寓話 「いのちの日記」 第2章
第2章 あたりまえの幸せ
僕の町を出て、南に向いておよそ2日ほど歩いたところで、
「chimney town(えんとつ町)」
というところにたどり着いた。そこは、町中がえんとつだらけで空が煙に覆われていたんだ。
一日中陽の光が当たらないその町のみんなは、どこか暗い表情をしていたよ。
ほとんどの人が炭鉱夫やえんとつ掃除の仕事をしていて、朝か夜かもわからないままずっと働いてた。
試しに僕は町中の人に聞いてみたんだ
「どうしてこの仕事をしているの?」ってね。
そしたらみんな口を揃えてこう答える。
「この町にえんとつが溢れているから」って。
不思議だと思わないかい?そのえんとつは町の人たちが作ったんじゃないか。そのせいで、辛くてしんどい仕事がたくさん増えてみんな大変な思いをしている。
だから僕は言ってやったのさ!
「えんとつなんか無くしてしまえ!」って!
でもみんなは
「えんとつがなくなったら、仕事が無くなってしまうよ」
って答える。
不思議だよ人間のみんなは。自分たちでしてしまった過ちに依存して生きてるなんて。
いくらでもやり直すことだってできるのに!
みんなどこかで後悔しても、取り返そうとなんかしないんだ。仕方ない、過ぎたことだってみんな思ってる。
そんなのおかしいじゃないか。だって未来は変えられるんだもの!僕はこの町のみんなにも幸せになってほしい!
「えんとつなんか無くたって、みんなで力を合わせれば生きていけるよ!夜になったらみんなで星空を見上げて、明日も頑張ろうって!そう思えばいいじゃないか!」
「星空って、なんのことだ?」
僕は唖然としたよ。その町の人たちは、星の存在すら知らなかった。美しく空一面に広がる、暗い夜を照らしてくれる星空を見たことがないんだ。
僕はこの町で2つのことに気づかされた。
「人は後悔を受け入れてしまう」ということと、
「今ある幸せは、当たり前なんかじゃない」ということ。
きっと、君にもそういう経験があったと思う。
例えば、大切な家族と大げんかしてしまった時、
大好きな恋人とうまくいかなかった時、
かけがえのない友達を傷つけてしまった時。
きっとみんな後悔しているはずだ。あの時ああしていればとか、こうしていればとか。
でもみんなその経験を正当化しようとする。それがあるから今があるとか、あれでよかったんだとかね。
それでいいはずないじゃないか。
みんなそれぞれ大切なものさ。大事なのは無理矢理に関係を元どおりにすることなんかじゃ無くて、本当は言いたかった「君の気持ち」をはっきり伝えることだよ。
もし君がこんな風な経験をしていて、まだ解決できていないのだとしたら是非その問題に向き合ってほしい。なぜなら、その人がいてくれたことは決して
「あたりまえ」なんかじゃないから。
あなたを愛してくれる人や、あなたを大切にしてくれる人。
その人は誰かにとって
「愛されたかった人」や「大切にされたかった人」
かもしれないからね。
いつのまにかそれが当たり前になって忘れがちになってしまう。
だからしっかりと、大切な人には気持ちを伝えるべきなんだ。
そうでないと君は、死んでから「生きたい」と叫ぶことになるからね。
第2章 あたりまえの幸せ
完
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