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わたぼうしのとぶころに 七章

七章 うつろいながら濃くなる

 30台から40代というと自分で家具屋をしていた時期でオレにとってはガラッと人生が変わった 時期だった。それまでの写真をやっていたり写真の専門学校で教員していた頃から、組織の看板を背負って、どこどこの誰々さんみたいなことではなく、自分一人で自分と誰々のというような人間関係を求めていたように思う。それと教員という仕事に、没頭すればするほど希薄になっていく家庭や日常。その時期に離婚もしてしまった。
 そういうこともあり、やはり一人家で仕事をしていて子供が帰ってきたら「おかえり!」というような父親になりたいと思っていた。
 一対一のつながりということを基本として、親密に付き合える人と知り合いたいし、そういう人と深く付き合いたいと思っていた。家具屋になってまさにそういうことをしているのが家具の師匠の今村さんだった。今村さんは芸大の朱美先生に紹介してもらい、はじめて会った瞬間に、オレはこんな人になりたいと思った。家具の知識なんて全くなく、木工をやるなんてことを想像もしていなかった。だけども今村さんは「しんどいしんどい」と言いながら仕事をしているのだけれど人の事ばかり考えていたり、そんな今村さんを慕って人が自然に集まってきていたりと、言葉では表現することは難しいけれど人が周りに自然に集まってくるような今村さんのような生き方に憧れていいたし、今も憧れたままだ。そして実際に自分も家具屋として今村さんのとこで修行させてもらい接することで、そういった一対一の関係が増えてきていた。


八章へつづく


※このお話は少しだけフィクションです!お聞きしたお話に基づいての物語ですが、客観性はないかもなので事実かどうかはわかりません。登場人物は仮名です。

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