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家族内の問題の棚上げにより子どもへ負わせる残酷な負債

”親ガチャ失敗”というネットスラングがニュースを賑わすようになっています。その背景には、親のことで何からの形で苦しみを味わい、努力してそれを乗り越えた、あるいはまだ乗り越えられずにわだかまりを抱えている方々が少なくないということに加えて、当事者の方々の”聞いてほしい”という悲痛な叫びが巨大なエネルギーの塊となって表れている結果ではないでしょうか。

家族内問題のメンテナンス機能喪失

親ガチャニュースに対する読者の生々しいコメントを見ると、胸がつまる思いのするものがいくつもあります。しかも厄介だなと感じるのは、「経済的には苦しまなかったけれど、精神的に苦しめられた」というケースが多いこと。そのような場合、子ども自身は「なぜこんなに我慢しなければならないんだ」と苦しみを抱え込む一方で「経済的に苦しまなかったのは親のおかげ」と感謝の念も抱く、つまり葛藤を抱えたまま大人になって対人関係で悩むのです。

このような家族では家族内の問題が解決されずに棚上げされている状態、つまり家族の問題を発見・修復・維持するメンテナンス機能が喪失している状態なのです。

無塾がなぜこの話題を取り上げるのか。

それはこの状態が、「家族間での対話が成り立っていない状態」だからです。

対話の回避で蓄積する子どもへの負債

つまり、夫婦間、親子間で互いの気持ちや考えを分かち合うことを避け続けることで、家庭内にはストレスが溜まり続けています(夫婦不仲、子への過剰な期待など)。そこで最も影響を受けるのが、子どもなのです。子どもは親の庇護下にあるうちは家庭が唯一の居場所です。その居場所をできる限り居心地の良い場所にしようと考えるのが自然。だとするなら、子どもは親にできる限り心配をかけない良い子でいようとする、これも自然ですよね。

そんな環境で大人になれば、”相手の反応を過剰に気にする” ”Noと言えない” ”自分の生活を楽しめない”、いわゆるアダルトチルドレン的人格が形成されてしまうのも理解できますよね。行き過ぎれば、うつや対人恐怖症、パニック症、自傷行為に発展します。

そんな苦しみも周りに対話できる人がいなければ相談すらできません。言えば「気にしすぎ」「過去を言い訳にするな」「甘えている」「不幸自慢か」と一方的で無慈悲な言葉が返ってくるのが関の山。

つまり残酷に相当な負債を負わされたまま、子どもは社会に解き放たれるのです。子どもは孤独になります。ただし負債ですから、努力次第で返すことができます。しかしその過程で得るものも大きいでしょうが、失うものも大きいのです。

メンテナンス不全家族

メンテナンス機能を維持するために心がけるたった一つのこと

そんな負債を”わざわざ”負わせたいと考える親は、果たして存在するのでしょうか。私はいないと信じたい。だけど現実に存在します。ただ一つだけ意識の中に欠けているものがあるからです。もうわかりますね。それは、

「対話」です。

それぞれが互いを受け容れ、対話を通じて互いの考えや気持ちを分かち合うことができれば、子どもは無理に良い子を演じる必要がなくなり、家族はそれぞれが安心して健康に過ごすことができます。それこそが真の豊かさだと感じませんか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。読者様の中で家族をお持ちの方がおられましたら、ぜひ一度、ご家族の方と互いの気持ちを分かち合ってみてください。その姿勢が相手の救いになるはずですから。

今回参考にしましたのは、「カウンセリングの心と技術(平木 典子著)」11章 家族療法と人間関係 です。


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