見出し画像

社会のおカネの流れを追う。会員2万人超えのオランダ独立調査報道メディア「Follow the Money」

先日、オランダの独立調査報道メディア「Follow the Money」の会員が2万人を突破したというニュースを見かけました。

名前が示す通り、彼らは「経済や金融財政において不正を働き、社会に負の影響を与える人やシステム、組織」を調査するメディアです。決して金融市場や経済を報じるわけではなく、テクノロジーや教育、ヘルスケア、食品、医療、環境など。あらゆる分野におけるカネの流れを厳しくウォッチしています。

画像4

例えば、彼らがオランダのジャーナリズムアワード「The tile」を受賞した2012年の記事。水管理委員会が出資する半公共の下水処理企業「NV Slib Processing Noord-Brabant」が、どのような経緯でドイツ銀行の提供する複雑なデリバティブ取引に関わるようになったのかを紐解いています。

2017年に別のジャーナリズムアワード「Vereniging Online Journalistiek Nederland」を受賞した調査報道記事では、当時自由民主国民党の党首であったHenry Keizerを含む計4人が、売上高1億600万ユーロかつ純資産3150万ユーロの企業を、3万ユーロ足らずで買収したと報じました(彼は報道を否定しましたが、報道からおよそ 3週間後に党首を辞任)

コロナ禍でも、欧州中央銀行(ECB)の民間企業社債購入プログラム(CSPP)によって、ShellやLVMH、ブリティッシュ・アメリカン・タバコといった大企業が安く資金調達を行なった点を指摘。該当記事はオランダの下院財政委員会で取り上げられ、Wopke Hoekstra財務大臣が追及を受けています。

優れた調査報道記事を世に送り出す彼ら。以下のようにビジョンを綴っています。

綿密な独立ジャーナリズムによって、真実を明らかにし、説明することは、民主主義において欠かせない。それだけでなく、真実を明らかにする行為は、進歩やイノベーションへの可能性と組み合わされば、物事を動かし、状況を良い方向に変えていく。

(上記、オランダ語→英語の翻訳と、オランダ語の辞書を参考に訳しているため、一部ニュアンスがズレている可能性もあります。もしオランダ語の読める方がいたら遠慮なくご指摘ください🙇‍♀️)

「真実を明らか」にするため、記事を一度出して終わりではなく、年単位でトピックを追っていきます。サイトでは以下のようにトピックごとの記事が「DOSSIERS(ファイル)」にまとめられています。

画像2

各トピックや人物、タグごとの記事は、以下のようにタイムラインの形で一覧できます。

画像3

Follow the Moneyは2009年末に、オランダのジャーナリストEric Smit氏とMark Koster氏、Arne van der Wal氏によって設立されました。いずれもビジネス・経済雑誌を中心に経験を積んだジャーナリストたちです。

彼らは設立当初からメディアは自立しているべきだと信じてきたと言います。当初の数年は個別記事をメディアに販売していましたが、2014年からは有料会員制度をスタート。2020年6月時点で4300人ほどの有料会員を抱えています。(ちなみに2014年に有料会員制度を始めたきっかけとしてDe Correspondentの成功を見ていたことも挙げていました

画像5

(月9ユーロ、1年間で90ユーロ、2年間で170ユーロからプランを選べる)

彼らは自身の収益もオープンに公開しています。2019年のインカムを見ると77%以上が購読料。14%がSVDJからの補助金、残りがMuckraker財団や個人からの寄付金となっています。(2019年は4333ユーロの赤字だったとある)

画像1

少し前に2020年上半期を振り返る記事を公開していました。2020年前半のユニークリーダー数は、2019年の総ユニークリーダーに匹敵する1,856,301を記録したそうです。

速報や広告を採用しないメディアとして、日本ではオランダのDe Correspodentが知られていますが、同じやり方で着実に支持者を増やし、サステナブルに運営されている例として、Follow the Moneyは今後も追いかけていきたいと思っています。

いいなと思ったら応援しよう!

MUKAI Haruka
最後まで読んでいただきありがとうござました!