気づかずに通った殺された元カノの店
2016年。プノンペンのとあるバー。
そこのオーナーママと付き合うことになった。
やり手で、お店はいつも繁盛していて、ほかにもいくつか別業態でお店をやっているらしい。
左肩に、「DAVID」という元カレのタトゥーがあり、それを「MUHANMAD」に変えると言ってきたけど、それはちょっと重たいので、「DAVID」のままでいいと言った。
「私は若い女と違って、頻繁に電話とかしないし、束縛しないから自由にして。」
ということで、安心してお付き合いすることにした。
しかし、付き合ってすぐに、朝から電話の嵐・・・
電話にでないと、ラインで、何してるの攻撃。
そのときちょうど、オンライン英会話をやっていたので、勉強中は電話にでられるわけないのだがおかまいなしにかかってくる。
それに疲れて、別れることにした。
しばらく電話やラインはきていたけど、無視しているうちに、こなくなった。
そして別れてから半年くらいたって、急に思い立って、そのお店にいってみた。
スタッフの子たちと久しぶりの会話をするけれど、元カノあらわれずで、まあそんなもんだよなと思って、その日は帰った。
それからときどきお店に顔を出しても、元カノはあわられないまま更に半年が過ぎた。
さすがに、スタッフに、
「ママはなんでいつもいないの?やっぱり会うの気まずいかな」
ときくと、
「え、とっくに亡くなったよ。あなたと別れたあとナイジェリア人の彼氏ができて、そいつにこのお店で刺されたの。あなた知らないで通ってたの?」
と衝撃的な言葉!!!
「知らないよ、なんで教えてくれなかったの?」
「知ってて、ママを偲んで通ってるのかと思った」
そうか、そうだよな。。。
殺された理由は、詳しくはきかなかったけど、色恋沙汰のようで、自分ももしあのまま付き合っていたら、なにかしらに巻き込まれていたんじゃないかと思うとゾッとした。と同時に、なんとなく情緒不安定だった彼女を思い出し、とてもいたたまれない気持ちになった。
心の中で合掌し、店を出た。
2020年。ここしばらく、その店は閉まったままである。