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観音崎の岬にて

雀が群がっている。⁡


わたしはもうだいぶんに歩いたのでとうにヘトヘトとしており足や腰が悲鳴を上げているが、道中に堂々と落ちているどんぐりの艶やかさや落ち葉の節穴の造作に見とれていたりと何かと忙しい。観音崎公園は風が強く、ややもすると飛ばされてしまうかと思われるほどである。轟々と風の音。カラカラと鴉の鳴き声。響くのは其れだけである。⁡

雀は何に群がっていたのだろうか。⁡

近付いて覗いて見ても干からびた小さなミミズの死骸がひっそり横たわるばかりでおおよそ食料と呼べるようなものはない。⁡
何をついばんでいたのか。⁡
そんなことばかりが気にかかる。⁡

人の目には映らぬ何かをついばんでいたのか。それとももう食い尽くしてしまったのか。⁡

轟々と風が鳴り⁡
カラカラと鴉が鳴く。⁡

こんな嵐のような風の中でも羽虫は飛び夏の太陽に焼かれ枯れた落ち葉と混ざる。⁡

一葉だけ揺れていたシダの葉は遊んでいたのか。じっと見据えるとゆうるりと動きを止める。⁡
踏み潰されたコガネムシの死骸。⁡
無惨にも石畳に落ちてしまった風に乗って飛ぶ種。⁡
時化た海は泣きたくもないのに目の端から涙を零れさせ⁡
その目の端には風に乗った鳶が空を走る姿が見える。⁡
するりとゆうゆうと、空を独り占めするかのように。⁡

あの鳶になりたいな、と思う。⁡

風の音が轟々からザワザワに変わる頃、秋の虫が一斉に鳴き始め⁡

人の心を容易く切なくさせる。⁡