西洋占星術における天体③ 金星
天体にはベネフィックとマレフィックにカテゴライズされています。ベネフィックはベネフィット、つまり利益や恩恵という意味に通じ吉星で、一方のマレフィックはマレヴォレント、災いや悪質という意味に通じて凶星と言われます。
ベネフィックは太陽、月、金星、木星。
マレフィックは火星、土星、天王星、海王星、冥王星。
水星はどちらでもありません。
地球からみて手の届く範囲、というか目視しやすい星たちがベネフィックとされていて、あまり目の届かない星々がマレフィックとされているのがわかります。ただし古代では現在ほど明るい夜ではないので、暗闇のなかで無数の恒星を、人間は目にしていたはずです。しかし惑星に関しては特別で、ちょっとおかしな動きをする星があるぞ、という認識であったと思います。実際のところ天体観測をしている事実は文献などで見られますし、とりわけ遠い距離にある木星は夜空でこぼれんばかりに明るく輝きますので、ひときわ夜空で目立ちます。一方の火星は季節ごとに移動も早く目にしやすい星ですが、暗い夜空に赤く輝く星であるがために、不吉だとされたのでしょう。月食も肉眼で見れば赤い月となり、いつもの月ではないという違和感と、赤という切迫した色がまざまざと映り、どこか急き立てられる雰囲気を察知する経験をしたかもしれません。赤は血の色であり、それから赤信号の色で、これは危機や危険への警告ともされています。それだけではなく、夜空に浮かぶ赤い星たちが、白や青の星々と比べると、暗い空に滲んでしまい、やや見えにくいと気付くでしょう。
こうやってざっくりと考えていけば、ベネフィックはとにかく目立つ、マレフィックは肉眼ではよくわからない、という一定の共通点があり、マレフィックの星々から受ける不気味な感覚をそのままストレートに分別したんじゃないのかと、つい穿ってしまいます。
わからないから不気味で怖い。その一方で、ハッキリ見えるなら明るくて見通しがいい。
さて、金星について思い浮かぶ事例といえば若さ、美しさ、快楽、幸運など、明るい事象が並びます。これらはあからさまなベネフィックです。一般的なリーディングでも金星があればとにかく気分がいいニュアンスがあり、あまり気負わなくとも楽しめる印象です。つまり脊髄反射的に「これは好き、なんだかわからないけど、すごくいい」と思えるなら、基本的に金星が関与しています。
金星は地球よりも内側にあります。社会的や年代的なところを司る、たとえば外側の木星や土星などとは一線を画すので、内面つまり精神的あるいは情緒的な盛り上がりです。誰もが否定しても私はこれがどうしても好きなんだ、という働きなので、あまり言葉にできなくとも良いのです。むしろ言葉に落とし込まない方がよりわかりやすく、かなりの実感を伴うでしょう。なぜそれがいいのかわからないくらい好き、という感覚が、その人にとってどれほど強いものなのかは、よくおわかりになると思います。
さて、金星を支配星とするサインは2つあります。牡牛座と天秤座です。
牡牛座の金星は五感をもって現れます。審美眼や解釈能力に優れ、芸術ばかりか生活のあらゆる部分に至るまで、かなりの一家言を持っています。味覚であれば料理や調理に詳しく、作り方がわからないまでも美味しいものを見つけます。聴覚であれば音楽や声色からの察知能力、視覚であれば絵画やカラー、人間の佇まいの判別と鑑賞能力、嗅覚であれば匂いや香り、まわりのムードさえも読み取るでしょう。触覚であっても手に触れるものばかりではなく、想像で抽象性を具体性に落とします。しかも繰り返し何度でも、自身が納得するまで「これはなんだろう」と思考するので、確かなものをつかむまで時間がかかる場合があります。牡牛座金星に慣れてしまえば発達した牡牛座になり、瞬時に判断可能ですが、まったく新しいものにはちょっとした警戒感があるので、極端になれば多くを聞かずに、いきなりシャットダウンする場合もあります。誰もが無意識に行っているとはいえ、実際のところ五感をフル活用するのはたいへんな労力なので、牡牛座金星はそんな面倒くさいことをするなら慣れているもので楽しめばいいや、と割り切るのです。牡牛座金星にとって慣れの問題の重要度は別格で、それとなく繰り返しているうちに自分のものにできてしまいます。そしてその最中であっても、自分と共鳴する美しさや楽しさを見つけ、心ゆくまで楽しむでしょう。それは朗らかな古典ワルツのような平和的で規則的な美しさと楽しさです。自分の美意識を確固としてしまえば牡牛座金星は最強です。誰かの違う意見を耳にしても「なぜ私はこれがいいのか、どうしてそれがダメなのか」という話になり、頑として譲らない気質につながります。根底から「私がいいと思うからいい」のです。そしてもっと牡牛座金星が発達すれば、相手の主張を捻じ曲げなくとも受け入れるだけの余裕が培われ、誰もが安心できる人になるでしょう。そもそも牡牛座金星は実感がなければ心が動きません。確証と安定感は牡牛座金星の武器であり、雲をつかむような曖昧さより、きっぱりとわかりやすい方を好むので、たとえ周囲からはマイペースに楽しんでいると思われても満足感にあふれ、幸せで愛すべき人生になります。また金銭や不動産や株などに恵まれ、物質的な余裕にも恵まれやすいでしょう。
一方の天秤座は他者と自身の相対性なので、金星があれば基本的に一般ウケする美的センスです。誰もが素敵だと思う方をスマートに選び、周囲からの支持を得るでしょう。瞬発力にも優れているので、これがいいかどうか、という判断能力は一級品です。ただし、好きかどうか、ではなく、いいかどうか、です。私はあまり好きではないけれど、あなたにならよく似合うしいいと思う、という、いわばコーディネーターのような審美眼があるのです。誰の目がどう見るか、あるいは自分がどう見られているのか、というところまで天秤座金星は知っています。天秤座はうまく比較しながらバランスを取りますが、たとえ個性的な立ち居振る舞いをする場合で無意識のうちにもしっかりと計算しているので、あまり悪目立ちしません。あくまでもノーブルであり賞賛に値するでしょう。そういった意味では器用だと思われがちなのですが、器用というよりも容赦ないセンスがあるので、実際のところダメだと思ったら非情なほどバッサリと切っています。対人関係でも同様に、ある程度までは相手の機微を観察し、うまくバランスを取りながら接していますが、ある地点に達して好みではない、あるいは受け入れられないと判断した場合、相手の言い分など聞かずに、あっさりかつ厳しく線引きをします。もちろんある程度はその人とうまく付き合う度量はありますが、それは表面上の問題で、仏の顔も三度までと言わんばかりに、美意識に反するものから適度な距離を置きます。しかもまったく言動に出さず感情的にもならず、それまでの経緯などを考慮せず動くので、対人関係ではあまりトラブルに巻き込まれません。線引きされた人々がまったく感づかないほどの愛想の良さ、あるいは平穏な表情をしているからです。天秤座は活動宮で常に動いていますから、いつも頭のなかで無意識のうちに、自らの美意識に沿った計算をしていて、その判断に基づく周囲への対応は見事のひと言に尽きますが、もし極端に走らない金星天秤座が徹底的に戦う場合、パートナーなどと共闘すると落ち着きます。誰かに対して線引きするか線引きしないかの差は、金星天秤座にとって猛烈なウェイトがあります。しかしそのような言動の頭から尻尾まで内面の葛藤があったとしても線引きせねば、天秤座金星の美意識からくる均衡は崩れてしまうのです。もし天秤座金星が「自分は孤独かも」と思うのであっても、まったく気にしなくとも良いでしょう。妥協せず正義を貫いていけば、いつしか統合がとれるようになるばかりか、同じような価値観を持つ人が無数に存在していることに気付くはずです。
水星や金星は地球よりも太陽に近いためか、支配星とするサインがふたつずつあります。これらを比較すれば、それぞれの天体の表裏一体さかげんとか、現れてくる意味の違いが詳しくわかるので併記しました。
このふたつの金星の働きの共通点を挙げるなら『私はこうしたい、これがいいと思う』という楽しみに基づく好みであり、美意識の持ち方です。
蛇足になりますが古典占星術では使用する天体が7つしかありません。蠍座が火星、水瓶座が土星、魚座では木星が副支配星です。太陽と月だけはひとつずつ、獅子座と蟹座に割り当てられていますが、それ以外はふたつずつありますので、これらを細かく検証するなら、それぞれの共通項や異質な部分を見つけられると思います。ただし天王星以遠の星たちを強く認識できる現代であれば、水瓶座や魚座、蠍座にとっての支配星はひとつだ、と考えても問題ありません。なぜなら、たとえば同じ水瓶座で考えても、土星と天王星の差は明白だからです。
しかし、このふたつ惑星の共通項は「絞る」で、ここを掘り下げれば山羊座と水瓶座の感触の違い、それから土星の働きまで言及できます。もし気になったら検討してみてください。しかしその場合は水瓶座の解釈を少し変えていく必要があるでしょう。天王星も絞りますが、土星の絞りは現実社会においては強烈です。それでもそのうえで土星は安定を意味しますから、水瓶座の風元素を固定化していく、という意味であれば、水瓶座の支配星が土星としても、まあそうですね、くらいの認識になるはずです。まわりに有無を言わせないくらいの土星、つまり独自性のあるルールや自覚を持つ水瓶座です。一方で天王星に安定性を加味するなら「風を巻き起こし続けている」という点が重要です、まわりから抜きん出た自らの個性を他人の意見で曲げなかったり、本質を突く、つまり一般常識を絞り無駄をそぎ落とし続けて一点を見逃さなかったり、という形で現れます。
土星にとって天王星は目の上のたんこぶです。なぜなら、この土星がスケールアップすれば、おのずと天王星もスケールアップずるからです。しかし土星が育ったのに天王星が育っていない、という事態は往々にしてあり、かといってそのままで放置しておくと、どんどん土星は縮小していってしまう、というパラドックスも存在します。これはどの惑星にとってもそうなのですが、次の惑星の意志を前の惑星が受けるという考え方は、ホロスコープの活性化に繋がります。ヒヨコが先かタマゴが先か、という議論がありますが、私にしてみれば、そんなのどっちでもいいからとにかくどちらかを生み出してみようよ、とは思っています。
話を戻しますが金星は美意識と好みです。心地良いものと悪いものを無意識のうちに判別します。
若い女性と意味される金星は、自らの好悪がすべてです。だからこそ好きか嫌いかという価値観は、時間が経てばひっくり返る可能性があり、たとえば若い時分は白菜や茄子が嫌いだったけれど大人になったら美味しいと感じるようになった、というのは金星の働きのひとつです。または嫌いだと思っていたものでも誰かの影響で気になりだして、手にとってみたら好きになった、という場合もあるでしょう。そもそも金星は公転周期が短いため、いろいろと変わるスピードも速く、昨日と今日とでは感じ方が違いますし、もしかしたら明日はさらに違ってくるかもしれません。じっくりと味わえる牡牛座でさえ日々の味覚に違いがあるわけで、その違いのなかでより良いものを選別しますし、天秤座も比較対象ばかりかバランスの軸がくるくると変わることもあるのです。それでも金星が座するサインの範疇は超えません。あくまでもそれぞれのサインの性質を生きています。
牡羊座であれば未知の世界を好みます。
双子座であれば軽さと量的充実を好みます。
蟹座であれば身近な人との関係性を愛します。
獅子座であれば自意識と創造性が肝心です。
乙女座であればなにごとも緻密にやりたがります。
蠍座であれば徹底的に密接な関係性を愛します。
射手座であればあっけらかんと解放されたスタンスを好みます。
山羊座であれば規律的な実務性を愛します。
水瓶座であれば真実と本来性を好みます。
魚座であれば耽美的なロマンティシズムに親しみます。
ここまできて、では苦手意識とはなにか、という気付きがあるかもしれません。金星にとっての苦手意識とは、まったく心が動かない瞬間です。
牡羊座は面白くなくてやる気が出てこない。
双子座は停滞を感じる。
蟹座は新しいことが多すぎる。
獅子座は自分らしさを発揮できない。
乙女座は自分の手の届かない範囲での問題に気付いてしまう。
蠍座は次々にやらねばならないことがある。
射手座は図々しすぎる人がいる。
山羊座は誰かに振り回されて思い通りにならない。
水瓶座は既知の飽き飽きした問題に向き合わねばならない。
魚座は細かすぎる問題に対応しなければならない。
このような場合、それぞれの意識の中で、どうしても自分を持て余し、手に負えないという気分になりがちです。それでも実際に頑張ってやろうとするなら、他の天体からのアスペクトがあり、きちんと対処する意識や意志、気力体力が備わっているか、きちんと育成してきたのでしょう。もともとハードアスペクトのある金星であれば、なぜそのような気分になってしまうのかがわからない、という事態に陥る場合があるのですが、その方向性はアスペクトする天体と、そのサインとハウスに左右されます。
たとえば金星が獅子座にあったとします。しかし火星が蠍座にありスクエアのアスペクトを形成しているなら、自分らしく生きたい獅子座金星に対し「そんなことをしてなんになるのだ」という意識が常に働きかけてきます。これは、息もつかせず水も漏らさぬほど綿密な他者との融合を目論む蠍座火星が、ひとりでやろうとする獅子座金星に違った動機付けをするのです。さらに蠍座火星はギリギリまでの徹底した克己心を要求します。「中途半端には絶対するな、とにかくとことんまでやらねばならない。その先にお前の未来がある」などと言ってくるのです。噛み砕くと、獅子座金星に対して、親しい誰かが「ねえ、死ぬ気でやんなきゃ意味なくない?どこまで本気か見ていてあげる」とかコッソリ囁く感じです。そうなると獅子座金星は土台から揺らいでしまいます。いつでも蠍座火星の要求する「他者と分かちあい、それは徹底的なものであらねばならない」のようなものに応えられているかどうか不安になり、思い切り楽しめないとか、いつも自信がない、という事態に陥ってしまうでしょう。獅子座金星の突っ走りはひとりです。極端に言えば「やりたいこと好きなことを自分勝手に思い切りできるのが大切」なので、なるべくならひとりでやっていって、ちょっと頑張ったら誰かにパーッと褒めてもらえたらいいな、みたいなスタンスの獅子座金星に、蠍座火星は「誰とも分かちあえず認めてくれない中途半端な世界になんの意味があるというのか」と重々しく問いかけるのです。
蠍座火星を落ち着かせるなら、ギリギリの瀬戸際まで誰かに追い詰められてもやっている、という胆力が必要になります。誰に言われても死ぬくらいまでやってやりますよ、くらいの意志です。すべて削ぎ落しても最後に金星が残っていれば良いのです。
その一方、同じスクエアでも牡牛座の火星であれば、「もっとしっかり現実をみて努力せよ」と言い聞かせます。自分自身の生を謳歌したい獅子座金星にとって現実は重荷になりがちです。獅子座金星は遊んでなんぼ、みたいなところがありますが、たとえば浪費癖があるとか、時間にルーズなどの弊害がなくとも、もっと頑張れるのではないかと自問自答しながら生きる結果となり、かなりの息苦しさを感じる場合があります。たとえじゅうぶんに頑張っていたとしても、牡牛座火星は現実の具体性ある世界を意識せよと言い聞かせ続けてくるので、なかなか落ち着けません。獅子座金星の創造性は情熱的で華やかさに彩られ爆発的で、いわばちょっと間欠泉的です。それが魅力であり長所でもあり、誰もが持ち得ない創造性を生み出すのですが、しかしそもそもそれ自体が牡牛座火星にとっては自らの持つ価値とは相反するものなので、金星獅子座は突き上げるような衝動を奪われ、意気消沈してしまうでしょう。長い目で見れば間欠泉でも常に水を噴き上げ続けているのですが、常用を重んじる牡牛座から見れば、あくまでも獅子座の間欠泉は一過性なのです。もっと途切れることのない噴水のように大々的に吹き上げ続けよ、というところに牡牛座の意志はあるのですから。
この牡牛座火星を落ち着かせたいなら、とにかく自分の価値を鼓舞し続ける持久力が必要です。くわえて美意識、こだわりとわかりやすい自らへの主体性ある価値観、それにメリットを追い求め、場合によっては手元の算盤を弾いて利益を生み出していく働きは、獅子座金星にとって学びとなるでしょう。
金星は喜びや楽しみと書きましたが、しかし木星のように拡大するおおらかさとか、社会的な発展とか、いわゆるダイナミックなものではありません。あくまでも金星は短期的かつ個人的な喜びであり、ピンポイントで刹那的な幸福です。たとえば誰かが「それでいいのかな」と思っても、本人が楽しいし嬉しいならそれでいい、というのが金星です。一方の木星は社会性も備わりますから、まわりも私もみんないい、という状態になります。
しかし繰り返しますが金星は幸運の星です。個人的な楽しみのどこが悪いのでしょう、と問われたら、どう答えれば適切なのでしょうか。誰もが答えられないと思います。なぜならそれはまったくの正論だからです。個人の楽しみなくして社会性のなにもかもが発展できません。社会が各個人の重なりから成り立っているものだからこそ、個人の幸福や楽しみ喜びは人間にとって核となる部分だと言い切ってもいいと思います。たとえば政治活動に熱を入れる人がいたとして、「私たちの住む社会を良くしたい」という大義名分があったとしても、そもそも政治活動がその人本人にとってなんらかの好ましい要素がなければ、まったくもって続かないばかりか思い付きもしないでしょう。しかしいったん志したなら、たとえその道が困難であっても、金星的な個人としての喜びが、無意識あるいは極限まで微かであれどこかにあれば投げ出したりはしないはずです。なぜなら苦しくとも根源的な喜びや楽しさを感じられるからです。
この政治活動のどのポイントがその人の喜びになるのかは、その人のサインとアスペクト、ハウスに関与するのは言うまでもありませんし、もちろん政治活動については意志としての太陽と、たとえば世襲制によって生まれながらの政治家であれば月や8ハウス、2ハウス、あるいは10ハウスなどが関与している可能性もあるので、すべて金星だとは言い切れません。しかしどこかに金星の要素があるなら、どれほどの苦痛も喜びに裏打ちされたものになるのです。
さあ、あなたの金星の位置をチェックしましょう。あなたにとって歓喜のポイントはどこにありますか。そしてその歓喜は、他のどの天体から支援を受けていますか。
ノーアスペクトでも問題ありません。それは純粋なあなたの喜びの可能性の種となります。なにからも働きかけを受けず、あなたそのものが真っ向勝負で楽しむべき地点です。
またハードアスペクトしかない場合でも問題ありません。そもそもハードアスペクトは凶作用と思い込むべきではありません。使い方を工夫すれば良いだけです、ソフトアスペクトはスムーズなあまり、見逃される、つまり「あって当然」だと感じられてしまいますが、ハードアスペクトであれば「乗り越えるべきポイント」としてのヒントが眠っています。けっして邪見にするべきではありません。どうしてもハードアスペクトを凶作用で片付けたいなら、「ソフトアスペクトに比べるとちょっと難しいね」、くらいの認識が良いでしょう。しかし、違和感そのものは認識しやすく、それそのものがプラスに働く事態になり得ます。そしてそれらを味方に付ければ全方位的な無敵感を味わえます。なぜならネイタルチャートに限って言えば、そもそもそれらはすべてあなたの武器だからです。異質なものを味方にしていく意志こそが、ハードアスペクトを自らのものにするチャンスであり、チャレンジでもあるのです。
最後に、個人的な見解としてですが、私は誰もが金星との向き合い方は非常に難しいと思っています。なぜならある意味では感情を超えた好みであるからです。月の感情と別個にあるため、ある程度は客観視できるはずなのですが、しかしなかなか「これは月なのか金星なのか」というところは、自分では判断しにくいんじゃないでしょうか。「楽しくないし好きじゃないのにルーティンだから難なくやっている」なら月であるのですが、これになんらかの遊び要素が加われば金星が顔を出しているはずです。でも結論からいうと実際のところは混じっている場合が多いので、金星そのものの働きを意識したいなら、意識してトランジットを覗いてみるといいと思います。ただし速度は速いので刹那的ですから、ちょっと金星を頑張ってみたいというなら、できるだけ一時的なものである方がわかりやすいとは思います。すごく好きだったのに今はどうでもいいかな、みたいなものは金星です。しかしネイタルは一生変わりませんので、ネイタル金星はずっと続きます。それは分野としてなのか、または性質的なものなのか、それとも起点となるべき働きなのか。それでもどの段階で月にトレースされ、金星がなにを次に見つけるのか、または月から金星を眺めてみた場合などは、あなたの人生においてちょっと興味深い話となると思います。
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