向嶋茂森

古臭い鹿児島人。 彷徨える化学屋。 エツクス線作業主任者(期限切れかも知れぬ) はり師きゅう師

向嶋茂森

古臭い鹿児島人。 彷徨える化学屋。 エツクス線作業主任者(期限切れかも知れぬ) はり師きゅう師

最近の記事

4_1 _言葉が違うと見方も違う

「化学屋から見た社会」シリーズ-1 【言葉が違うと見方も違う】  以前、”気”とは何かを問う記事を書きました。その中で少しだけ翻訳について触れ、言語が違うことでそのまま翻訳することが困難であることを説明しました。今回はその部分だけを切り出して説明します。最初に断った通り、私は人文科学・社会科学に関してはど素人です。あくまで、化学屋が横からツッコミを入れているという立ち位置で書いていきます。  今回に限ったことではありませんが、英和辞典・和英辞典としては基本的に英辞郎( htt

    • 2_9_化学反応とエネルギー

      「molと聞いて頭痛を起こす人たちのための化学+」シリーズ-8 【化学反応とエネルギー】  エネルギーの話が続きます。今回は化学反応(ここでは簡単な物理的変化も含めますが)とそれに伴ってエネルギーが出入りする様子を説明します。ここでいう”エネルギー”は”熱”と考えたほうが分かり易いと思います。  本稿は極力数字や計算を書かないようにしていますが、今回は全く出さないというわけにはいかないのでほんの少し簡単な計算を出します。 1.気体・液体・固体の間を行き来するときのエネルギー

      • 3_6_筋トレが一年続いた結果

        「教科書に書いていない勉強法」シリーズ-6 【筋トレが1続年いた結果】  今回はこれまでと比べて毛色の違う内容です。題目にある通り、去年(2023年)8月後半から筋トレを続けて1年経ち、丁度2024年9月の職場の健康診断の結果が返ってきたのでその辺も踏まえて書いていきます。  大まかにそれまでの状況、筋トレを続ける方法、健康診断の結果の流れで書いていきます。 1.背景  2019年(令和元年)12月COVID-19(以降コロナ)発生。よく歩く習慣があったのですが、出歩くこと

        • 2_8_放射線と原子及び分子の関係

          「molと聞いて頭痛を起こす人たちのための化学+」シリーズ-8 【放射線と原子及び分子の関係】  今回は前回までと分野ががらりと変わります。前回までが原子と分子の形の話でした。特に官能基の話となると有機化学の範囲です。今回はお題目にある通り、放射線の話です。どちらかといえば化学ではなく、物理の範囲で爪先が量子力学にかかっています。(今回は量子力学は出ません。)しかし、放射線の話は原子間や原子・分子の運動を説明する際に出てきます。その度に説明すると一貫した捉え方ができなくなるの

          3_5_ヒトは何故学問をするのか

          「教科書に書いていない勉強法」シリーズ-5 【ヒトは何故学問をするのか】  毎年の様に耳にする「勉強って役に立つの?」と言う質問を馬鹿馬鹿しいと思い聞き流しつつも特に答えを出さずに生きてきましたが、最近になってようやく文章化ができるようになったので私なりの回答を書いていきます。ただし、回答は一つではないので項目毎に書いていきます。 1. 成り立ちから考える  個人的には成り立ちから考えるのが王道だと考えています。理由は「目的があって、それに従って学問が作られてきたから」です

          3_5_ヒトは何故学問をするのか

          2_7_分子の形を表す言葉

          「molと聞いて頭痛を起こす人たちのための化学+」シリーズ-7 【分子の形を表す言葉】  前回までは原子同士の繋がり方とそれを理解するための基礎的な知識を並べてきました。今回からはやっと分子の形を説明していきます。基本的にC(炭素)とH(水素)を主体とした物質(炭化水素)を扱っていきますが、これを理解できると日頃耳にするシス型とかトランス型とか異性体とか言ったものが何であるかが分かってきます。 1.分子の形を説明する用語  これらが分かると簡単な分子であればどんな形をしてい

          2_7_分子の形を表す言葉

          2_6_結合の向き

          「molと聞いて頭痛を起こす人たちのための化学+」シリーズ-6 【結合の向き】  前回、原子と原子の間の繋がり方の説明をしました。今回もその続きではありますが、レベルが違います。今回は分子の形にも影響する結合の向きについて説明します。  皆さんは学校などで棒と球体でできた模型を見たことがあるのではないでしょうか。球体から棒が伸びて他の球体に差し込まれている分子の形を模したモデルです。今回はそのモデルを思い出せればそこそこ簡単です。基本的なことは前回の構造式で説明しました。今回

          2_6_結合の向き

          3_4_化学屋の進路指導

          「教科書に書いていない勉強法」シリーズ-4 【化学屋の進路指導】  進学の季節になりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。そろそろ化学屋として化学のお仕事について書いた方が良いのではないかと考え、キーボードの前に座ることにしました。化学の守備範囲は非常に広いので全ての分野を補完できるものではございませんが、1人の化学屋が観測した範囲でのお仕事とそれに適した性格などについて書いていくことにします。 1.理学部・工学部の卒業後  化学の仕事の内訳を説明する前に理学部・工学部を卒

          3_4_化学屋の進路指導

          2_5_原子間の結合

          「molと聞いて頭痛を起こす人たちのための化学+」シリーズ-5 【原子間の結合】  前回は原子がどのような形をしているかを説明したので、続いて原子が集まってできる分子の話をしていきます。分子は原子が複数繋がってできるものですが、説明する内容は2つあります。1つは分子の性質に関わる原子同士の繋がり方の話で、中学校で「~結合」と習ったものです。もう1つは前回の電子の軌道の話に関係していて、原子の繋がる方向や分子の形に関わる話です。今回は中学校のおさらいを含めて「~結合」の説明をし

          2_5_原子間の結合

          3_3_「気」とは何ですか?

          「教科書に書いていない勉強法」シリーズ-3 【「気」とは何ですか?】  お題目が何やら胡散臭いものに見えると思います。これまでも、そしてこれからも化学の説明をしていこうと言うのに脈絡のないものが飛んできたのですから普通の方にとっては交通事故ものでしょう。しかし、これには幾つかの目的があります。最初にきっかけから説明していきましょう。 1.何故「気」の話をする気になったのか?  私は「自然科学の学び方」で書いたように自然科学の英才教育(笑)を受けてきました。小学校低学年で九九

          3_3_「気」とは何ですか?

          2_4_原子の構造

          「molと聞いて頭痛を起こす人たちのための化学+」シリーズ-4 【原子の構造】  前回までは数値の取り扱いを説明してきました。ここからはやっと一般的に化学っぽいと思われる領域に入っていきます。が、いきなりですが、今回は物理学との境界領域です。  物質の単位として原子(atom)という言葉をご存じだと思いますが、この英語表現である「atom」は古代ギリシャ語で「これ以上分けることができない」と言う意味でした。ところが、科学の進歩によってその構成要素である陽子(proton)や中

          2_4_原子の構造

          2_3_濃度の分析

          「molと聞いて頭痛を起こす人たちのための化学+」シリーズ-3 【濃度の分析】  前回正確さの話をしたので、続いて分析で何が分かるかを書いていきます。やっていること自体は日常生活の中の行動や判断と変わらないのですが、それを幾分細かく見ていきます。 1.定性分析と定量分析  先ずは用語解説から行きましょう。 定性分析:その物質が何でできているかを調べる。同定とも言う。 定量分析:特定の物質・現象の量を調べる。熱や導電率などの形を持たないもの分析も含む。  定性分析で調べる

          2_3_濃度の分析

          3_2_自然科学の学び方

          「教科書に書いていない勉強法」シリーズ-2 【自然科学の学び方】  「自然科学の学び方」と聞いて大学受験を思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、本稿は子供の頃勉強が嫌いだった大人を対象としているので、もう大学受験は関係ありませんよね。(中年になってから挑戦しても良いですが、ここでは取り扱いません。)ここではテストのための心構えではなく自然科学に対する向き合い方の第一歩を書いていきます。  と、その前に最近起こった社会現象を大雑把に書き出していきます。 1.戦

          3_2_自然科学の学び方

          2_2_正確さ

          「molと聞いて頭痛を起こす人たちのための化学+」シリーズ-2 【正確さ】  工業化学科に入って毒性の次に出てきたのが”正確さ”でした。この授業で上皿天秤を扱ったのは私の世代が最後だと思います。私が大学院に進んだ後で学生実験でデジタルの電子天秤を使うようになりました。他の大学も同じようなものだと思います。  なぜこんな古臭い話を持ち出したかと言うと、誤差の話をする際幾分便利だからです。 注釈:今回は正確さの話をしますが、分析化学の測定に於けるそれについては書いていきます。従っ

          3_1_頭が良い人になるには

          「教科書に書いていない勉強法」シリーズ-1 【頭が良い人になるには】  私は化学を生業としている者で、幼少期から自然科学にどっぷりと漬かり、大学及び大学院でも化学を学びました。普段は「勉強した」と偉そうに言うのが嫌いだからと言うのもありますが、そもそも机に齧りついてまで化学を学んだ記憶がなく、「化学で遊んでいた」と表現することが多いです。とは言え、高校の受験勉強よりは勉強したと思います。現在は存じませんが、私の年代は大学時代より高校時代の方が勉強したと言う人が多いです。私はそ

          3_1_頭が良い人になるには

          2_1_毒性

          「molと聞いて頭痛を起こす人たちのための化学+」シリーズ-1 【毒性】  私が工業化学科に入って最初に学んだのが毒に関する知識でした。毒の知識と言ってもどの物質にどんな毒があるのかと言った枝葉の話ではありません。どんなものであれ量が過ぎれば毒になりますから酷い表現をすれば「全ては毒」「毒しかない」と言えます。しかしそれでは専門知識の入り口としてまるで意味がありません。これから危険な物質を取り扱う可能性があるわけですから、何を以て毒とするか、毒を取り扱う際に何に気を付けるべき