ポッドキャスト|AIラヂオ010後編|生成AIの言葉と人間の言葉は何が違うのか?芥川賞作家の神回答がツボにはまった件【文字起こしつき】
みなさま、こんにちは!テック系フリーランスライターの五条むいです。
テクノロジーとの共生でハッピーになりたいHarmonic Society株式会社の師田賢人と、テック系フリーランスライターの五条むいが、ゆるく愉しくお届けする〈AIラヂオ〉をお届けします!
AIをアシスタントにして書いた『東京都同情塔』が芥川賞を受賞した九段理江さん。 九段さんのNHKのインタビュー番組からインスピレーションを得て、師田と五条が「人間による文章と生成AIによる文章は何が違う?」をテーマにトークの後編です。
ポッドキャストは、〈AIラヂオ〉のWebサイトから配信しています。
文字起こしもついてます。それではよろしければ、しばしお立ち寄りください。
AIラヂオ010後編の文字起こし
(前編からの続き)
五条:そうですね。だから九段理江さんが、二つ目にとても大切なこと言ってるわけです。
九段理江さんは『人間の創造性は偶然に支えられてる』と言ってるんですよ。『人間には人間にしかない独自の創造性があると思う』と言うんですね。
つまり統計解析で、もっとも、もっともらしい言葉を生成するAIっていうのは、いわゆる効率化を目指してるわけで、もっともらしいということですから、AIにとっては、偶然とか逸脱っていったものはエラーなんですね。
でもお笑いにしろユーモアにしろ、逸脱が面白いじゃないですか。
師田:そうですね。その逸脱に対して、どう反応するかみたいなところが面白いわけですからね。
五条:そうです。だから九段理江さんは、偶然や逸脱を人間は面白いと感じたり、何かに組み込んでみたりすると言っていて、人間は、偶然や逸脱といったエラーを大事にすべきだと言ってるんですね。
師田:なるほど、確かにそれは深い。
五条:だから生成AIの動作原理からして偶然とか逸脱がないので。
もっとも、もっともらしい言葉を生み出すことしかやらないわけですから。
生成AIが生み出した、もっともらしい言葉の組み合わせを、人間が面白いと感じることは、あるかもしれないとは思うんですけど。
師田:なるほどね。やっぱそうなってくると、人間による知性とAIの知性っていうのは、全く異なるものですよね。
ただ一方で五条さんのnoteの記事を拝見したんですけど、コタツ記事ライターという言葉があるじゃないですか。
こたつに座って、ネット上で調べた情報だけで記事を書くライターの事を、コタツ記事ライターとか言うんですけど、五条さんのnote記事では、コタツ記事ライターは、AIにかなわないんじゃないかみたいなことをおっしゃってましたよね。
五条:そうなんですよ。
コタツ記事ライターって、偶然とか逸脱とか求められてないんですよね。
つまり面白い記事を書いてくれっていう依頼はないので、ここはもう生成AIには勝てないと。
師田:そうなってくると人間による文書っていうのは、たとえば小説であったりとか、他者との関係みたいなこと、そういった感情の機微みたいなのを書くものは、やっぱり人間にしかできないってことになりますかね。
五条:そうなんですよね。
実は、知の巨人と呼ばれていた松岡正剛という方がいらっしゃるんですけど。その方が最近、お亡くなりになって。大変、残念なんですが。
この方がですね、『千夜千冊』という書評サイトを、やっておられました。
1850話ぐらいの書評が、ネット上に載ってるんですけど。
この千夜千冊の980夜で、グレン・グールドというアーティストを評して、松岡正剛さんがおっしゃったことが、すごく深いんですよ。
松岡正剛さんは、こう言ってるんですね。
この「精度と逸脱の関係」が大事なんだっていうことを言っていて、ボクたちは前回まで、生成AIが生成する画像にしろテキストにしろ、精度の話をクオリティとして語ってきたわけじゃないですか。
でも比類がない芸術っていうのは、この精度と逸脱の関係が、巧妙にデザインされたものだと言ってるんですよね。
師田:なるほど。なんかすごいが深いですね。
五条:これ深くて、これが理解できなくて、とても苦闘してるんですけど。
結局、これが生成AIと人間の違いだと思うんですよね。
「新しい文脈を生み出すことを目指す」っていうことを、師田さんがよくおっしゃってるじゃないですか。
新しい文脈を生み出すことは、新しい意味を生み出すってことですよね。
この「新しい意味を目指す」っていうことは、松岡正剛さんに言わせると、「精度と逸脱の関係を巧妙にデザインすること」なんだっていうことなんですよ。
師田:それなんか、わかるような気がしますね。
芸術とかライティングとかもそうですけど、やっぱりクリエイティブな文章だったり、クリエイティブな芸術っていうものは、いってしまえば、熟達したアーティストが課題を与えられて表現しろっていわれると、何かそれぞれ表現の形態とか種類っていうのは、ぱっと見違うんですけど、本質的には同じものを表現してるみたいなことがあると思うんですね。
その表層的なアートのデザインとか形っていったものは、逸脱っていったものを大切にしてるようにも思えるし、ただ一方で、本質的なところをちゃんとテーマとして作っているところは精度が求められている気がするし。
高精度と逸脱がフィードバックし合って、お互い、両方、表現できてるのがいいっていうふうになるとも思いますね。
五条:うん。だから、生成AIが人間のクリエイティビティを超えるかっていう、従来から話してきたテーマで言うと、多分、答えはここら辺にあるんだろうと思いますね。
師田:そうですね。たとえば偶然を大切にするみたいな、そういうアルゴリズムを入れても、それが予定調和になってしまったら、それは偶然ではないわけで。
そこが難しいとこですね。
五条:うん。だから基本原理からすると、生成AIは人間のクリエイティビティを超えることはないとしか思えないんですけれども。
ただね、脳科学者の茂木健一郎さんが、やっぱり深いことを言ってるんですよ。
前回、「量が質に転化する」って話をしたじゃないですか。つまり生成AIのモデルのパラメータ数が、ある閾値を超えると、いきなり生成AIの性能がぐんと上がると。
つまり、ある閾値を超えたとたんに、ある種の創発が起きてるんだという話があって。
でね、YouTubeを見てたら、茂木さんがね、実は、生成AIがクリエイティビティを持ってるんじゃないかと。
それは生成AI研究の最前線にいる科学者たちすらも、なぜそれができるのかっていったことを、まだ説明できないでいるってことを言ってるんですよ。
だからね、やっぱり、このテーマは当面続くかなと。
師田:そうですね。だって人間の脳だって、ある意味、仕組みなわけですから。
人間の人間による逸脱を重要視するとか偶然を取り入れるみたいなことも、ある意味ニューロンとかの相互作用によって起きてるわけじゃないですか。
それ完全に擬似的に表現できるとしたら、それは人間と同じようなクリエイティビティを持つことになるみたいな話にもなると思うし。
五条:第一線の科学者ですら答えが出てないことなんで。
つまりこのエイリアン・インテリジェンスの正体はなんぞやっていうテーマは、まだまだ続きそうだなっていう気はしますけど。
ただ九段理江さんの言葉を、ボクは深く感じたってことですね。
師田:そこら辺は、本当、直感的にそうだなっていうふうに思うところで。
ちょっと具体的な話もしておくと、コタツ記事とか、そういうクリエイティビティが求められない文章っていうのは、AIでも大体できると。
逆に取材とかの記事とか、生成AIによってやっぱ代替はされないんですかね。
たとえばインタビューライターがインタビューをして、文字起こしとかをもとにAIに作らせても、やっぱりかゆいところに手が届かない文章になっちゃうんですかね。
五条:ボクはね、やっぱり生成AIの動作原理からして、生成AIにはインタビュー記事を文字起こしして、それを要約させたりすることはできると思うけど。
結局、取材記事の面白さって、インタビューをしてる人と対話の中で、ある種の逸脱を感じ取って、それを拾い上げて文章にする面白さじゃないですか。
それはやっぱり生成AIにはできないんだと思うんですよ。
師田:ボクも人間の文章と生成AIの文章の違いとして、やっぱり生成AIの文章って、文章の中に緩急が少ないなっていうふうに思うんですね。
たとえば取材とかで感じた、ここは重要な部分だって直感的に思った部分を、文章でハイライトして、ここは話者がそんなに情熱的に語ってなかったからトーンダウンしようとかっていうような。
そういった全体の緩急みたいなのは、やっぱりまだ全然人間には敵わないなっていうふうに思いますね。
五条:取材記事って、論理的にインタビューした内容を分析すれば、矛盾だらけのことを言ってるわけですよ。
師田:そうですねで。そこが面白いですね。予想外を楽しむみたいなところがありますからね。
五条:つまり生成AIには、偶然とか逸脱がないというのが一つの結論だと思いますよね。
師田:はい、今回の結論で言うと、人間による文章と生成AIによる文章何が違うっていうのは、クリエイティビティの有無によって、変わってくるっていう感じですかね。
五条:今の段階では、ボクはそう思わざるを得ないので、ヒントンさんがユーモアを理解するAIといったときに、すごく疑問視せざるを得ないと思うわけですね。
師田:そうですね。ちょっとこのテーマは引き続き話していきたいなっていうふうに思いますね。
今回は、人間による文章と生成AIによる文章何が違うというテーマでお届けしました。
こんな感じで、毎週、月曜日10時に、AIに関する情報であったりとかAIに周りの情報っていったものを、こういうふうに話して発信してるので、よかったらフォローしてみてくださいという感じで。
今日は、五条さん、ありがとうございました。
五条:どうもありがとうございました。