西洋占星術における天体② 水星 その他天体におけるノーアスペクトについて


 私は水星から木星までを1セットにして考えています。天王星と海王星、それから冥王星も1セットで、それらからあぶれた土星は特別枠です。
 なぜかというと、カバラの思想の一端である生命の樹で、テファレトのまわりにあるセフィロトが、ホド、ネツァク、ゲブラー、ケセドだからです。
 なにそれ、と思われたのなら検索してみてください。生命の樹の図では、中心のテファレトのまわりには、4つのなんらかの塊があります。これらがホド、ネツァク、ゲブラー、ケセドの4つです。
 よくいわれていることですが、中心のテファレトは太陽に該当し、他もそれぞれホドが水星、ネツァクが金星、ゲブラーが火星、そしてケセドが木星に割り当てられています。土星に相当するセフィラはこの5つの外側にありますので、一般的に考えられている木星と土星を対比させ絡めていくより、水星から木星までをセットにした方が、カバラの考え方では自然だと思っています。
  考えてみれば水星と金星は地球から内側に数えて2つもあります。だったら外側も2つで考えようとしても、まったくおかしくないと思います。もちろん小惑星ベルトはありますけれど、10大天体と考えた場合には小惑星は含みませんので、じゃあ火星の次は木星ですね生命の樹もそうですから、という、かなり単純な発想です。
 小惑星はセレス、ジュノー、パラス、ベスタくらいまでが一般的です。それ以上の小惑星を読む場合、どうピンポイントで突いていくか、という問題に発展します。なぜなら小惑星を考えれば360度にわたりびっしりと無数に存在しているからです。
 
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 では、さっそく惑星記号から考えてみましょう。
 世の中にあふれる記号は、すべてが象徴的なシンボルになっています。記号に関するイメージは、そのまま無意識のうち私たちに刷り込まれていると言っても過言ではないのですが、なぜこの記号なのかと考えていると、なかなか意味深いものになってくるでしょう。
 占星術ばかりではなく錬金術でも使用されていたので、一般的な意味はそれぞれ存在します。しかしそれらは他の文献を当たってみてください。成り立ちや意味には歴史があります。このあたりの私の解釈はあくまでも一例なので、象徴的という意味での定義づけについては、各々でいろんな捉え方を構築していくと面白いと思います。

 さて、地球からです。地球は〇の内側に×印で表記されますが、丸い地球が四元素で成り立つという概念だと思えば、すんなり受け入れられるでしょう。創造の三角でも五行の五角でもない、×です。じゃあ四角形でもいいじゃないかと思いますが、西洋思想においての×はクロスなので、これはキリスト教文化の表れと言っても良いかもしれません。でもここは西洋占星術での四元素かなと思った方がとっつきやすいです。グランドクロスの象徴であり、神聖な牛、獅子、鷲、それから天使あるいは人間の4つと考えていいでしょう。

 金星は人型です。〇の下に十です。どう見ても人型です。女性を表す記号とも言われますが、楽しさや柔らかさがある金星であれば、かなり人間に親和している記号です。宗教が世の安寧を願い、人の幸福を祈るものであれば、暁の明星あるいは宵の明星としての金星は、人々になんらかの精神的な指針をもたらしていたのかもしれません。

 その金星の記号に上向きのアンテナが2つ付随しているものが、水星の記号です。人型にアンテナがあるのです。水星は知性やコミュニケーションを意味しますが、人が相対する場合、言葉や動作などでコンタクトをとります。そう考えると水星記号は、他の人たちとの接点を見つけだすことに一役買っている、という具合になるでしょう。2つのアンテナは2という数字から考えれば、あなたと私、あれとそれ、下と上、どこかとここ、みたいな感じで、主体と客体が存在せねばなりません。存在したところでの存在価値というものを認識できるのは、水星の働きと考えると良いでしょう。

 さらに火星は〇に斜めの→です。この矢印はベクトルです。丸い地球を引っ張っていくのです。この方向は内側ではなく外側に向いていますので、社会性に基づく外界へと導く方向性を表していると言っても間違いではないはずです。火星は紛争や事故の星ともいわれますが、なんらかの逸脱性や瞬発力が外界と接した場合、紛争や事故という意味合いが色濃く現れる場合があります。日常が穏やかな性質、つまり金星的な安寧とは対照的に、火星は突破口を開きます。あまり変化を望まない金星であれば、火星は敵になりかねません。しかし火星の爆発力がなければ停滞し、うまく回っていかないのは周知の事実です。

 木星は数字の4に似ている記号ですが、ここには〇がありません。先端を丸めて記載すれば〇もできますが、基本的には完全なる球形にしません。4といえばタロットカードの皇帝のカードですが、古典マルセイユ版カードでは、皇帝の足がクロスしています。同じように足がクロスしているカードといえば12・吊られた男、それから21・世界です。皇帝は領土を広げ、吊られた男は吊られた状態を許容している、世界のカードは幸福と幸運を意味しているとすれば、木星の意味に通じます。だだっぴろく想定外なほどに同じものを広げていく。それは4の数字のひとつの意義ですが、そのなかにある安寧は、小さくまとまるものではなく、大きくダイナミックな動きに満ちています。
 
 そう考えていくと、これ以降の惑星で〇の記号が現れるのは天王星です。冥王星は楕円に近いので、ちょっと違う印象があります。偶然かどうかわかりませんが冥王星の軌道も楕円系なので、もし〇の記号を地球あるいは太陽と紐づければ、天王星でもひとつ、なんらかの意識の区切りがあると思っても差し支えないでしょう。土星を超えた先、トランスサタニアンの入り口が天王星ですから、ちょっとした大地のようなものがあって、それは天王星以遠の世界の土台となる、と考えても、間違いではないと思います。
 一方の海王星は、ひとつの足元から幾重にも枝を伸ばしています。惑星記号は地球に住む我々が作り出したものですので、これは抽象的に地上からみた海王星になります。水平線、あるいは地平線から3本の枝が伸びている意義としては、高く飛ぶというものがあります。ここではない夢の世界の予兆であるとともに、足をつけている地上から覗いても見えてこない先の彼方の世界です。これを反対に読めば広がりゆく天空の枝葉が一本の線となり地上に降りてくる、という解釈も成り立ちます。ちょっと捻った話になりますが、海王星記号そのものを身体を使って体現すれば、両手を広げてすっくと真っすぐに立つ、みたいな感じになり、頭から3本のアンテナが伸びています、と言ってもいいわけで、やはりどこかぶっ飛んだもの、というイメージになるでしょう。3本のアンテナなど普通は見えません。見えないのに3本のアンテナを立てる必要があるのが海王星というわけです。
 天王星もアンテナが立っていますが、テレビのアンテナのように見えるかもしれません。モノなのか生物なのか、それともまったく別のものなのか。着地点が違う、それから受け取るものが違う、あるいは発するものが天王星と海王星は違う、ということになると思います。海王星は手を広げて上空とコンタクトしますが、天王星は頭を下にしているのです。ここからも天王星がいかに破天荒な星か、という意匠に通じます。火星も〇が下と言えばそうですが、どちらも突発的な出来事や物事、あるいは曖昧なものを形にする天体なので、人あるいは地球または世界をどこかに連れて行く、と言ってもいいわけです。

 ここまでざっくりと惑星記号を頭に入れたら、それぞれの惑星の意味を検証していきましょう。

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 まず水星は、太陽に一番近い天体です。
 太陽から地球までの惑星である水星と金星は、人間の内的な部分を象徴していて、とりわけ水星は知性を司ります。言語、技術、商売、仕事。頭を働かせることに関しては水星の領域です。ただし知性とはいえ、高度な智恵や教養は木星以遠の天体です。基本的に水星の知性とは、勉強や理解力など、きわめて一般的な知性であり、哲学めいた問題に関する理解力は、そこまで鋭くありません。たとえば外界に開かれた、どこにいっても通用する普遍的な思想などは、さらに遠くの惑星に委ねなければならないのですが、かといって水星が働かなければ、どの智恵を選び活かすか、という視点がもたらされません。水星は刺激を求めますが、知的好奇心という言葉は水星の働きの一端です。知的好奇心を刺激される、という内容をよく区分すれば、その都度の瞬ごとに、自分の水星がどこを向いて突っ走っているのかが、よくおわかりになると思います。

 知性と教養、哲学の話に戻りますが、受験で例えれば、みんなが一様に頑張ろうとする大学受験までに関しては、誰も彼もが対応できますが、その先からはそれ以上の頑張りが必要になります。
 すなわち一般的な、いわゆる義務教育境域までは水星で対応可能です。しかしそれ以降は木星や土星、あるいは天王星など、ちょっとした工夫や受け皿が必要です。大学受験は一般教育じゃないよ、と言われてしまえばそれまでですが、中学以降の知識は誰もが生きている以上、ある程度は必要になりますし、中学までの学習が土台となり、成長するにつれおおいに関与する事実は言うまでもありませんので、どこまでも水星を甘くみてはいけないよ、ということになります。しかし大学における勉学の理解や習得には水星ばかりでは話になりません。研究にまつわる思想や教養、普遍的な哲学に関しては水星だけではなく、木星から天王星あたりの働きが必要です。木星がインプット、土星が定着、天王星がアウトプット、というとわかりやすいでしょうか。
 知性の発達は、どのようなものが得手不得手かも含め、それぞれのサインやハウス、それからアスペクトに左右されます。

 さて、サインだけに言及すると、水星を支配星とするサインは双子座と乙女座です。
 水星双子座は言語能力、素早い理解力が見て取れます。とにかく1を聞いたら10までわかるとは言いすぎかもしれませんが、本人が混乱しない限りは闊達とした知性が光ります。なぜ混乱するかというと、たくさんの情報をそのまま処理してしまうからで、雪崩や洪水のように流れ込む情報に対し、一気に頭を回すとキャパシティーを超え、パンクする可能性があるからです。誰も気が付かない些細な情報までキャッチしているので、本人にすれば情報量がそれほど多くないと感じていたとしても、実際のところは他の人からみれば一般的な範疇を超えてまで多いのです。さらには無意識のうちに理解できてしまうので処理能力や基本的な学習能力は超一級です。そのため周囲が「すごく頭の回転が早いんだな」という評価をしていても、双子座は他の人たちよりも吸収が早すぎるために、無知の知に至る周期までもが早いので、こんなに私は知らないことがいっぱいある、という一点で『私はあまりモノを知らない人間です』という自己評価に達する瞬間があります。それでも持ち前の器用さで頭脳をフル回転させて対応できてしまうところが、水星双子座の強みですし、そもそもこの人たちがモノを知らないはずがありません。

 一方の水星乙女座は徹底した管理能力が光ります。双子座のように混乱するとするなら、ありとあらゆる情報が錯綜している最中に、それらを全部ひとつひとつ検討しているからです。双子座は情報量に飲み込まれますが、乙女座は正誤を検討しようとして飲み込まれます。そこまで考えなくともいいよという地点まで、乙女座は徹底的に思考し分析するので、抜けのない、水も漏らさぬ知性を持っていると言えるでしょう。しかも水星乙女座は、それを説明しようとは思っていません。誰かに説明するにはあれもこれも漏れなく言及せねばならないことを、この人はよく知っているのです。そのため効率的に対応しようとするあまり、ぶっきらぼうとか愛想がない、と誤解される恐れがあります。どうせわかってもらえないだろうし面倒くさいから説明しない、という事態にもなります。基本的には、自分がわかっていれば、それだけでいいのです。それでも水星乙女座が本当に必要と思うなら、できるかぎりの精魂を尽くして周囲に伝えようと奮闘します。そしてめったに間違えません。万が一にでも自分が間違った理解をしていたと認識すれば、それからのリカバリーが早いため、ほとんど損失のない結果を手に入れます。ただし反省した場合、まわりが心配するほど落ち込むことがあります。これは水星乙女座の完璧主義の現れですが、自分が納得できれば立ち直りは早いので、結果としてとても有能な人、という立場を手に入れるでしょう。

 ここまで見れば、水星の一端を知ると思います。
 水星は実務的で理解のある知性です。それぞれがピンポイントで最大限の能力が発揮できる、その手掛かりを握っているのです。

 たとえば水星の働きだけでざっくりと読み解けば、牡羊座であれば一瞬の判断力、牡牛座は時間をかけた着実な知性、蟹座は周囲の状況を読み解く能力、獅子座は創造性ある思い付き、天秤座はバランス感覚の有利性、蠍座は限界を突破できるほどの膨大なインプット能力、射手座は高度な思考力、山羊座は実際性を伴う思考力、水瓶座は突拍子もないアイデア、魚座は象徴性の理解、です。

 牡羊座は直感で思考します。
 牡牛座は感覚で本質を理解します。
 蟹座は親しみやすい身近なところから同調ある知識を習得して広げます。
 獅子座は信頼できる教育者に影響を受け、自らを輝かせます。
 天秤座は比較しながら学びます。
 蠍座は一点集中で深掘りします。
 射手座は発想の豊かさが武器になります。
 山羊座は王道かつ常識的な思考能力があります。
 水瓶座は独自の展開法を知っています。
 魚座はすべてを把握します。

 先に説明した双子座と乙女座を除き、各サインの代表的な水星の性質を並べましたが、このように考えても、水星をどう活かすのか、というのは、どの人にとっても重要で、かつ掛け値なしに身近なものだとわかります。
 かといって長所は短所に通じるもので、それぞれのデメリットも存在します。

 牡羊座はピンとこないものには着手しません。
 牡牛座は納得できるまで次に進みません。
 双子座は興味の対象がコロコロと変わります。
 蟹座は周囲の判断基準に委ね大衆に左右されがちです。
 獅子座は他者との根源的な折り合いがつきません。
 乙女座は1か0かになりがちです。
 天秤座はほどほどまでで止めがちです。
 蠍座は興味のない分野はスルーします。
 射手座は特定のひとつに留まりません。
 山羊座は常識の範囲を超えにくいです。
 水瓶座は他者に理解されるまで時間がかかります。
 魚座はここまでという境界線がありません。

 しかしここで考えなければならないのは、他の天体にアスペクトがあった場合、このメリットとデメリットの質感が多少ならずとも変わる、という点です。

 たとえば山羊座水星に乙女座冥王星のトラインがあったとします。冥王星は限界を突破しますが、ギリギリの底力なので、その人が甘々でやっている限りは働きません。山羊座水星はルールや常識の範囲内での思考力ですが、もし冥王星の助けがあれば、この常識を飛び越えてしまいます。山羊座水星は自分の限界を知っていて、そのなかでどう社会に還元するか、という一点で打って出ますが、ここで限界を超えようとする冥王星というきっかけを自らのなかに持っているので、困難や悩みに見舞われるたびに、いままで当然だと思っていた知性や思考を冥王星で書き換え、さらに大きな常識の範囲を手に入れます。もともと山羊座は実際的な知性ですから、社会で活躍できる素地に恵まれているので、イノベーションを繰り返す有能さとして表れるでしょう。社会では妙に発言力と影響力があるとか、とても真面目で堅実な働き者として認知されます。ただし発言や返答には時間がかかるでしょう。冥王星の働きにより滅多な軽口など叩けず、水星山羊座っぽく揺らぎない本質を伝えようとするがため、どうしても口が重くなりがちで、きちんと考えた末の意見や結論を出そうとします。山羊座水星は社会的規範や道義を重視し、基本的にすぐ返答したがりますが、どうしてか思考に時間がかかり、想定よりも遅れてしまう場合があるのです。これは細部にわたってマナーを配慮し文面に気を回しているか、それとも件の内容に悩みすぎているか、内容に関してどうしても承服しかねるかのいずれかですが、『なんだかんだであの人の言うことは本当なんだね』という、信頼に足る評価を受けるでしょう。
 なお、鶴の一声という言葉は水星冥王星のアスペクトに通じます。最後の最後で重い口を開き、誰もが納得する、あるいは反旗を翻せない意見や結論を述べます。

 このようにして他の天体も検討すると、水星の働きが細部にまで読めると思います。天体は公転速度が遅いほど重量級で、より公転速度の速い天体に影響を及ぼします。
 水星は公転速度が速いため、次々にいろんなものを見せてくれます。それはまるで万華鏡のようです。手を回せば見える世界も違ってきます。具体的にどこへ向かって頭を働かせ、どう動いていくのかは、ネイタル水星に対するネイタルの天体、それにトランジットの影響が色濃く反映されていると言えるでしょう。

 もし水星が弱いとか、ちょっと苦手と思うのであれば、ネイタルチャートにおいてどのようなコンディションなのかを把握しましょう。もし意に反してあなたのネイタル水星がポジティブな活発さを認めるなら、プログレスならびにトランジットを検討しましょう。とりわけ土星とトランスサタニアンとのアスペクトを考える、あるいは火星が作用していないかをチェックするといいです。火星であれば短期的な問題ですが、土星以遠の天体であれば、わりと長期的な問題であり、トランジットの作用に関しては、苦手だと自覚した時期のトランジットは有効に考えるきっかけになります。その時期に解消されるべきだった問題は尾を引いていないかどうか。それを検討してから現在のトランジットを見てみれば、自らの水星に向き合えます。もし漠然と「生まれたときから苦手だった」みたいな意識であれば、ネイタル水星にトランジット天体が調和的なアスペクトをとる時期を検討しましょう。とりわけそれが土星やトランスサタニアンなら、有意義なきっかけになるはずです。

 土星は苦手と認識される場合が多いのですが、基本的に超越は可能です。土星は一般常識的、またはカテゴライズ化された認識です。まわりと比べてなぜかうまくいかない、あの人のように水星を使えない。そのような感覚や感情は水星に限りませんが、もし水星でそのような意識があるのなら、水星の枠を壊すあるいは慣れる必要があります。土星の外側は天王星なので、土星に彩られた水星を天王星で上書きするわけです。もし苦手だという認識が頭で考えての結論であれば、かなり水星っぽい現れ方なのですが、土星と天王星を向こうに回して水星を扱うわけですから、羽目を外した頑張り方が必要です。これができれば土星は安定を司る星ですので、きわめてプロ的な、いつでもどこでも実力を発揮できる資質となり、水星の働きを後押しするでしょう。あの人はなにがあっても一定水準のものを出す、というのは、どこかで土星が関与しているか、山羊座の働きが強い場合が多いのです。
 もしその気があるなら、とりわけ水星が座すサインに関して、徹底的にやるべきです。もし水星が射手座であれば宗教や海外に関する学習、芸術への理解など。水瓶座であれば天文学やコンピュータ、一般的ではないマニアックな知識や分野、現代アートなど。もし少なからず興味がそちらにあるなら、これらを足掛かりにして水星の可能性を伸ばすと良いのです。
 この場合ネイタルにおけるハウスも考慮に入れたいなら、ハウスは特定のステージを表すので、限定的な必要性ある行動を知らせるでしょう。たとえば5ハウスなら創作、6ハウスなら計算や分析、2ハウスならお金を稼ぐ、8ハウスなら誰かを踏襲するか模倣する、あるいは引き継ぐ、12ハウスならイメージ力を発達させるなど、いろいろと具体的に起こせる行動を示しています。

 なお芸術の話になりましたので蛇足ではありますが、芸術は金星なのではないか、という意見もあると思います。もちろん金星も芸術です。ただし金星は、どちらかというと受け皿的です。審美眼があるとか感受性の強さは金星です。それをどう言葉や芸術技法で表現できるか、という点に関しては、水星の働きがある程度まで必要になるでしょう。つまり芸術的な資質は金星と水星の両方です。これにトランスサタニアンがアスペクトしているなら、さらに大きな可能性を秘めることになります。金星は『これは好き、すごいと思う』という感覚ですが、水星は『どういう表現技法なのだろう、ちょっと真似してやってみようか』という、受動性を基にした好奇心の能動性があり、実際に磨き上げて形にしていきます。金星はその水星の動きを補佐し、さらに表現の幅を広げてくれるでしょう。
 鑑賞しているだけで満足なら金星、それより踏み込んで自分でもやってみる、というスタンスが水星です。トランスサタニアンにはそれぞれの天体の意義が重なります。天王星であれば独自性、海王星であればロマンと耽美、冥王星であればまったく新しい視点、あるいは人間の本来性における衝動性と創造性で、これらは飽くなき熱意として表れます。

 もちろんこれらに限定しなくとも、まずサインを検討し、それからハウスを考えていけば、どうすれば水星がシンプルに発達するのか、という方法が見えてくるはずです。
 どこまで頑張るかは、その人の意気込みや好みです。
 とことんまでやりたいなら、とことんまでやれば、さらに奥深いものに気付くはずですし、ほどほどで良いのなら、ほどほどのところで打ち止めて、生きている範囲での都合のつく水星に育て上げれば大丈夫です。それ以上を望むなら、さらに違う方向性を模索してみたり、さらに深く掘り下げてみたりと、いろいろ方法がありますので、それぞれのネイタルをよく眺めて読み解きましょう。
 苦手意識はマイナスにはなりません。ちょっと心に引っ掛かるものとして、材料を提示してくれていると考えると良いのです。

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 さて、ここで疑問となってしまうのは、ノーアスペクトについてです。
 ノーアスペクトの水星については、コミュニケーションの困難さなどが代表的な解釈だとは思いますが、まったくそんなことはなく、かえって純粋なエネルギーとして、きわめて良い意味で爆発や暴走をする可能性があります。けっして悪い意味ではありません。いわゆる複合アスペクトを持っている人よりもうまく活かせる可能性があるのです。それは独自性という意味での輝きであり、誰にも真似ができないほどのものになるでしょう。

 どの天体であってもノーアスペクトは、自分のなかにある要素の働きかけを持たず、それそのものの天体だけでなんとかしなければなりません。たとえるなら鳥の巣にある卵のようなものです。
 鳥の卵は親鳥に庇護され暖められて生きているので、その存在を知っているのは親鳥だけです。ノーアスペクトはこの卵のように細胞分裂を続けます。まったくもってその内部は誰の目からも見えないばかりか、親鳥の認識にさえ上がってきません。しかしたしかにその卵は生きていて、せわしなく液体から個体へと変容をしています。そしてあるとき、たとえば餌を採りに羽ばたいた親鳥の温もりを少しのあいだだけ消失するとか、雨の日に滴が落ちるなどして、外界の存在に気付くでしょう。そして然るべき時期が来れば卵の殻を内部から破り、ヒナとなるのです。
 親鳥が少しのあいだだけ巣を留守にした、あるいは雨に当たった。これらがノーアスペクトの天体におけるターニングポイントです。その変化をターニングポイントと捉えるには、それまでノーアスペクトの天体に向き合う必要があって、どうして苦手なんだろうとか、もしかしたらあまり得意ではないのかなとか、そのような検証を自らで続けているはずです。反対に、好きなのに人一倍本気にならないといけない自覚があるとか、他の人と比べると妙にやっている量も数も多すぎる、という出方をすることもあります。ノーアスペクトの天体が最初から暴走している可能性があるのは、同じサインに他の天体がある場合です。つまり、きわめてゆるくコンジャンクションしていると言ってもよく、同じサインに在宮する天体に引っ張られるなら、ノーアスペクトの天体も、最初からガンガンに走るでしょう。しかしその場合、その同サインの天体に、できれば消極的な要素がないことが条件です。もし消極的なアスペクトがあるのなら、そのアスペクトを克服したのち、ノーアスペクト天体の意義を手中に収めるという、二段階認証のような動きが必要になる場合があります。こんな回りくどさが必要ではないなら割り切って、ノーアスペクト天体の単独活用に尽力しましょう。
 ターニングポイントはプログレスあるいはトランジット、または他者との相性図からもたらされます。それまでどうノーアスペクト天体を暖め培ったかが重要で、それがいつしか卵を内部からクチバシで突くような衝動性となり、プログレスやトランジット、それから相対する人との関係上の接点をきっかけにして、卵の殻を破ります。
 こういった一連の流れがノーアスペクト天体の活かし方の一例です。

 ノーアスペクト天体は他の天体との関りがないので、純粋で力強い性質となって働きます。ゆえにノーアスペクト天体だから弱いとか苦手だというわけではありません。ノーアスペクトだからこそ戦える、みたいなところはあるので、もしあなたにノーアスペクト天体があるなら、人生にとってとても大切なところ、だと認識すると良いと思います。
 もし水星がノーアスペクトなら、読書や映画鑑賞、それから仕事や勉強などで、さまざまな経験と耐久力をつけると、かなり水星が得意になります。とにかく水星は手を動かすと良いので、パソコンで文字を打つとか、手芸や料理に勤しむなど、どんどん動くと良いでしょう。これらは楽しむというよりも、どこか義務感めいたものがあるかもしれません。なんだかやりすぎてしまった、というのもあるでしょう。でもそれが良い意味での爆発であり暴走の一端なのです。
 その他でも、文字を読みすぎ書きすぎ、SNSやゲームのしすぎ、興味のある分野に関して果てしなく調べる、どんなものでもすぐにプロ級になる、どうしようもなく商売に本気になる、コミュニケーション能力がずば抜けて高い、などで現れます。

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 水星は認識しやすい天体です。一般的になりすぎている、または身近すぎるがために、ホロスコープを前にしても見逃されたり、あまり重要視されなかったりする場合があります。それでも仕事や勉強では知性ですし、恋愛や対人関係ではコミュニケーション能力として表れます。そのほかでも理解力や思考能力としての水星は、それぞれのホロスコープにおいて重要な位置づけと言わざるを得ません。ひとつ隣の金星では心地良さがあるので、考え方ひとつでは人生にとって余剰という意義にもなりかねない天体で、現代のホロスコープでの解釈ではかなり重要視される傾向がありますが、水星はそのような遊びの余白がなく、ピンと張りつめた糸のようなものです。ちょっと踏み込めば手にとるようなリアリティに満ち、さらに深みにハマれば『ものすごく考えていたら、かえってさっぱりわからなくなった』という羽目になります。つまり水星の本質をよくよく考えると、日常的に用いている部分、すなわち無意識のうちに苦もなく働いているが大きく、さらにそれらは自らの手で努力の方向性やピンを留める地点を定められるため、張りつめた糸から落ちるか、こわごわと糸の上を渡り歩き続けるしかないのです。しかしそこまで思慮しなくとも、水星は日常的に使いやすい天体であり、打てば響くようなリアクションの良さがあるので、あんまり深読みしなくともいいんじゃないのかなと、あっさり認識してしまえるのです。
 すべての天体に言えることですが、天体には無駄など一片たりともありません。これはサインも同様で、どのサインにもくまなく感覚や色合いが存在します。その人にとってホロスコープのすべてを手に入れるきっかけはいろいろあると思いますが、それをどう自覚し活かしていくのか、というカギを水星で開こうとするなら、かなり明確なヒントになるでしょう。
 そのため当然ながらどのような場合でも見過ごしてはならないと思います。

 

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