セブンで働いてわかった、小売現場からみた非効率性とこれから取り組むべきこと
■なぜセブンで働きはじめたのか?
はじめまして、迎です。LAMILAという会社の代表で、チェーンストア向けに標準棚割りや販促におけるオペレーションを効率化するプロダクトの開発を行ってる。
今まで私たちがチェーンストア向けにプロダクト開発を行う上では、ビザスク・マッチャーを用いてチェーンストア業務に従事していた人たちとの接点を持ちヒアリングを行うことで、内部の課題を外から整理することを行っていました。今まで累計で100人以上の方とはお話ししています。
(※学生起業家の方はOB訪問アプリを用いることで、効率的に業界の情報収集を進めることができるのでオススメです。人事の方の時間を無駄にしないために、最初に起業していて情報収集を行っている旨を説明するのですが、その上でご相談に乗ってくださる優しい方々がいらっしゃいます。)
とはいえ、外からヒアリングする内容だと、辿り着けない情報もどうしても多いのが現状でした。例えば、実際にコンビニで使われているシステムがどんなものか?という際に、セキュリティ上の制約から特に煩雑なシステムについてイメージがつきづらかったです。
こういった中で、実際にバイトとして内部に入りながら、内部のオペレーションシステムの理解を行うことで、上記課題をショートカットして解決するアプローチをとることにしました。
今回は、そのショートカットによって得られた知識などをもとに、現場で発生している非効率性とこれから労働力不足になる日本において取り組むべきことについて走り書きします。
■現金払いが生む、レジ改革における非効率性
多様な決済手段を受け入れているコンビニにおいても、いまだ現金払いが60%程度を占めています。コンビニはほとんどの決済手段が使えることもあり、QR決済の比率はかなり高いのではないかと考えていましたが、LinePayやPayPayを利用するお客さんは、10人に1人にも満たない。お客さんの半分以上はいまだ現金払いです。(※意外にもセブンにおいて一番利用される決済手段はナナコで、キャッシュレス決済のうち50%以上がナナコです)
想像に難くないと思うのですが、この現金払いはレジ業務において大きな負を生んでいます。レジ業務を大きく2つの工程に分解して考えると、1つ目が、商品バーコードの読み取り、2つ目が精算です。現金払いでは、特に2つ目の工程においてキャッシュレス決済と比較して3倍以上の時間がかかります。小売においてレジ業務を圧迫する大きな要因です。
そのため、精算業務を効率化するために、各小売がソリューション導入に積極的に動いています。自動釣銭機を内蔵したレジの導入です。最近のスーパーでよく見られるセミセルフレジ(バーコードの読み取りは従業員が行い、精算だけ機械で行うもの)もこのソリューションとして含まれます。
↑セブンが2021年までに全エリア導入を目指すセミセルフレジ
来店客が自ら精算機で決済する「セミセルフレジ」を2020年9月から1年以内に全2万店で導入する方針を示した。新型コロナウイルスの影響による消費変化を受けて店舗レイアウトも刷新し、ニューノーマル(新常態)の店作りを目指す。-日本経済新聞,2020/07/28, https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62014230Y0A720C2TJ2000/
しかし、長期的に見たときに、この取り組みが局所最適解になってしまっているのではないと感じます。そもそも、レジ業務の精算工程は、QR決済などのキャッシュレス決済が増えれば、自然と業務時間が短縮されるものです。そのため、自動精算機を含むレジもしくはセミセルフレジを設置することは、キャッシュレス化が十分に進んでいない現時点においては業務効率化に繋がるものの、未来に近づくにつれて効用が目減りしていく構造になっています。
上記を踏まえると、日本全体解としては焦って各小売店がセミセルフレジや自動釣銭機内蔵のレジ導入を個別に進めていくよりも、キャッシュレス決済の普及を推進する方が正しい手順だと考えます。
実際にキャッシュレス化が進んでいる海外を見ると、レジ改革においてセミセルフレジの導入を進めるような事例は少なく、レジにおける1つ目の工程「商品バーコードの読み取り」まで含めて自動化するフルセルフレジを導入するのがほとんどです。
↑盒馬鮮生のフルセルフレジ(中国)
日本においてキャッシュレス化が進まないことによって、レジ業務の局所最適を試みるような取り組みが行われている現状は、これから日本の小売が海外に遅れをとる要因になるのではないかと危惧しています。セミセルフレジへの初期投資を行ったスーパーやコンビニが、すぐにフルセルフレジにリプレースするとは考えづらく、一歩踏み込んだレジ改革において大きな障害になる可能性があります。
日本では、凄まじいスピードで少子高齢化と生産年齢人口の減少が進んでおり、商品のバーコード読み取りを含めたレジの完全セルフ化が遠くない未来に求められるはずです。未来に向けて小売におけるレジ改革に正しい方向性を見出すためにも、いち早くキャッシュレス化を推進していく必要があると言えます。
キャッシュレス化こそが、日本においてもAmazonGoやフーマーフレッシュのようなニューリテールを生み出すために、最も求められていることなのではないでしょうか。
※一方でローソンは、フルセルフレジの導入を推進しています。セブンとローソンそれぞれの方針がどういった違いを生むのか、今後も要チェックです。
↑ローソンが導入を推進するフルセルフレジ
新型コロナウイルスの感染拡大を機に導入が広がるセルフレジの定着につなげる。利用者が自分で精算でき、人手不足で悩むコンビニ各社が導入を進めてきたが、新型コロナで非接触の決済需要が高まり、利用が増えている。ローソンの場合、2月末時点で1800店舗だったセルフレジの導入店舗は6月中旬で7500店舗に増えた。国内店舗の半数にあたる。-日本経済新聞, 2020/06/24 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60716320U0A620C2EAF000/
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