「時間の非対称性」が組み込まれていますから、真正面から「ようし、情報を確かめてやろう」と思っても、その作業をしている間に相手はどんどんさらなる情報を投げて来て、物量で負けてしまうのです。
では、どうすればいいのでしょう。
それは、最初の段階で「この発信者の意図はなんだろう」と視点を変えて、情報が投げられた段階から「非対称性」の罠から逃げることを意識する方法が大切ということになります。
「この発信者には悪意(意図)があるかもしれない」とスタート時点で気づけば、投げられた情報が「こっちに向かってこず、あっち(第三者)へ行くのを眺められる」のです。 ちょっとしたコツですね。
これは実はそれほど難しいことではありません。
たとえばショッピングモールで風船とかおもちゃとか配っている太陽光とか携帯電話の業者さんを見ても、我々は「ああ、あれは商売で、モノを買ってほしいのが本音なんだな」とすぐにわかります。 ところが子どもは、風船やらおもちゃにフラフラ吸い寄せられます。
相手の意図がわかっている大人と、意図がわかっていない子どもの違いは、そのあたりにあります。 つまり、目の前にふわふわしている風船が「情報」で、その背後にいる業者さんの売上が「意図」です。 ちょっとだけ意識できれば、まあ、たいていの大人は気付けないことはないと言えるでしょう。
さて、そうなると「SNS選挙」でも「フェイクニュース」でも、あるいは「カルト宗教の布教」でも、
”その言っている内容が真実かどうか”
については、はなっからノータッチで良いということになります。
そもそも詐欺師の言う事でさえ9割は本当のことを言っていて、そこに1割の嘘を混ぜると言われるくらいですから、「この人たちは本当のことを言っているんだ」ということすらも、重要ではない、と言っても過言ではありません。
注目すべきは
「なぜ、そんな言説を言うのか」
「そこにはどんな意図や、それによってどんな利益があるのか」
「隠された真意は何か」
ということだ、いうことになるでしょう。
それも相手に対抗して「なるべく時間をかけずに、フラッシュのように反射的に意識を変える」ことが大切ということなのです。
時間をかければかけるほど、それは相手の思うつぼ、ということになるかもしれませんよ?
ぜひ、人生のいろんな場面で、ご活用なさってください。